力士の生活

力士がはげたらどうなる?まげが結えないと引退?元力士が噂を検証

「はげたくないなぁ」と、心の底で思いながら稽古をしていました。
元力士のしんざぶろうです。こんにちは!

力士といえば、伝統的な髷(まげ)を結った姿が象徴的ですよね。しかし、髷を結うためには髪が必要です。では、もし力士がはげてしまったらどうなるのでしょう?

髷が結えなくなると、力士に何かペナルティがあるのか、はたまた引退しなければならないのか、疑問に感じる方も多いでしょう。今回は、髪が薄くなった力士がどのように対応しているのか、そして相撲界の規定ではどうなっているのかについて詳しく解説します。

さらに、力士が禿げてしまう原因についても、元力士の視点から考察していきます。相撲という競技そのものが髪に与える影響は?髷が与える髪へのダメージは?など、はげる要因についてもお話してしいきます。
それでは最後までお付き合いくださいね。

管理人の後輩
元力士 まさる
管理人の後輩
元力士 まさる
僕は髪の毛が多いから心配したことなかったなぁ
スポンサーリンク

髷が結えなくなることはある?

ツルツルのスキンヘッドにならない限り、髷を結えなくなるということはほとんどないと思います。特別な事情がないかぎり、自然にそのような頭にはなりませんよね。そして薄毛くらいであれば、髪は伸びるので髷を結うことはできます。

あるとすれば「大銀杏(おおいちょう)」が結えなくなるということです。大銀杏は通常の髷に比べて毛量が必要となります。髪の量が多い方が、大銀杏の形が整いやすいくきれいに仕上がるからです。

大銀杏が結えないとどうなる?

日本相撲協会の規定には「十枚目以上の力士(十両)は、出場時に大銀杏を結わなければならない」と明記されています。この規定から、大銀杏が結えなくなれば出場できず、結果的に「引退」となる、と解釈することもできます。

しかし、実際には「大銀杏が結えない=引退」という規定は明示されていません。髪が薄いことを理由に引退勧告が出された例もなく、大銀杏を結えないこと自体が引退理由になることはありません

つまり、薄毛で大銀杏が結えないことは規定に反しているとも解釈できますが、罰則や引退しなければならないというルールは存在しません。

もちろん、故意に大銀杏を結わずに本場所に出場すれば問題となるでしょうが、大銀杏は力士にとって誇りであり憧れでもあるので、そのような行動を取る力士はまずいないでしょう。

  • 薄毛で髷が小さい力士はいるが、結えなくなることはない
  • 大銀杏が結えなくなっても「引退」する決まりはない

大銀杏が結えなくなった力士はいるの?

「それは大銀杏ではない」と断言することはできません。床山が工夫して、それなりに大銀杏を結っているため、薄毛によって大銀杏が結えなくなったかどうかは、外見だけでは判断できません。

ただし、見た目だけで言うと、髪の状態が厳しいように見える力士もいるのは事実です。名前を挙げるのは恐縮ですが、ここでは一部の元力士をご紹介いたします。

  • 琴稲妻(現:粂川(くめがわ)親方)
  • 安美錦(現:安治川(あじがわ)親方)
  • 大砂嵐(引退後:総合格闘家)
相撲観戦大好き
さくら
相撲観戦大好き
さくら
そうだったのね。
でも、髷が結えなくなると引退しなきゃいけないってよく聞くけど、どうしてなんだろう?
スポンサーリンク

「髷が結えないと引退」という噂の発端は?

先ほどご紹介した相撲協会の規定も、この噂の一因かもしれませんが、それだけが理由ではありません。はっきりとこれが噂のきっかけだという事例はありませんが、有力なエピソードとしてよく挙げられるのが、大横綱「栃木山」の引退です。

栃木山は栃木県出身で、横綱として3場所連続優勝を果たした後、突然の引退を表明しました。絶頂期とも言えるタイミングでの引退に、周囲は理由を見つけられず、彼自身が「髪が薄くなったことを気にしていた」という情報が広まり、それが「髷が結えないと引退」の噂につながった可能性があります。

しかし、栃木山本人は引退の理由について「力が衰えてから辞めるのは本意ではない。今が華だと思うから」と語ったとされています。とはいえ、髷は力士にとっての象徴であるため、外部の人々が髪の薄さを理由に、勝手に引退と結びつけてしまったのかもしれません。

  • 横綱「栃木山」は、3場所連続で優勝を果たした絶頂期に、突然の引退を表明した。
  • 本人が髪が薄くなったことを気にしていた。

力士ははげやすい?

髷による頭皮への影響

髷は、鬢付け油(びんづけあぶら)をたっぷり使って形を整えています。これを毎日シャンプーで洗い落として、また髷を結い直すのは現実的に不可能です。力士は多く、一人一人に床山の手が回るわけではないので、常にそれだけに時間を割くこともできません。

そのため、力士の髪は常に鬢付け油をつけているような状態です。この油には髪を保護する役割もありますが、頭皮にはあまり良くないと感じます。油が通気性を悪くし、頭皮が蒸れてしまうからです。

さらに、髷を結う際には、くしで強く髪を引っ張ってしまうこともあるため、それも髪や頭皮に影響を与えます。また、髷は結った後も髪が引っ張られ続ける状態が続くので、毛根に負担がかかり、ダメージが蓄積していると言えるでしょう。

力士が髷を毎日にシャンプーできない理由については、他の記事で詳しく書いていますので、気になる方はこちらも併せてご覧ください。

シャンプー用品の画像
力士は毎日髪を洗わないって本当?元力士がまげのお手入れ事情を解説毎日髪を洗わない力士たち。その理由は、髷を整えるために使う鬢付け油を保つことにあります。シャンプーで油を落とすと整髪に時間がかかるため、特に下位力士はシャンプーの頻度が低いことがあります。力士の髪の手入れとその背景をくわしく解説します。...

