僕は相撲界に入って、一番苦手だったのが「ちゃんこ番」です。料理を作るのが得意ではなかったのも理由ですが、稽古以外で立ちっぱなしで何時間も仕事をするのが辛かった。ちゃんこ番を交代する時は本当にホッとして、嬉しかったのを今でも覚えています。
こんにちは!元力士のしんざぶろうです。
「ちゃんこ長って、給料出るの?」
相撲にちょっと詳しい人でも、なかなか知る機会のないこのテーマ。
ちゃんこを作っている力士の姿はテレビで見かけても、その裏にどんな役割や苦労があるのかまでは、あまり知られていないかもしれません。
今回は、元力士しんざぶろうが、自分の経験をもとに「ちゃんこ長」の仕事のリアルや給料事情、そこから得られるスキルについてお話ししていきます。
ぜひ最後までお付き合いくださいね。
僕もちゃんこ番は苦手だったなぁ。あの慌ただしさは、稽古とはまた違う意味で疲れるんだよね。時間に追われて、気も使って、終わった頃にはクタクタだったよ。
- ちゃんこ長に専用の給料はあるのか
- 相撲部屋での生活費や力士の収入との関係
- ちゃんこ長の役割と仕事内容
- ちゃんこ長を任される力士の条件
- ちゃんこ番を通じて得られるスキルと成長
- マネージャーとして残るケースとその待遇
- 実体験から語るちゃんこ長の苦労とやりがい
しんざぶろうが体験した“ちゃんこ長”のリアル

冒頭でもお話しましたが、僕自身もちゃんこ長を担当したことがあります。
しかし正直なところ、あれほど気を使って胃がキリキリした仕事は他にありませんでした。
まず悩むのが献立。「今日は何を作る?」「栄養バランスは大丈夫か?」
冷蔵庫や在庫の食材を見ながら、足りない分を買い足すべきか、その場のもので済ませるか……。一週間分の予算が決まっているので、使いすぎれば後が苦しくなります。
さらにプレッシャーだったのが、兄弟子や関取の反応。「味が薄い」「量が少ない」なんて言われたら、次の日のちゃんこ番に立つのが怖くなるほどでした。逆に「今日のちゃんこうまいな」って一言がもらえた日は、本当に救われた気持ちになりました。
量の調整も地味に大変です。力士たちはとにかくよく食べるので、足りなければ大問題。
かといって作りすぎれば無駄が出て、翌日以降の予算にも影響が出ます。
そして一番困ったのが、作り方がわからないとき。調味料の加減や煮物のタイミングなど、本当に基本的なことすらわからず、兄弟子にこっそり相談したことも何度もあります。
そんな時にフォローしてくれる仲間のありがたさを、身にしみて感じました。
いろいろ苦労の多かったちゃんこ長の仕事も、時が経てばいい思い出になります。先日、YouTubeでちゃんこを作る動画を見つけて、とても懐かしい気持ちになりました。
よければ、以下よりぜひご覧ください。
ちゃんこ鍋がおいしそう♪私はまだ食べたことがないから、早く本場のちゃんこを食べてみたい!
ちなみに、力士たちがどれだけ食べるのか気になる方は、こちらの記事も読んでみてください。僕のちゃんこ番でのエピソードや食事ノルマなども紹介しています。

そもそも「ちゃんこ長」とは?
