行司ってすごいですよね。勝ち名乗りのときに力士の名前を間違えずに言えるのは感心します。特に、下位の取り組みだと、顔も知らない力士が多いので「どっちが勝ったか、負けたか、取り組み中に分からなくならないのかな?」って思うことがありました。
人の顔と名前を覚えるのが苦手な、元力士のしんざぶろうです。こんにちは!
相撲の行司には階級があることはご存じの方も多いかもしれませんが、その具体的な違いや給料の仕組みについては、詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか?
実は、行司の給料は階級や評価によって大きく異なり、行司ならではの特別な補助も存在します。もちろん衣装の違いも大きく、幕下以下の行司は裸足で土俵に上がるため「はだし行司」とも呼ばれています。
この記事では、行司の階級別の給料や衣装の違い、昇進の仕組みについて詳しく解説していきます。
この記事を読めば、力士だけでなく行司の装束にも興味が持てるようになり、より深く相撲を楽しめるようになります!きっと。
それでは、最後までお付き合いくださいね。
さくら
- 行司の給料の仕組みや階級ごとの違い
- 手当や装束補助費の詳細
- 初任給や年収の目安
- 行司の昇進に関わる成績評価や年功序列の影響
- 立行司に求められる特別な責任と品格
行司の階級別の給料事情
まずはじめに、行司の階級ごとに異なる給料について詳しく解説します。行司の給料は「本棒」(基本給)、「手当」、そして装束補助費(衣装代)の3つから成り立っており、これらが月ごとに支給されます。
「本棒」は階級によって金額が異なり、それが収入に大きな影響を与えます。下の表で、各階級ごとの違いを確認してみましょう。
階級 | 本棒(月) | 手当(月) | 装束補助費 (一場所につき) |
---|---|---|---|
立行司 | 400,000~500,000円未満 | 各人の能力・成績・勤務 状況ならびに物価・社会 状勢等を勘案し、理事長 が決定する。 |
50,000円 |
三役行司 | 360,000~400,000円未満 | 40,000円 | |
幕内行司 | 200,000~360,000円未満 | 30,000円 | |
十枚目行司 | 100,000~200,000円未満 | 25,000円 | |
幕下行司 | 42,000~100,000円未満 | 20,000円 | |
三段目行司 | 29,000~42,000円未満 | ||
序二段行司 | 20,000~29,000円未満 | ||
序の口行司 | 14,000~20,000円未満 |
手当の額はどれくらい?
手当については「能力や成績、勤務状況、さらに物価や社会の状況を考慮して、理事長が決定する」とされているだけで、多くの人は「具体的にいくらなの?」と疑問に思ったのではないでしょうか。
しかし、具体的な金額は公表されておらず、唯一明らかにされているのが初任給の情報だけです。これが唯一の参考情報となりますので、確認してみてください。
本棒(月):14,000円
手当(月):126,000円
合計(月):140,000円
装束補助費(衣装代)
行司には、階級に応じた特別な衣装が必要です。特に上位の行司になると、衣装は非常に豪華になり、特注品が多く使われるため、費用もかなり高額になります。これらの衣装代は、行司の収入に大きな影響を与える重要な要素です。
さらに、十両以上の行司の衣装は季節によっても異なり、冬用と夏用が存在します。冬用は絹の厚地で光沢があり、夏用は薄手で麻地が使用されます。特に夏場には涼しげな色合いが求められ、観客にも視覚的な楽しみを提供しています。
このように、行司の衣装には費用が掛かってしまうため、他の呼出や床山などにはない、「装束補助費」が支給されています。
ちなみに、他の裏方である「呼出し」「床山」の給料について、詳しく解説した記事が以下にあります。興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。
給料を年収に換算するとどうなる?
