名古屋場所といえば、真っ先に思い出すのは「暑さ」です。個室のない幕下以下の力士は、エアコンのない共同部屋で夏を過ごします。扇風機は数台あるものの、1台を4~6人で首振りにして分け合うのが当たり前。パンツ一枚で横になり、わずかな風に頼って眠りにつこうとする毎日でした。
寝るときは、水で軽くしぼったフェイスタオルを胸からお腹にかけて広げるのが、少しでも暑さをしのぐ手段。でもそのタオルもすぐに乾いてしまうため、一晩で2〜3回は起きて濡らし直すのが日課でした。名古屋場所は毎年、寝不足との戦いだったように思います…。
こんにちは!元力士のしんざぶろうです。
大相撲名古屋場所といえば、土俵上の熱戦が注目されがちですが、じつは観客席にも目を引く、独特の存在感を放つ女性がいるんです。
その名も「白鷺の姉御(しらさぎのあねご)」
西の花道近くの溜席に、毎年のように姿を見せる和装の女性で、静かに観戦するその佇まいはテレビ中継でもたびたび映り込みます。相撲ファンの間では、もはや「名物観客」として知られる存在です。
今回は、そんな「白鷺の姉御」の正体や魅力に迫りながら、名古屋場所を彩る観客たちにもスポットを当ててご紹介します。ぜひ最後までお付き合いくださいね。
えっ、そんな人がいたんだ!毎年映ってたのに、全然気づかなかったなぁ。でも言われてみれば、見覚えあるかも…。今度から観客席にも注目してみよう♪
- 名古屋場所の観戦名物「白鷺の姉御」の正体と特徴
- 白鷺の姉御が支える老舗精肉店「鳥孫商店」の歴史と事業内容
- 白鷺の姉御の家族である「山の神」神野大地選手との関係
- 白鷺の姉御がメディアで注目されるようになった背景とエピソード
- 「黒鷺姉さん」など他の名物観客たちの特徴
- 名物観客が座る「溜席」の特別性と、維持員制度の仕組み
「白鷺の姉御」の正体とは?
その清楚で威厳ある佇まいは、NHKのテレビ中継にもたびたび映り込み、多くの相撲ファンの間で話題になります。「白鷺の姉御(しらさぎのあねご)」という愛称も、そんな姿にぴったり馴染むものとして定着しています。
そして、その正体は…
名古屋市で97年の歴史を誇る老舗精肉店「鳥孫商店(とりまごしょうてん)」の女将
名古屋コーチンや奥三河どり、天然のマガモといった高級食材を扱う名店を、4代目社長夫人として長年支えてきた方です。まさに“名古屋場所の顔”とも言える存在。
本場所では、白を基調とした着物に高く結い上げた髪、眼鏡姿で西の溜席に座るその姿が印象的。控えめで上品な所作も相まって、会場の空気を引き締めるような独特のオーラを放っています。
本名:磯部安江
愛称:白鷺の姉御(しらさぎのあねご)
職業:「鳥孫商店」4代目社長夫人
店舗:名古屋で97年続く老舗精肉店
観戦位置: 西の花道前から7列目の溜席
特徴: 白い着物、高く結い上げた髪、眼鏡
2025年の名古屋場所から、会場が愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)から新設の「IGアリーナ」へ変更となるため、これまでの観戦位置も変わる可能性があります。
なお、アクセス方法や座席配置なども大きく変わるため、観戦を予定している方は、事前の確認が大切です。以下の記事では、チケット情報や新会場へのアクセスに加え、名古屋場所の見どころも紹介しています。ぜひご覧ください。

白鷺の姉御で有名な鳥孫商店って?
かつては名古屋・柳橋市場で愛され、現在は熱田区の「大名古屋食品卸センター」に店舗を構える鳥孫商店。
名古屋コーチンや奥三河どり、天然のマガモなど、希少で高品質な鶏肉を取り扱っており、地元の高級焼き鳥店や東京の有名レストランなどにも卸しているとのことです。
なお、2013年放送のラジオ番組では「創業85年」と紹介されており、創業は1928年ごろと推定されています。つまり、2025年時点で創業97年。「100年の歴史を誇る老舗」といえる、名古屋を代表する専門店のひとつです。
鶏肉の卸って儲かるの?
