相撲雑学

相撲の呼び出しは給料をいくらもらっている?年収や階級など徹底解説

引退後は幕内の取り組みばかり観ていましたが、先日YouTubeで番付下位の取り組みも観てみました。すると、呼び出しの「呼び上げ」になつかしさを覚え、現役当時の光景と緊張感が蘇り、何とも言えない感情がこみ上げてきました。

元力士のしんざぶろうです。こんにちは!

相撲の本場所で欠かせない存在、それが「呼び出し」です。
相撲界の規定などでは、「呼出」と表記されています。

土俵下での力士の呼び上げや土俵の管理、太鼓打ちなど、呼び出しの仕事がなければ取組みはスムーズに進みません。普段はあまり注目されることが少ないですが、呼び出しは相撲界にはなくてはならない重要な役割を担っています。

この記事では、呼出の階級ごとの給料や昇格の仕組み、さらに仕事内容について、幅広く解説していきます。

相撲ファンの方も、呼び出しの仕事に興味がある方も、ぜひ最後までお付き合いください!

この記事を読んでわかること
  • 呼び出しの給料の構成
  • 昇格の仕組みと特例
  • 主な業務内容
  • 階級による責任と給料の変動
相撲観戦大好き
さくら
相撲観戦大好き
さくら
呼び出しさんの太鼓の音を聴くと「相撲が始まる!」て、いつもワクワクしちゃうのよね♪

呼び出しの階級別の給料について

呼び出しの給料は、「基本給」と「手当」の2つから成り立っています。基本給は階級によって決まりますが、手当は個人の能力や勤務態度に応じて変動します。階級が上がるにつれて、基本給だけでなく手当の額も増えていくものと考えられます。

階級別の給料は以下の通りです。

階級 本棒(月給) 手当(月)
三役呼出以上 360,000~400,000円未満 各人の能力・成績・勤務
状況ならびに物価・社会
状勢等を勘案し、理事長
が決定する。
幕内呼出 200,000~360,000円未満
十枚目呼出 100,000~200,000円未満
幕下呼出 42,000~100,000円未満
三段目呼出 29,000~70,000円未満
序二段呼出 20,000~29,000円未満
序の口呼出以下
(3年間見習い)
14,000~20,000円未満

手当の額はどれくらい?

先ほどもお伝えしましたが、手当は個々の実績や評価に基づいて支給されるため、固定された金額ではありません。そして規定では、「能力や成績、勤務状況、さらに物価や社会情勢を考慮して理事長が決定する」とされているだけで、具体的な金額も公表されていません。

ただし、初任給に関する情報から、手当額が確認できます。
ぜひご参考にしてみてください。

呼出しの初任給

本棒(月):14,000円
手当(月):126,000円
合計(月):140,000円

給料を年収に換算するとどうなる?

基本給や手当の仕組みは少し複雑で、具体的なイメージを持ちにくいですよね。そこで、手当を含めた各階級ごとのおおよその月収と年収を表にまとめてみました。

なお、手当の詳細は公表されていない部分が多いため、初任給として公開されている「126,000円」を全階級に一律で加算しています。

階級 月収 年収
三役呼出以上 486,000円~526,000円未満 5,832,000円~6,312,000円未満
幕内呼出 326,000円~486,000円未満 3,912,000円~5,832,000円未満
十枚目呼出 226,000円~326,000円未満 2,712,000円~3,912,000円未満
幕下呼出 168,000円~226,000円未満 2,016,000円~2,712,000円未満
三段目呼出 155,000円~196,000円未満 1,860,000円~2,352,000円未満
序二段呼出 146,000円~155,000円未満 1,752,000円~1,860,000円未満
序の口呼出
(3年間見習い)
140,000円~146,000円未満 1,680,000円~1,752,000円未満

表では、三役呼出し以上の年収が「約580万円~630万円未満」と示していますが、これはあくまで最低限の額です。

後ほど階級についても詳しく解説しますが、三役呼出しの上には最上位である「立呼出し」といった階級も存在します。階級ごとに異なる役割があるにもかかわらず、すべてが同額であるはずはありません。その差異を反映させるのは、規定に基づき「手当」が決定的な要素となります。

この点を踏まえると、立呼出しなどの上位階級の年収は700万円を超える可能性が高いと推測されます。

退職金について

呼び出しの退職金については、明確な制度が設けられていないため、具体的な金額はわかっていませんが、一般的には他の職業と同様に、勤続年数に応じた手当が支給されると考えられています。

例えば、立行司の場合、勤続58年で約1200万円の退職金が支給されたという事例があります。また、日本相撲協会の年間収入が約100億円にのぼることから、呼び出しや他の裏方の待遇改善を求める声も多く上がっています。

特に、力士や裏方の待遇向上を期待する意見が多く、協会の利益分配の見直しが求められています。今後、こうした声に応じて、呼出しの退職金制度が改善される可能性もあるでしょう。

 

ちなみに、他の裏方である「行司」「床山」の給料について、詳しく解説した記事もあります。興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。

