技能賞とは?評価される相撲内容から賞金まで元力士が徹底解説!
僕は現役時代、いわゆる小兵力士の部類でした。体格を前面に押し出すタイプではなかったので、押しや寄りよりも、どちらかというと投げ技など技術系の決まり手が多かったほうだと思います。
そして、この「技能賞」の記事を書くにあたって、改めて自分の決まり手を調べてみたんですが、「得意技は内無双!」と豪語していたわりに、公式記録上の内無双はまさかの2回だけ。
記憶の中ではもっと何番も決めていたつもりだったんですが……見事に思い出補正がかかっていたようです(-_-;)
こんにちは、元力士のしんざぶろうです。
最近の話題でいうと、安青錦関が新入幕から5場所連続で三賞を受賞した事がニュースになりました。その中でも技能賞は3場所連続で獲得しており、正攻法の取り口をベースにしながらも、最後は技で勝ち切る相撲内容で、大いに観客を沸かせました。
以下の動画では、前頭筆頭で安青錦が技能賞を初めて受賞した2025年名古屋場所の取組を振り返ります。番付が上の横綱・大関相手に繰り出された見事な技に注目してみてください。
横綱・大関といった格上力士を相手に、低い姿勢を崩さず懐に潜り込み、相手の体勢を崩したところで「内無双」や「渡し込み」へつなげていく。ただ力で押すのではなく、崩してから決め切る。その積み重ねこそが、「技能」という言葉で評価される相撲だと感じます。
この記事では、大相撲の「技能賞」をテーマに、この賞では何が評価されているのかを、元力士の目線を交えて整理していきます。
そして今回も、僕が独自に開発したAIキャラクター「AI横綱くん」が一緒に登場してくれます。
安青錦関の相撲を見てると、横綱や大関相手でも、低い姿勢で懐に潜って最後は技で仕留めてるのが本当にうまいなぁって思うよね。
技能賞って、こういう珍しい決まり手があると評価されるのか、それとも場所を通しての「勝ち方そのもの」が見られているのかなぁ…
さくら、その疑問は核心だな。
技能賞は「珍しい決まり手が出たから」だけで評価される賞じゃない。
この賞で見られるのは、場所を通しての技の冴え――つまり相撲の巧さだ。入り方、差し替えやいなし、間合い、崩し、土俵際の処理。そういう技術をどう使って勝ち切るかに、技能が出る。
決まり手は最後につく“名前”に過ぎない。その一手を出せる形を作り、迷わず決め切る――その巧さが「技能」として評価されるんだ。
なお、安青錦のプロフィールや相撲界に入門したいきさつ、四股名の由来などをまとめた記事もあります。ぜひあわせてご覧ください。
大相撲の技能賞とは
大相撲の「技能賞」は、殊勲賞・敢闘賞と並ぶ三賞のひとつで、本場所で活躍した関脇以下の幕内力士に贈られます。その中身を一言で言うと、「何勝したか」よりも「どう勝ったか」という、相撲の巧さや技術面を評価する賞です。
技能賞には、公式の点数表のような明確な採点基準はありません。ただ、日本相撲協会の説明や各種解説では、
- 「技能が特に優秀な力士」
- 「決まり手が豊富な力士」
- 「奇手・妙技を繰り出す力士」
などと説明されていて、幕内の個性派力士として認められる勲章のような位置づけになっています。具体的に「どんな相撲内容が選考で評価されやすいのか」については、このあとの章で整理していきます。
技能賞の選考について
技能賞(というか三賞全体)には、「○勝したら必ず受賞」といった分かりやすい点数表のような基準はありません。千秋楽までの相撲内容を見たうえで、「どの賞を誰に贈るか」を三賞選考委員会が総合的に判断します。
その前提として、三賞そのものの仕組みを簡単に整理しておきます。
■三賞とは?
三賞は、本場所で活躍して場所を盛り上げた関脇以下の幕内力士に贈られる【殊勲賞・敢闘賞・技能賞】の総称です。
戦後の大相撲人気を盛り上げる目的で、1947年(昭和22年)秋場所前に構想が提案され、同年11月場所(秋場所)から実施が始まったとされています。
三賞は誰が決めている?