「ちゃんこ長」とは、相撲部屋で複数の力士が交代で務める「ちゃんこ番(食事当番)」の中で、班全体をまとめるリーダー役のことを言います。
実際にどんな仕事をしていたのか、僕がいた部屋での例を紹介します。
僕がいた部屋では、5〜6人の班でちゃんこ番を担当し、1週間ごとに交代していました。その中でちゃんこ長は、決められた予算の中で献立を立て、栄養バランスを考えながら食材の買い出しを指示し、在庫管理も行います。
さらに後輩の調理指導や、全体のスムーズな段取りを任されるなど、単なる“料理係”ではなく、チーム全体の運営を支える重要な役割でした。
料理だけでなく、お金の管理まで含めて任されるため、信頼されていないと務まらないポジションです。
このように、ちゃんこ長は「料理担当」という枠を超えて、部屋全体の食事を支える重要な存在です。責任も大きい分、親方やおかみさんはもちろん、力士たちからの信頼もなければ務まらない役割といえます。
そこで、これだけ責任の重い役割なら、「ちゃんこ長には給料があるんでしょ?」と思う方もいるかもしれませんね。ここからは、そんな疑問にお答えしながら、実際のところどうだったのかをお話ししていきます。
相撲部屋のちゃんこ長の給料について
僕がいた部屋でのちゃんこ長には専用の給料はなく、他の部屋の力士からもそういった話を聞いたことがありません。なので、基本的には…
ちゃんこ長専用の給料はありません。
たしかに、すべての部屋を確認したわけではないので、そういった部屋があっても不思議ではありません。しかし、少なくとも僕がいた部屋では、そういったやり取りはありませんでした。
ただ、日頃の頑張りや信頼に対する感謝の言葉をかけてもらえることはよくありました。そして、何より仕事を任されること自体が大きな信頼の証だったと感じています。
ですので、ちゃんこ長であろうと収入は主に自身の番付に応じた場所手当や勝ち星による奨励金のみとなります。
場所手当 | 番付名 | 金額 |
---|---|---|
本場所ごとに支給 基本手当/年6回 |
幕下 | 16万5千円 |
三段目 | 11万円 | |
序二段 | 8万8千円 | |
序の口 | 7万7千円 |
例えば、三段目であれば場所ごとに約11万円ほどの手当です。生活費(家賃・光熱費・食費)はかかりませんが、お金に余裕があるわけではなく、自分で貯金をやりくりしながら生活していました。
なお、以下の記事で、力士の収入やどんなことにお金を使っているのかを解説しています。僕の経験をもとにした話もしているので、参考にしてみてください。

部屋の中で信頼されるのはいいことだと思うけど、ちゃんこ長って大変なわりに、あまりメリットがなくて割に合わない気がしちゃうなぁ。
ちゃんこ長で得られるスキル
相撲部屋でちゃんこ長を経験すると、給料こそありませんが、お金以上に大きなものが得られます。それは相撲界だけでなく、社会に出てからも役立つ、一生もののスキルだと思います。
- 段取り力や時間管理能力
- 班をまとめるリーダーシップ
- 限られた予算内でやりくりする金銭感覚
- 大人数分の食事を管理できる調理力
- その場で決める判断力や決断力
では、なぜこれらのスキルが身につくのでしょうか。
それは、ちゃんこ番をしていると、予期せぬ出来事やトラブルに何度も直面するからです。
たとえば、食事の時間に突然お客さんが訪れることもあれば、料理経験が浅い後輩が味付けに失敗してしまうこともあります。そんな時、どう立て直すかを瞬時に判断し、周りをフォローして乗り越えていく力が試されるんです。
こうしたアクシデントに何度も対応していくうちに、少しずつ周囲からの信頼を得られるようになります。「こいつに任せれば安心だ」と思われるようになると、親方や後援者の目にも自然と留まるんですよね。
経験を積み重ねていくことで、ちゃんこ長は「信頼」と「人脈」を築ける立場へと成長していくんです。
実際、僕の部屋でも関取経験がなくてもマネージャーとして残り、部屋の運営を支えている人がいました。信頼と実績を積んでいけば、必ず道は開けるものだと僕は思っています。
僕の部屋で初めてマネージャーになった兄弟子は、当時「月給28万円」と言っていた記憶があります。力士を辞めたとはいえ、現役時代と同じように部屋で生活していたので、家賃や光熱費、食費はかかりません。そう考えると、待遇はかなり良かったのではないでしょうか。
ただ、その兄弟子は、ちゃんこ長を指示するような立場でもあったため、毎日が「ちゃんこ長」のような状態。常に気を張っていた様子で、かなりのプレッシャーを感じていたようにも見えました。
僕は味付けや調理方法がなかなか覚えられなくて、いつも兄弟子のちゃんこ長に迷惑かけてました。何度も同じこと聞いて、「さっきも言っただろ!」って怒られてたなぁ…(笑)
ちゃんこ長は誰が担当するの?
