相撲雑学

横綱に降格がないのはなぜ?大相撲の象徴としての役割とその意義

年下や格下の力士との取り組みがあると、「絶対に負けられない」という強烈なプレッシャーに、いつも押しつぶされそうになっていました。
豆腐メンタリストこと、元力士のしんざぶろうです。こんにちは!

今回は「横綱 降格」というテーマを深掘りしていきます。相撲界において横綱は最高位に位置し、その存在は他の力士たちとは一線を画すものです。

そして、多くの方が「なぜ横綱に降格制度がないのか?」と疑問に思うことがあるでしょう。実際、成績不振であれば他の力士たちは番付が下がりますが、横綱だけは降格されることなく引退を選ばざるを得ません。

この記事では、横綱に降格がない理由や、その背後にある相撲界の歴史や伝統を掘り下げていきます。また、双羽黒の廃業や朝青龍の引退勧告など、横綱にまつわる特別な事例についても触れていきたいと思います。

相撲ファンの方はもちろん、相撲にあまり詳しくない方も楽しめる内容になっていますので、ぜひ最後までお付き合いくださいね。

相撲観戦大好き
さくら
相撲観戦大好き
さくら
降格がないってことは、負けが許されないってことになるわね。
この記事を読んでわかること
  • 横綱が「降格」されない理由
  • 横綱の称号が神聖視されている由来とその歴史的背景
  • 降格制度が導入されないことで守られる横綱の品格と地位
  • 双羽黒の破門と廃業のケースの詳細
  • 朝青龍の引退勧告に至った経緯
  • 横綱という地位が勝敗以上に問われる品格や規律

 なぜ横綱には降格がないのか?

「横綱」という称号には、深い歴史的な背景があります。もともとこの称号は、横綱が締める「注連縄(しめなわ)」に由来しており、注連縄は神社で神聖な空間を区切るために使われるものです。相撲においても、横綱が注連縄を締めることは、その神聖な存在を象徴しています。

そのため、横綱の地位は力士個人の成績や一時的な状況に左右されるものではなく、相撲界全体の品格を体現する特別な存在として守られています。

たとえ横綱が成績不振や怪我で力を落としたとしても、降格させることはありません。「横綱」という地位自体が尊重され、最終的には引退という形でその責務を終えることが相撲界の伝統です。

もし降格制度が導入され、横綱が他の地位に降格した場合、「元横綱なのに…」という評価が生まれるリスクがあり、その神聖な地位や価値が傷ついてしまう可能性があります。こうした背景から、横綱という特別な存在を守るため、降格ではなく引退が選ばれるのです。

  • 横綱の称号の由来
    ⇒「注連縄」に由来し、神聖な空間を区切るものとして伝統的に神聖視されている。
  • 横綱の特別な地位
    ⇒横綱は日本の伝統文化の象徴であり、品格を持つ特別な存在とされている。
  • 降格がない理由
    ⇒横綱は相撲界の品格を体現する存在であり、降格させることはその神聖な地位を損なうリスクがあるため。
  • 引退が求められる伝統
    ⇒横綱が責務を果たせないと判断された場合、降格ではなく引退を選ぶのが相撲界の伝統。
  • 降格制度導入のリスク
    ⇒降格した地位で負け越すと、元横綱としての名誉や価値が損なわれる可能性がある。

横綱の象徴的な役割

横綱は大相撲における最も高い地位にあり、単に強い力士というだけでなく、相撲界全体の象徴でもあります。全ての力士たちが目指す最終目標であり、その存在には「品格」が求められます。

この「品格」とは、相撲道に対する誠実な姿勢や、力士としての礼儀、そして他の力士やファンに対して模範となる行動を指します。

横綱は個人の勝敗を超えて、相撲界の伝統や精神を体現する存在であるため、特別な基準が課されているのです。単に勝つことだけではなく、横綱としての品格と威厳を常に保ち続けることが求められます。

そのため、「立場が人を作る」という考え方ではなく、「横綱」という地位にふさわしい品格を備えた人物こそが横綱に昇進できるのです。横綱になるための具体的な条件については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

横綱の人形の画像
横綱昇進の条件は?元力士が本場所の成績や品格について徹底解説!相撲部屋に入門したときは「横綱になるぞ!」と胸を膨らませていましたが、目の前に広がる力士たちの圧倒的な強さと体格に、その夢は一瞬で打ち砕...