三賞の受賞力士は、千秋楽の幕内取組前(通例、午後1時ごろ)に開かれる「三賞選考委員会」で協議・投票して決まります。
委員は、日本相撲協会の審判委員・維持員・相撲記者クラブの記者などの中から理事長が委嘱し、定員は45人以内・任期は1年と定められています。
三賞受賞の前提条件
三賞の対象とされる力士には、基本的に次のような前提があります。
- 関脇以下の幕内力士であること(横綱・大関は三賞の対象外)
- 本場所で勝ち越していること(8勝以上)
三賞選考委員会の内規や公式解説でも、「受賞には勝ち越しが前提条件」とされていますし、実際の記録上も、7勝8敗など負け越しの力士が三賞を受賞した例は確認されていません。
三賞をもらうには、とにかくまず「勝ち越し」が絶対条件ってことね。だから千秋楽に「今日勝てば」みたいに、条件付きで発表されることがあるんだ…!
そうだな。勝ち越しは“三賞の土俵に上がるための条件”だ。ただ、実際は二桁勝利(10勝以上)が目安になることが多い。候補が多い場所だと、11勝くらいないと届かないこともある。
だから千秋楽で「今日勝てば」と条件が付くのは、勝ち越しを確定させるための場合もあるが、二桁に乗せて受賞の説得力を強める意味合いもあるんだ。
技能賞を受賞した力士に多い4つの特徴
技能賞は「何勝したか」よりも、「どう勝ったか」という中身が評価される賞です。ここでは、歴代の受賞力士を眺めたときに、共通していることが多いポイントを4つに整理してみます。
1.技のバリエーションが豊富
押し・寄り・投げ・掛け・足技など、同じ決まり手に偏らず、さまざまな勝ち方を見せている力士。場所を通して多彩な技で観客を沸かす力士は、「技の引き出しが多い」と見られ、技能賞でも評価されやすくなります。
2.相手に応じて取り口を変えられる
相手の体格や取り口に応じて、立ち合い・差し手・攻め方を柔軟に変えられるタイプです。「この相手には真正面から押す」「この相手にはいなして横を取る」といった工夫が見えると、単なる力比べではない「うまい相撲」として印象に残ります。
3.妙技や工夫のある決まり手
普段あまり出ない決まり手や、「今の一手はうまい」と場内がどよめくような技を持っていること。思い切った足技や、土俵際で体勢を入れ替える一発など、工夫が感じられる勝ち方が多い力士は、技術面の評価がぐっと高まります。
とはいえ、珍しい技を一度決めただけで受賞が決まるわけではなく、あくまで場所全体の内容が土台になります。
4.上位力士を「技で崩して倒す」一番がある
格上の力士に対して、正面からの力比べではなく、間合いや懐の入り方で崩して勝ち切った相撲があること。とくに横綱・大関を相手に、低い姿勢やタイミングの工夫で翻弄して白星を挙げると、「この技は上位にも通用している」と評価され、技能賞の議論でも強い材料になります。
敢闘賞・殊勲賞との違いは?
大相撲の三賞(殊勲賞・敢闘賞・技能賞)は、どれも本場所での活躍をたたえる賞ですが、見ているポイントはそれぞれ少しずつ違います。ここでは、技能賞との違いが分かるように、残り二つをコンパクトに整理しておきます。
【殊勲賞】格上を倒して場所を動かした功績
殊勲賞は、横綱・大関など上位陣、あるいは優勝争いのライバルを破って「場所の流れを変えた」力士が評価されやすい賞です。
- 平幕が横綱に勝った「金星」
- 大関や三役からの白星
- 優勝争いに直接影響する一番
といった、「誰に勝ったか」「その白星が場所全体にどう影響したか」という「白星の重さ」が、選考の大きな材料になります。
殊勲賞については、さらに詳しい内容や代表的な受賞例などをまとめた記事もありますので、こちらもあわせてご覧ください。
【敢闘賞】闘志と番付以上の奮闘ぶり
敢闘賞は、最後まで攻め続ける姿勢や粘り、番付以上の躍進など、「この場所を一番熱くしたな」と感じさせる力士に贈られる賞です。
- 劣勢から何度も粘って盛り返す相撲
- 終盤まで前に出続ける攻めの姿勢
- 下位の番付から二桁勝利や優勝争いに絡む活躍
など、「この場所を一番熱くした」と感じさせ奮闘した力士が候補に挙がりやすくなります。
三賞って、同じ「よく頑張った力士」に贈られるのに、見てるところが全然違うんだね。
簡単に言うと、殊勲賞は「誰に勝ったか」、敢闘賞は「どれだけ戦い抜いたか」、技能賞は「どうやって勝ったか」…ってイメージで覚えておけばいいのかな?