では、実際には誰がその役割を担うのでしょうか。
まず、ちゃんこ番を担当するのは幕下以下の力士たちです。そのため、ちゃんこ長も同じく幕下以下の力士が務めるのが原則となります。関取(十両以上)の力士は、ちゃんこ番の仕事からは外れるため、ちゃんこ長を担当することもありません。
また、ちゃんこ長はただ料理を作るだけでなく、後輩への指導やお金の管理も任される立場です。そのため、ちゃんこ番としての経験を積み、ある程度の判断力や信頼を得ている力士が選ばれる傾向にあります。
このような背景から、ちゃんこ長は三段目の力士が担当することが多くなります。
というのも、三段目に昇進するまでには平均して2〜3年、あるいはそれ以上かかることが多く、その分、ちゃんこ番としての経験も十分に積んでいるからです。
- 幕下以下の力士(十両以上の関取は担当しない)
- ちゃんこ番の経験が豊富で、調理や段取りに慣れている
- 後輩への指導力や周囲への気配りができる
- お金の管理を任されるため、責任感や信頼がある
- 三段目に昇進するまでに2〜3年以上かかることが多く、経験が豊富な三段目力士が中心
部屋によっては、幕下中堅〜上位クラスになると関取昇進が見えてくるため、稽古や本場所に集中させる目的で、ちゃんこ番を免除する場合もあるようです。
また、出世の早い力士や、三段目・幕下付け出しからスタートする力士は、早い段階で幕下上位〜関取へと昇進するケースが多いため、ちゃんこ長を経験する機会は少ない傾向にあります。
「幕下付け出しって何?」「幕下と十両の違いは?」といった疑問については、以下の記事で解説しています。気になる方はぜひチェックしてみてください。

相撲部屋のちゃんこ長に関するよくある質問
Q1. ちゃんこ長には給料があるの?
A. 専用の給料はありません。収入は基本的に自分の番付に応じた場所手当や奨励金が中心です。なお、引退後に部屋付きのマネージャーなどとして働く場合には、給料が支払われるるようになります。
Q2. ちゃんこ長は相撲をしない?
ちゃんこ長は現役の力士が担当するため、稽古にも参加します。ただ、ベテランになって体力的に激しい稽古が難しくなったり、ケガの影響で稽古が十分にできない力士がいる場合、ちゃんこ番とは関係なく、昼のちゃんこ作りを任されることがあります。
Q3.ちゃんこ長になると出世しないって聞くけど…
出世の早い力士は、ちゃんこ長を担当する前に関取に昇進することもあります。逆に出世がゆっくりな力士は、ちゃんこ番を担当する機会が多くなりますが、それで出世できないということはありません。
Q4.「ちゃんこ」って鍋のことを指す言葉?
「ちゃんこ」は鍋料理だけを指す言葉ではなく、力士が作る食事全般を意味します。たとえラーメンやハンバーグを作っても、それは立派な「ちゃんこ」となります。
Q5. ちゃんこ番とちゃんこ長の違いは?
A. ちゃんこ番は調理や片付けを担当する食事当番のこと。ちゃんこ長はその班のリーダーで、献立の作成や買い出しの指示、後輩の指導なども行う責任ある立場です。
まとめ
ちゃんこ長には給料こそありませんが、任されるということ自体がひとつの“評価”であり、信頼の証でした。そして、そこで得た経験やスキル、人とのつながりは、引退後の人生にも大きな力になります。
僕にとっても、あのプレッシャーの日々は今となってはかけがえのない財産です。
もしこの記事で、相撲部屋の裏側に少しでも興味を持ってもらえたなら嬉しいです!
今回も、最後まで読んでいただきありがとうございました。
また、次回の記事でお会いしましょう。
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