稽古によるダメージ

力士によっては立ち合いで、「ぶちかまし」と呼ばれる頭突きのような動きで、頭から相手に突っ込んでいくことを繰り返します。また、相撲の基本は、頭を相手の体に押し当て、自分に有利な体勢を作ることです。そのため、無理にでも頭をねじ込んで有利な体勢を作ろうとする場面が多々あります

こうした動きは、髪が強く引っ張られたり、特に前頭部の生え際に摩擦による大きなダメージを与えることが予想できます。また、ぶつかり稽古については、すべての力士が行うため、髪や頭皮への負担は共通ですが、身長が高い力士は立ち合いで頭を使う機会が少なく、胸から当たる傾向があります。

一方、体が小さい力士は、立ち合いで必ず「ぶちかまし」を行うため、頭皮へのダメージが特に大きくなります

相撲での髪への悪影響
  • 有利な体勢を作るために、頭を相手に押し当てることで髪が引っ張られたり摩擦が生じる。
  • 小兵力士はぶちかます場面が多い(特に前頭部への負担が大きい)

普段の稽古はどんなことをやっているの?と興味がある方は、別の記事でも解説していますので、ぜひこちらも併せてごらんください。力士の生活が垣間見れますよ。

時計とカレンダーの画像
幕下以下の力士ってどんな生活なの?日々の稽古や休日を紹介するよ!幕下以下の力士の日常生活に焦点を当て、彼らが厳しい稽古と生活環境の中でどのように過ごしているのかを解説。基本的なスケジュールや待遇、休日の過ごし方について、元力士の視点からリアルなエピソードを交えながら紹介します。...
スポンサーリンク

食事による影響

力士が毎日食べるちゃんこ鍋は、野菜や肉、魚がたっぷり入った、非常にバランスの良い食事です。しかし、力士にとって「身体を大きくする」ことも稽古の一環とされており、その食べる量は尋常ではありません。どんなにバランスの良い食事であっても、過剰な摂取は体に負担をかけ、効果を打ち消してしまうこともあるでしょう。

特に身体が小さい力士は、他の力士以上に食べて体を大きくしなければならず、さらに食べる努力を続けます。例えば、夜寝る前にコンビニでお弁当やおにぎりを買って夜食を取るのは、日常茶飯事です。

こうした過度な食生活が続くと、栄養バランスが崩れ、髪や頭皮に悪影響を与えることは想像に難くありません。

私が所属していた部屋のはげ事情

では実際どうだったのか、僕の体験をお話します。

個人差はありますが、まだ若いこともあり、はげているレベルの力士はいませんでした。しかし、前頭部が薄くなって地肌が見えている力士は少なくなく、これが共通して見られる傾向でした。

では、そうした薄毛を気にしていた力士はいたのか?育毛ケアなどをしていたのか?というと、誰もそんなことは気にしていませんでした

僕自身は心の中では気にしていたものの、口にすることはありませんでした。もしそんなことを話したら「本気で強くなろうと思っているのか?」と怒られると思っていたからです。

引退後も交流がある元力士に何度か会っていますが、髷を結っていたときは気にならなかった力士でも、髷を落とすと薄くなっているのが目立ち、「みんな髪が薄くなったなぁ」と感じることが多いです。

  • 現役中に薄毛を気にする力士はいなかった(口にしなかっただけかも)
  • 育毛などの対策もしない
  • 力士は少なからず髪が薄くなるもの

はげていなくても髷が結えない?

実は、髪が多すぎても髷がきれいに結えないことをご存じですか?中には「髪が多くて困る」という、少し羨ましい悩みを持つ力士もいます。

そのままでも髷を結うことは可能ですが、髷が太くなってしまうため、稽古中に邪魔になることが想像できます。髷が他の力士と接触しやすく、すぐにほどけてしまいますから、稽古にならないですね。

では、そういった髪が多い力士はどうしているのかというと、「中剃り(なかぞり)」という方法を取ります。頭頂部を直径6〜7cmほど円形に剃り、髪の量を減らすことで、髷がきれいに結えるようにしているのです。

相撲観戦大好き
さくら
相撲観戦大好き
さくら
初めて知ったわ!
髪の毛の量が多すぎても髷が結えないんだね。

まとめ

こうして見ていくと、やはり力士は薄毛になりやすい環境に置かれていると言えます。僕自身も現役時代には抜け毛が多くて心配でしたし、現在も「前頭部」の薄毛が気になっています(-_-;)

それでも、力士たちは相撲という競技に誇りを持ち、強くなり出世していくために、こういったリスクも覚悟の上で日々戦っています。髷は相撲の象徴であり、髪を保つことも力士の一部ですが、それ以上に彼らが背負っているのは、力士としての強さと誇りです。

次に相撲を観戦する際には、力士たちが抱えるこうしたリスクにも思いを馳せてみてください。彼らの戦いは、髪のことも含めて、まさに全力といえますよね。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
また、次回の記事でお会いしましょう。

スポンサーリンク