いい整理だな、さくら。
同じ勝ち越しでも、格上を倒して場所を動かした白星なら殊勲賞、下の番付から前に出続けて会場を沸かせたなら敢闘賞、技の多彩さや崩しのうまさが光ったなら技能賞――というふうに、それぞれ別の角度から評価される。
三賞を見るときは、「この力士は何が評価されたんだろう?」と視点を分けて見ると、選ばれ方がぐっと分かりやすくなるぞ。
なお敢闘賞についても、選考の目安や代表的な受賞力士をまとめた記事がありますので、参考にしてみてください。
■殊勲賞
〇横綱からの金星や、大関・三役から挙げた白星が大きな材料になる
〇格上相手に番付以上の働きを見せ、「場所の流れを変えた」力士が評価される
■敢闘賞
〇最後まで前に出る姿勢や、劣勢から何度も粘る相撲内容が評価の中心
〇下位の番付から二桁勝利や優勝争いに絡むなど、「この場所で一番奮闘した」と感じさせる力士が選ばれやすい
■技能賞
〇決まり手の幅広さや、間合い・崩し・土俵際のさばきといった技術面がポイント
〇力だけでなく工夫や巧さで勝ち星を重ね、「技で魅せた」と言える力士が候補になりやすい
技能賞を受賞するともらえる賞金は?
技能賞に選ばれると…
- 日本相撲協会から賞金200万円が授与されます。
力任せではなく、取り口の巧さや多彩な決まり手で本場所を盛り上げた力士に対して、その技術と工夫を高く評価する意味で贈られる賞金です。
三賞共通の賞金額
金額だけを見ると、技能賞だけが特別扱いというわけではなく、三賞はどれも同額。千秋楽の表彰式で、賞状やトロフィーと一緒に手渡されるのが通例です。
- 殊勲賞・敢闘賞・技能賞は、いずれも1賞あたり200万円
- 同じ場所で2つ受賞すれば合計400万円、3つすべて受賞すれば合計600万円
- 同じ賞を複数の力士が受賞しても「山分け」にはならず、一人ひとりに200万円ずつ支給される
技能賞ならではの「名誉」と評価
技能賞の価値は、200万円の賞金だけではありません。この賞は「技で評価された証拠」として扱われることが多く、技量派の力士にとってはキャリアの中でも特に誇りやすいタイトルです。
- 「技のデパート」「巧者」といった評価が定着しやすい
- 将来的に、三役・大関に上がったあとも「技のある力士」として語られ続ける
こうした積み重ねは、ファンからのイメージや、場所ごとの期待値にもつながっていきます。
記憶に残る「技能賞」受賞力士たち
技能賞は、「何回取ったか」という数字ももちろん大事ですが、振り返ってみると「あの技は忘れられない」「あの場所はまさにこの力士の場所だった」と、記憶とセットで語られることが多い賞です。
ここからは、まず歴代最多受賞力士とトップ3の顔ぶれを押さえたうえで、近年とくに話題になった技能賞受賞力士をピックアップして紹介していきます。
技能賞の最多受賞記録を持つ力士は誰?
技能賞の最多受賞記録を持つ力士は…
- 元関脇・鶴ヶ嶺昭男です。
鶴ヶ嶺は幕内在位77場所、三賞通算14回のうち技能賞が10回という、「技巧派の代表」とも言える力士でした。もろ差しからの寄りや投げ、足技など、状況に応じて形を変える器用な相撲で人気を集め、「技能賞といえば鶴ヶ嶺」と語られることも多い存在です。
なお、技能賞の受賞回数トップ3は、2026年1月現在で次の顔ぶれになっています。
*技能賞歴代受賞ランキングTOP3|2026年1月現在
| 順位 | 力士名 | 最高位 | 受賞回数 |
|---|---|---|---|
|
1位 |
鶴ヶ嶺 昭男 |
関脇 |
10回 |
|
2位 |
栃錦 光雄 |
第44代横綱 |
9回 |
|
3位 |
琴錦 功宗 |
関脇 |
8回 |
この3人を見ても分かるように、技能賞を積み上げる力士は、番付の上位で長く活躍した実力者ばかりです。「技能賞の多さ=その時代の“技の名手”」と、いえるのではないでしょうか。
近年で話題になった技能賞受賞力士
技能賞は歴史の長い賞ですが、ここ数年だけを切り取っても、「あの場所はこの力士の技が忘れられない」という受賞例がいくつもあります。
ここでは、その中から代表的な2人を紹介していきます。
若隆景 渥(2025年5月場所)
2025年夏場所(令和7年5月)では、ケガで一度は幕下まで落ちた若隆景が、西小結まで番付を戻し、12勝3敗の好成績。自身3度目の準優勝と、通算6回目となる技能賞を受賞しました。
前に出るスピードと四つ身でのうまさのバランスが良く、相手に応じて押し相撲と差し相撲を使い分ける「総合力の高さ」が、改めて評価された形です。
■印象に残るポイント
- 大ケガで幕下まで落ちてからの復活で、通算6度目の技能賞
- 押し・四つ・投げを状況に応じて使い分ける、引き出しの多い相撲
- 序盤から終盤まで内容の良い相撲が続き、「やっぱり技のある力士だな」と再確認させる場所になった
安青錦 新大(2025年名古屋〜九州で技能賞を3場所連続受賞)
そして、この記事の冒頭でも触れた安青錦です。2025年春場所に新入幕を果たして以降、幕内5場所連続で三賞を受賞。
そのなかで技能賞は3回受賞しており、デビュー直後から「新時代の技巧派」として注目を集めています。
■印象に残るポイント
- 幕内昇進後、短期間で技能賞を中心に三賞を積み重ねている
- 低い姿勢から相手の体勢を崩し、「内無双」「渡し込み」などで仕留める勝ち方
- 正攻法の立ち合いから技に繋げるスタイルで、上位力士相手にも技が通用することを証明している
技能賞についてよくある質問
Q1. 技能賞はどんな力士が対象?受賞の条件は?