鳥孫商店のように、一般客向けの販売だけでなく、飲食店や料亭などへの業務用卸も行っている店は、一定の安定収益が見込めます。
参考までに、全国の食肉卸売業者の平均的な粗利率は10~20%前後とされており、高級食材や地鶏のような付加価値の高い商品を扱う店舗では、さらに利益率が上がる傾向にあります。
たとえば1日あたり30万円の売上があり、粗利率が15%と仮定した場合、1日あたりの粗利益は約4.5万円。これを月20営業日で計算すると、月商600万円、粗利益は約90万円になります(諸経費別)。
もちろん、実際の経費(人件費・家賃・仕入れなど)や繁忙期・閑散期の変動も大きいため一概には言えませんが、長年続く老舗が現在も繁盛しているという点から、安定した収益を維持している可能性は高いと考えられます。
白鷺の姉御と「山の神」知られざる家族の絆
また、磯部安江さんは箱根駅伝で「3代目・山の神」と称された神野大地(かみの だいち)選手の祖母としても知られています。
神野選手が無名だった頃から、「うちの孫が駅伝を頑張っているの」と話していた磯部さん。その後、青山学院大学時代に神野選手は、箱根駅伝5区の山登りで驚異的な走りを見せ、一躍全国的なスター選手となりました。
そんな磯部さんの存在に、TBSアナウンサーの安住紳一郎さんもいち早く注目。2023年7月23日放送のラジオ番組『安住紳一郎の日曜天国』では、「僕は神野選手よりも先に、おばあちゃんの方を知っていた」と笑いながら語っていました。
神野大地選手の主な実績
- 青山学院大学時代に箱根駅伝で活躍(「3代目・山の神」)
- 2019年 アジアマラソン選手権 金メダル獲得
- 2023年からM&Aベストパートナーズ陸上部 プレイングマネージャー就任
- 愛知県津島市出身
白鷺の姉御のメディアでの注目
名古屋場所の観戦名物として、リスナーや相撲ファンの間でも広く知られるようになった白鷺の姉御。その存在を全国に知らしめたきっかけのひとつが、TBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』です。
番組では2009年頃からたびたび彼女の話題が取り上げられ、安住アナウンサーの語りを通じて、その魅力がユーモアとともに紹介されてきました。
- 着物姿で静かに観戦する姿に感銘を受け、「白鷺の姉御」と命名。
- 名古屋場所の西の花道に毎年現れることに注目。
- コーラをストローで微動だにせず飲む所作が「白鷺のよう」と評された。
- 長年名前も素性も知らぬまま、番組内で親しみを込めて紹介。
- 「孫より先におばあちゃんを全国区にしてしまった」と笑い話に。
- 実際に親交を深めた後も、変わらぬ敬意と距離感をもって紹介している。
これらの放送の一部は、TBSポッドキャストの公式YouTubeで実際に聴くことができます。なかでも「白鷺の姉御 2023夏」と題した回では、安住さんが姉御との思い出を軽快に語っており、番組のあたたかくて楽しい雰囲気もあわせて味わえます。
ぜひ以下よりチェックしてみてください。
私もラジオを聴いてみたけど、テレビのときとは違って、安住さんがすごくのびのびと話していたのが印象的だったわ。白鷺の姉御への愛情も感じられて、とっても楽しかった♪
なぜ白鷺の姉御と呼ばれているのか?
「白鷺の姉御」という呼び名は、安住さんが番組内で勝手に命名したものであると、本人も繰り返し語っています。
その名前の由来については明言されていませんが、2011年の名古屋場所(魁皇の引退場所)で安住さんが愛知県体育館を訪れた際の出来事が、印象的なエピソードとして語られてました。ラジオでは次のように話しています。
「白鷺の姉御が、着物とか化粧が崩れないように、女性ならではの感じで。あんまり上半身とか顔を動かさずにね。で、化粧とか口紅とかが落ちちゃうから、細いグラスのコーラにストローをさして、微動だにせず飲んでるの見て「白鷺だ!」と思ったよね。」
引用元:安住紳一郎アナウンサー(TBSラジオ「日曜天国」より)
正式な由来は定かではありませんが、このような佇まいや所作の美しさが「白鷺」というイメージにつながったのかもしれませんね。
「白鷺の姉御」と安住アナとの長年の交流
安住紳一郎アナウンサーが「白鷺の姉御」と名付けてから、すでに10年以上。最初は遠くから観察していた存在でしたが、やがて交流が生まれ、番組を通して深まっていきました。
白鷺の姉御と安住アナの交流年表
- 2011年:魁皇の引退場所に現地観戦。白鷺の姉御の佇まいに惹かれ、放送でもたびたび紹介。
- 2013年:ついに本人と面識を持ち、『日曜天国』を自宅から生放送。女将を務める「鳥孫商店」も紹介された。
- 2020年:新型コロナウイルスの影響で名古屋場所が東京開催となった際、番組内で安否確認の電話を実施。変わらぬ関係性がうかがえる。