基本給や手当の仕組みは少し複雑で、具体的なイメージがしにくいかもしれません。そこで、上記の装束補助費や手当を含めた各階級ごとのおおよその月収と年収を表にまとめました。
ただし、手当は詳細が不明な部分が多いため、初任給として公表されている「126,000円」を一律で加算しています。
階級 | 月収 | 年収 |
---|---|---|
立行司 | 576,000円~676,000円未満 | 6,912,000円~8,112,000円未満 |
三役行司 | 526,000円~566,000円未満 | 6,312,000円~6,792,000円未満 |
幕内行司 | 356,000円~516,000円未満 | 4,272,000円~6,192,000円未満 |
十枚目行司 | 251,000円~351,000円未満 | 3,012,000円~4,212,000円未満 |
幕下行司 | 188,000円~246,000円未満 | 2,256,000円~2,952,000円未満 |
三段目行司 | 175,000円~188,000円未満 | 2,100,000円~2,256,000円未満 |
序二段行司 | 166,000円~175,000円未満 | 1,992,000円~2,100,000円未満 |
序の口行司 (見習い期間 三年) |
160,000円~166,000円未満 | 1,920,000円~1,992,000円未満 |
とはいえ、見習いと最上位の立行司が同じ手当を受け取っているとは考えにくく、実際にはこの表の金額よりも高い給料を得ている可能性が高いでしょう。なお、立行司の年収は正式に公表されていませんが、推定では1000万円以上とされています。
ちなみに、行司の最高位である「立行司」について詳しく解説した記事があります。年収や退職金制度にも触れていますので、興味のある方はこちらもチェックしてみてください。
階級ごとの衣装の違いと昇進について
行司には階級があり、それぞれの階級に応じて役割や装束が異なります。まずは下の表で、行司の階級ごとに使用される装束や、房(ふさ)の色について確認してください。
階級 | 階級色(房の色) | 着用具 |
---|---|---|
立行司:木村庄之助 | 総紫 | 足袋、草履、短刀、印籠 |
立行司:式守伊之助 | 紫白 | |
三役行司 | 朱 | 足袋、草履、印籠 |
幕内行司 | 紅白 | 足袋 |
十枚目行司 | 青白 | |
幕下行司 | 黒または青 | なし(素足) |
三段目 | ||
序二段 | ||
序の口 |
ちなみに相撲協会の規定によると、「行司の新規採用者には、3年間の見習い期間を設ける。ただし、行司の階級に応じて番付に入れることを妨げない」とされています。
つまり、見習い期間中であっても、実力が認められれば、序の口や序二段といった番付に昇進することが可能です。この規定は、行司としての成長と評価が見習い期間中にも進む可能性があることを示しています。
昇進するには?
では、具体的に行司が昇進するにはどうすれば良いのでしょうか? 行司は年功序列で昇進すると思われがちですが、それだけではなく成績評価も大きく影響します。
そして、相撲協会の規定の中で「行司番付編成」には以下の記述があります。
行司の階級順位の昇降は、年功序列に依ることなく、次の成績評価基準に基づき、理事会の詮衡(せんこう)により決定する。
- 土俵上の勝負判定の良否
- 土俵上の姿勢態度の良否
- 土俵上の掛け声、声量の良否
- 指導力の有無
- 日常の勤務、操行の状況
- その他行司実務の優劣
これらの評価項目に基づき、毎本場所や巡業ごとに審判部長や巡業部長などが考課表を作成します。通常、番付編成会議は各場所後に行われていますが、行司の昇降に関する会議については年に一度、九月場所後の編成会議で翌年度の番付が決定されます。この時、考課表を基に審議が行われるているのです。
- 行司の昇進は年功序列だけでなく、成績評価も重要
- 「行司番付編成:第13条」に基づき、成績を評価
- 審判部長や巡業部長が、毎本場所や巡業ごとに考課表を作成
- 行司の昇降に関する審議は、年に一度、九月場所後の編成会議で行われ、翌年度の番付が決定
なお、行司最高位である「立行司」に関しては、この成績評価の対象外とされています。その規定は「行司賞罰規定」に記されており、内容は以下の通りです。
立行司は、成績評価の対象より除外し、自己の責任と自覚をまつこととする。ただし、式守伊之助の名跡を襲名した者は、襲名時より2年間は他の行司と同一に扱うものとする。
つまり、立行司は他の行司とは異なる立場にあり、技術的な評価だけではなく、立行司にふさわしい責任感や自覚が伴っていなければ昇格は難しいということです。
これは、横綱に求められる「品格」に近い価値観と言えるでしょう。力士だけでなく、行司もまた日本の伝統文化を後世に伝える大切な役割を担っているのです。
元力士 まさる
また、横綱昇進の成績条件や品格について、下記の記事で詳しく解説しています。ぜひこちらもチェックしてみてください。
まとめ
こうして、行司の給料や昇進の仕組みを知ると、相撲の世界がさらに奥深く感じられますね。行司は取り組みの判定をするだけでなく、相撲全体の秩序を保つ重要な役割を担っています。
特に立行司となると、技術だけでなく、相撲界全体を支える品格や自覚が強く求められる厳しい世界です。立行司の存在が、相撲の格式と伝統を守る重要な要素にもなっているんですね。
次の取り組みでは、力士のだけでなく、行司の装束やその立ち振る舞い、力士の名前を呼び上げる姿などにも注目してみてください。行司に焦点を当てて観戦すると、相撲の楽しみ方が一層広がるはずです。
今回も、最後までお読みいただきありがとうございました。
また、次回の記事でお会いしましょう。