 横綱が引退する理由

横綱が頂点に立ち続けることは、並大抵のことではありません。前述の通り、横綱はさまざまな要因で引退を余儀なくされることがあります。

特に成績不振や怪我といった理由が多く、横綱としての責務を果たせないと判断された場合、力士はその品格を保つために潔く引退することが求められます。

それでは2つの事例をみてみましょう。

成績不振による引退

北の湖敏満は、名横綱として長年相撲界に君臨していましたが、晩年には成績が低迷し、思うように勝てない時期が続きました。

1985年、怪我や年齢による衰えもあり、横綱としての役割を全うすることが難しくなったと感じ、自ら引退を決断します。相撲人生を歩んできた中でのその決断は、横綱としての誇りと責任感を重んじたものでした。

このように、北の湖の引退は、横綱が単なる競技成績だけでなく、品格や責務を持って引退を選ぶという相撲界の伝統を象徴しています。

怪我による引退

貴乃花光司の引退は、彼の怪我による成績低迷が大きな要因でした。彼は「平成の大横綱」として数々の功績を残しましたが、1990年代後半から怪我に苦しむことが増え、特に2001年の右膝の大怪我が致命的でした。

その後、リハビリを経て何度か復帰を試みましたが、以前のような成績を維持できず、最終的に2003年に引退を決意しました。

このケースは、横綱としての責務や品格を保ちながらも、怪我が引退の引き金になることが多いことを示しています

横綱引退の特別な事例

横綱は基本的に降格がない存在ですが、相撲界の長い歴史の中には特別なケースも存在します。これらの事例は、横綱という地位に求められる厳しい品格や規律がどれほど重要であるかを示しています。

ここでは、双羽黒の廃業と朝青龍の引退勧告という、2つの象徴的な事例を紹介します。

 双羽黒の破門と廃業

横綱に降格がないという制度の中で、特別なケースとして語り継がれているのが、1987年に廃業を余儀なくされた双羽黒(北尾光司)の事例です。

この事件は、ちゃんこの味付けや若い力士のしつけを巡って6代立浪親方と意見が対立したことから始まりました。親方との口論の末、双羽黒は部屋を飛び出し、都内のマンションに籠城するという異例の行動を取ります。

その間、立浪親方は双羽黒の「廃業届」を相撲協会へ提出してしまいます。協会内では除名処分も検討されましたが、彼の若さを考慮し「廃業」という形で決着がつけられました。

形式上は廃業ですが、実質的には破門に近いもので、この事例は横綱としての品格と規律がいかに厳しく問われるかを示す象徴的な出来事となりました。

最終的に、双羽黒が横綱としての責任を果たせなかったことが廃業の決定打となり、横綱という地位がいかに特別な存在であるかが改めて浮き彫りになったのです。

朝青龍の引退勧告

双羽黒の廃業という特別な事例に続き、もう一つ横綱の品格をめぐる象徴的な出来事として語り継がれているのが、朝青龍の引退勧告です。

彼は圧倒的な強さで横綱として大活躍していたものの、2007年に一般男性との暴行事件を起こし、その品格が大きく問題視されました。横綱の立場は、社会的にも非常に重要であるため、相撲協会や横綱審議委員会はこの事件を重く受け止め、最終的に朝青龍に引退を勧告しました。

このケースでは、朝青龍の成績自体には問題がなく、競技成績だけで見れば引退を求められるような状況ではありませんでした。しかし、横綱は相撲界の象徴として行動の責任も重く、彼の行動がその品格にそぐわないとされ、引退に追い込まれたのです。

この出来事は、横綱がただ勝つだけではなく、その行動や品格が厳しく問われる存在であることを改めて示しています。

管理人の後輩
元力士 まさる
管理人の後輩
元力士 まさる
まだ現役で活躍できたのに、もったいないなぁ。横綱って、なりたくてなれるものじゃないのに・・・

まとめ

今回の記事では、横綱が「降格」することなく「引退」を選ぶ理由について説明しました。横綱は日本の伝統や品格を体現する特別な存在であり、単に成績だけで評価されるものではありません。

そのため、横綱が責務を全うできなくなった場合、「横綱という地位そのもの」の品格を守るために降格ではなく引退という道が選ばれます。

また、双羽黒の廃業や朝青龍の引退勧告といった特別な事例は、横綱の品格や行動がどれほど厳しく問われるかを示しています。横綱という存在の特別さが、相撲界において重要な役割を果たしていることを理解していただけたでしょう。

今回も、最後までお読みいただきありがとうございました。
また、次回の記事でお会いしましょう。