- 2023年:放送で「孫より先におばあちゃんを有名にしてしまった」と回想。神野大地選手(3代目・山の神)が孫であることも話題に。
このように、白鷺の姉御は「ただの常連観客」ではなく、番組と深く結びついた存在となっています。長年にわたる敬意とユーモアのこもった紹介は、リスナーにも愛される恒例コーナーのひとつです。
「西の花道に陣取っています、白鷺の姉御って和服を着た女性の方が必ずテレビ中継に映りますけども、私たち、その白鷺の姉御に10年くらい前から注目して、その白鷺の姉御の家から生中継やったことあるんですよ」
引用元:安住紳一郎アナウンサー(TBSラジオ「日曜天国」より)
白鷺の姉御だけじゃない!名古屋場所の名物観客
名古屋場所の観戦名物といえば「白鷺の姉御」が有名ですが、実は彼女だけではありません。TBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』では、「白鷺の姉御」だけでなく、他の観客にも注目し、安住アナが独自の視点でユニークな愛称をつけて紹介しています。
「これだけテレビに映っているなら、もはや公人扱い(笑)」と語る安住さん。名古屋場所の常連観客たちは、もはや「土俵を彩るもうひとつの名物」とも言える存在です。
もちろんすべて本人の了承なし。安住さん自身も「勝手に命名してますけど(笑)」と苦笑まじりに語っていますが、その的確な観察とネーミングセンスには多くのリスナーが共感。今では「観客ウォッチ」という楽しみ方もすっかり定着しています。
ここでは、そんな名古屋場所を彩る「名物観客」を紹介します。
黒鷺姉さん(くろさぎねえさん)
- 正体:名古屋・錦の高級クラブ「花路」のママ
- 観戦位置: 東の花道側の溜席
- 特徴:黒っぽい豪華な着物、クラブママらしい貫禄ある髪型
- 観戦スタイル:複数席を確保し、美人スタッフと共に観戦
ひばり姉さん
- 観戦位置:東正面脇、呼び出しさんの左側付近
- 特徴:黄色い着物、前にせり出した特徴的な髪型
- 愛称の由来:安住紳一郎アナが「花形満というか、近藤です」みたいな髪型と表現
若鮎姉さん(わかあゆねえさん)
- 観戦位置:白鷺の姉御と道を挟んだ反対側、行司だまり寄り
- 特徴:白鷺の姉御より若く、似た系統の着物
- 見分け方:安住アナによる詳細な位置説明
まだ名前のないお姉さん(名前はリスナー募集中!)
- 場所:西の奥、15列目付近
- 特徴:着物姿で静かに観戦
こんなにたくさんの人に名前をつけていたなんて知らなかった。しかも、それぞれの特徴をちゃんと押さえてて…。安住さんの観察力とネーミングセンスはさすがだね!
ちなみに、名古屋場所だけでなく、他の本場所でも「いつもいる観客たち」に注目が集まっています。
誰もが一度は気になったことのある「溜席の常連たち」その正体や背景をまとめた記事がありますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。


白鷺の姉御が毎年陣取る「特別な席」とは?
白鷺の姉御がいつも座っているのは、土俵から最も近い「溜席(たまりせき)」と呼ばれる特別な席だと考えられます。この席は、力士たちの息遣いや踏みしめる音まで間近に感じられる、まさに相撲観戦の特等席。しかし、この席は一般販売される数が少なく、主に「維持員」と呼ばれる支援者に優先的に提供されています。
- 日本相撲協会に対して、多額の寄付が必要
- 寄付額は開催地によって異なる
【例】
〇名古屋・大阪・福岡⇒3年間で最低112万5千円
〇東京場所⇒3年間で405万円以上 - 寄付の見返りとして、本場所15日間を同じ特別席で観戦できる特典がある
毎年同じ席で姿を見せる白鷺の姉御も、こうした維持員制度を活用していると考えられます。実際、溜席で毎日観戦している人の多くが、この制度を利用しているためです。
維持員制度や寄付金の詳細については、以下の記事で解説しています。ぜひご覧になってください。

まとめ
名古屋場所は、土俵の上だけでなく、観客席にも個性豊かな「名物」がたくさん。なかでも白鷺の姉御は、長年にわたって名古屋場所を見守り続けてきた、いわば「もうひとつの主役」といえる存在です。
華やかすぎず、静かに、でもしっかりと存在感を放つその姿は、まさに“白鷺”のよう。観戦スタイルにも品格がにじみ出ていて、見ているこちらも背筋が伸びるような気持ちになります。
新しい会場「IGアリーナ」でも、そんな観客たちの姿がまた相撲の風景を彩っていくはずです。観戦に行かれる方は、土俵だけでなく、観客席にも目を向けてみてくださいね。きっと、また新しい名物との出会いがあるかもしれません。
今回も、最後まで読んでいただきありがとうございました。
また、次回の記事でお会いしましょう。
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