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階級について

では、「三役呼出し以上」とは具体的にどのような階級が存在するのでしょうか。ここでは、呼出しの階級と昇格条件について詳しく解説していきます。

呼び出しの階級は9つに分かれており、基本的には勤続年数に基づく年功序列の仕組みです。見習い期間を含めると、呼出しとしてのキャリアは約3年間の養成期間から始まります。その後、経験を積みながら各階級へと昇格していきますが、その昇格には特定の条件が定められています。

それでは、呼出しの階級と昇格条件を以下の表にまとめました。

階級 資格 定員
(全体で45名以内)
立呼出 明記されていない 1名
副立呼出 勤続四十年以上のもので成績優秀なもの、または勤続三十年以上四十年未満のもので特に成績優秀なもの。 1名
三役呼出 同上 3名
幕内呼出 同上 7名以内
十枚目呼出 勤続三十年以上のもので成績優秀なもの、または勤続十五年以上三十年未満のもので特に成績優秀なもの。 8名以内
幕下呼出 勤続十五年以上のもので成績優秀なもの、または勤続十年以上十五年未満のもので特に成績優秀なもの。 なし
三段目呼出 明記されていない なし
序二段呼出 明記されていない なし
序の口
(見習い期間三年)
呼出しの新規採用は、義務教育を修了した満十九才までの男子で、適格と認められる者から行う。 なし

ではいったい、昇格の条件にある「成績が優秀な者」とは、どのように決められているのでしょうか?次に、その疑問について解説していきます。

成績が優秀な者とは?

日本相撲協会の規定によると、「呼出しの階級順位の昇降は、年一回、提出された考課表をもとに九月場所後の理事会で審議し、翌年度の番付編成を行う」と定められています。

つまり、呼出しの昇格や降格は年に1回、9月場所後の理事会で決定され、翌年度から適用されます。

なお、この考課表が誰によって評価されるか確認できませんでしたが、行司と同様に、毎場所や巡業ごとに審判部長や巡業部長が評価する方式であると推測されます。

 

なお、行司の階級や昇進について気になる方は、こちらの記事でくわしく解説しています。興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。

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昇格に影響する特別な要因

呼び出しの昇格は基本的に年功序列で進みますが、病気や中途退職、死亡などの特別な事情で、昇格が遅れたり追い越されるケースもあります。

例えば、「勲」(いさお)は病気で土俵に上がれない期間があり、その後に亡くなったため、昇格が叶いませんでした。また「兼三」のように、他の呼出しが退職するタイミングで、年功序列を飛ばして立呼出しに昇格する特例もあります。逆に「次郎」は「音痴」という評価が影響し、他の呼出しに追い抜かれる場面がありました。

このように、呼び出しの昇格には年功序列だけでなく、病気や中途退職、死亡、評価などの様々な要因が関係している場合があります。

仕事内容

呼び出しの仕事は非常に多岐にわたり、相撲の進行に欠かせない存在です。本場所の裏で多くの業務をこなしており、その中でも特に重要とされるのが「呼び上げ」「土俵築」「太鼓打ち」の3つの役割です。

これらの業務は呼び出しの中心的な役割であり、それぞれが本場所や相撲の伝統を支える大切な仕事となっています。次に、その3大業務について詳しく説明します。

呼出しの3大業務
  1. 呼び上げ
    ⇒土俵下で控えている力士を呼び上げる。三役力士以上の取り組みは二声(2回名前を呼ぶ)で、それ以下は一声で呼び上げる。
  2. 土俵築(どひょうつき)
    ⇒土俵の構築は本場所や巡業先、各部屋の土俵も含めて、すべて呼び出しが中心となって行います。なお、土俵はすべて場所ごとに新しく作り直します。
  3. 太鼓打ち
    ⇒相撲の開始や終了などで太鼓が打たれますが、この太鼓打ちはすべて呼び出しが行います。

*太鼓打ちについては、下記の動画が参考になると思いますので、参考にしてみてください。

 

その他の業務として、取組み中の合間に行われる土俵の整備(砂をならしたり、水を打つなどの管理)、懸賞旗の掲示、力士の制限時間を知らせるなど、幅広い仕事を担当します。

このように、呼び出しは土俵上の進行を支える重要な役割を担っており、階級が上がるにつれて任される業務や責任も増し、それに伴い給料も上がっていきます。

管理人の後輩
元力士 まさる
管理人の後輩
元力士 まさる

部屋の「土俵築」に関しては、僕たち力士も協力して作っていたなぁ。でも、土俵俵(どひょうたわら)や最終的な仕上げは、呼出しさんの技術がないとできないよね

まとめ

呼び出しは、相撲の進行を支えながら、階級が上がるごとにその責任も増していきます。給料は階級や能力に応じて決まり、昇進は年功序列が基本ではありますが、特別な事情で昇格が早まったり遅れたりすることもあります。

彼らは本場所の取組みだけでなく、相撲界全体の運営を陰で支えているのです。次に相撲を観戦する際には、力士だけでなく呼び出しがどのように働いているのかにも注目してみてください。

この記事では紹介しきれなかった呼出の仕事はまだたくさんあります。注意深く観察することで新たな発見があり、相撲をより深く楽しめるようになると思いますよ。

今回も、最後までお読みいただきありがとうございました。
また、次回の記事でお会いしましょう。