A.技能賞を含む三賞は、原則として「関脇以下の幕内力士」が対象です。横綱・大関はそもそも三賞の選考対象には入りません。そのうえで、本場所での勝ち越し(8勝以上)が事実上の必須条件です。負け越した力士が技能賞を受賞した例はありません。
技能賞の場合は、勝ち星に加えて、
- 決まり手が一辺倒ではなく、多彩な技で白星を挙げている
- 相手や状況に応じて取り口を変えられる「うまさ」がある
- 土俵際の粘りや体勢の入れ替えなど、技術を感じる場面が多い
といったポイントが評価されやすく、二桁勝利や優勝争いへの絡みがあると、より有力な候補になってきます。
Q2. 敢闘賞や殊勲賞とは、どこが違うの?
A.三賞はどれも「よく頑張った力士」をたたえる賞ですが、見ているポイントが少しずつ違います。ざっくり整理すると次のイメージです。
- 殊勲賞:横綱・大関など「格上を倒した功績」を重視
- 敢闘賞:最後まであきらめない「闘志と番付以上の奮闘」が軸
- 技能賞:多彩な決まり手や崩しのうまさなど「技術面」が評価対象
どの賞も「勝ち越し」が前提なのは同じですが、殊勲賞「誰に勝ったか」、敢闘賞「どれだけ戦い抜いたか」、技能賞「どうやって勝ったか」、それぞれ見るポイントが違う賞だと考えると分かりやすいと思います。
Q3. 技能賞を取ると賞金はいくら?三賞をたくさん取るとどうなる?
A.技能賞の賞金は1回につき200万円です。これは殊勲賞・敢闘賞も同じで、三賞はどれも一律200万円になります。
- 技能賞+敢闘賞のダブル受賞なら 200万円×2=400万円
- 三賞フルコンプリートなら 200万円×3=600万円
となり、同じ賞を複数人が受賞しても「山分け」ではなく、一人ひとりに200万円が支給されます。
実際には、賞金そのものよりも、「この力士は「技の名手」として名前が残る」という評価面のメリットが大きく、番付編成での印象や、将来の三役・大関昇進を語るときの材料にもなっていきます。
まとめ
大相撲の技能賞は、三賞の中でも「何勝したか」よりも「どう勝ったか」を評価する賞です。勝ち越した関脇以下の幕内力士のうち、多彩な決まり手や相手に応じた取り口、間合い・崩し・土俵際のさばき方など、技術と工夫で土俵を沸かした力士に贈られます。
殊勲賞が「誰に勝ったか」、敢闘賞が「どれだけ戦い抜いたか」なら、技能賞は「どんな技で魅せたか」に注目する勲章だと覚えておくと分かりやすいでしょう。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。それでは最後に、「AI横綱くん」のひと言で締めたいと思います。
今日の記事を読んだあとで三賞の発表を聞くと、「この力士はどんな技術が評価されたのかな」と自然と気になるはずだ。
これから本場所を見るときは、勝ち負けだけじゃなくて、立合いでの入り方、相手の崩し方、土俵際の一手まで意識して追いかけてみてくれ。同じ一番でも、「技を見る目」が一つ増えるだけで、相撲の味わい方はぐっと深くなるぞ。
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