どすこいの意味とは?力士は日常で言わない理由を元力士が解説
相撲と聞くと、「どすこい!」という掛け声を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
テレビ番組や漫画、キャラクターでもよく使われるので、「力士は普段からどすこいって言っているのかな?」と思う方もいるかもしれませんね。
こんにちは!元力士のしんざぶろうです。
先に結論から言うと、力士が取組中や相撲部屋の日常で「どすこい」と言うことは、まずありません。僕自身も現役時代、稽古場や部屋の生活の中で「どすこい」という言葉を使ったことはありません。
ただ、「どすこい」という言葉が相撲とまったく関係ないかというと、そうではありません。では、なぜ「どすこい」は相撲の言葉として広く知られているのでしょうか。
この記事では、「どすこい」の意味、力士が日常で使わない理由、そして実際にはどんな場面で使われる言葉なのかを、元力士の体験も交えながらできるだけわかりやすく解説していきます。
「どすこい」は、力士が普段から使っている言葉だと思っていました!でも、取組中や相撲部屋の日常ではほとんど使わないんですね。
どこで使われる言葉なのか、ますます気になります♪
「どすこい」の意味・語源とは?
まずは、「どすこい」という言葉がどのような意味で使われてきたのかを整理していきましょう。
「どすこい」は相撲らしさを感じさせる掛け声
「どすこい」は、相撲の力強さや、力士の大きな体をイメージさせる言葉として広く知られています。
テレビ番組や漫画、イベントなどでも、相撲を表すときに「どすこい!」という言葉が使われることがありますよね。
一般的には、次のようなイメージで使われることが多い言葉です。
- 相撲らしさを表す掛け声
- 力強さや迫力を感じさせる言葉
- 力士や土俵を連想させる表現
ただし、ここで整理しておきたいのは、「どすこい」は力士が土俵上で決まり文句のように使う言葉ではないという点です。
「どすこい」は相撲を連想させる掛け声として広く知られていますが、力士が取組中に使う決まり文句ではありません。
相撲の現場用語というより、相撲文化やイメージと結びついた言葉と考えるとわかりやすいです。
語源には諸説がある
「どすこい」の語源については、はっきりと一つに決まっているわけではありません。
よく紹介される説としては、次のようなものがあります。
- 「どっこい、どっこい」という掛け声が変化した説
- 「どっこい」がなまって「どすこい」になった説
- 「大きい」「太い」といった意味を持つ方言に由来する説
このように見ると、「どすこい」は力を入れるときの掛け声や、昔から伝わる言葉の響きと結びつきながら、相撲らしい表現として広まっていった言葉だと考えられます。
たしかに、重いものを持ち上げるときに「どっこいしょ」って言っちゃうことがあります!
そう考えると、「どすこい」が力を入れる掛け声と関係しているという説も、なんとなくイメージしやすいですね。
「どすこい」の語源には諸説があります。はっきりと一つに決まっているわけではないため、この記事では複数ある説の一つとして紹介しています。
「相撲の専門用語」というより相撲文化を感じる言葉
相撲界で使われる言葉には、実際の生活や稽古の中で使う言葉もあります。
たとえば、次のような言葉です。
- 「ごっちゃんです」
- 「ちゃんこ」
- 「稽古」
- 「番付」
これらは、相撲部屋での生活や、相撲界の仕組みを知るうえで欠かせない言葉です。それに対して「どすこい」は、部屋の生活や番付制度を説明するための言葉ではありません。
相撲を紹介するときや、相撲らしい雰囲気を伝えるときに使われやすい言葉、と考えると位置づけがわかりやすいです。
相撲部屋で「どすこい!」って言いながら稽古することは、まずないですね。相撲っぽい響きはあるんですけど、現場で普段使う言葉とはちょっと違う感じです。
なお、「ごっちゃんです」の意味や、相撲界ならではの礼儀作法について知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
「どすこい」が使われる場面は?相撲甚句との関係
ここからは、「どすこい」が実際に使われる場面について見ていきましょう。ポイントになるのが、相撲甚句(すもうじんく)です。
相撲甚句とは力士が歌う伝統的な唄
相撲甚句とは、力士が独特の節回しで歌う、相撲の伝統的な唄です。
『相撲大事典』第4版では、相撲甚句について次のような内容が説明されています。
- 七・七・七・五の四句で構成される民謡の形式を踏まえている
- 哀調を帯びた独特の節回しで歌われる
- もともとは力士が余興として歌っていた
- 江戸時代末期から明治にかけて流行した
- 現在の相撲甚句では「どすこい、どすこい」という掛け声が入るようになった
参考:『相撲大事典』第4版、金指基 原著、現代書館
このように見ると、「どすこい」は力士が日常で使う言葉ではなく、相撲甚句の中で使われる掛け声として知られている言葉だとわかります。
「どすこい」は相撲甚句の囃子詞
相撲甚句の中で聞こえる「どすこい、どすこい」は、ただの掛け声ではなく、歌の流れを作る大事な言葉です。
専門的には、囃子詞(はやしことば)と呼ばれます。
少し難しい言葉ですが、簡単にいうと、歌の合間に入る掛け声や合いの手のようなものです。
囃子詞(はやしことば)とは、歌の合間に入る掛け声や合いの手のことです。「どすこい、どすこい」も、相撲甚句の流れを作ったり、唄を盛り上げたりする役割があります。
相撲甚句は巡業や花相撲で披露される
相撲甚句は、本場所の取組中に聞くものではありません。主に、巡業や花相撲のときに披露されます。
本場所とは違い、巡業では相撲甚句のほかにも、初切(しょっきり)や髪結い実演など、相撲文化を身近に感じられる催しが行われます。
■相撲甚句を聞ける主な場面
- 地方巡業
- 花相撲
- 相撲関連の催し
巡業や花相撲では、幕下以下の力士数人が土俵上に並び、関取の化粧廻しを借りて歌います。
力士たちは、手拍子や足の音頭に合わせながら唄い、観客に相撲の伝統芸能を見せてくれます。
化粧廻しを締めると、土俵上の雰囲気が一気に華やかになります。取組とは違いますけど、お客さんに見てもらう大事な場面ですね。
代表的な相撲甚句には「花づくし」などがある
相撲甚句には、昔から歌われてきた代表的な演目があります。
『相撲大事典』第4版では、代表的なものとして次のような演目が紹介されています。
- 前唄
- 花づくし
- 山づくし
- 出世かがみ
- 当地興行
また、巡業地の名所や名物を歌詞に織り込んだものは「ご当地甚句」と呼ばれます。巡業先に合わせた内容が入るので、その土地で聞くからこその楽しみもあります。
たとえば「花づくし」では、季節の花を織り込んだ唄が歌われます。
二月に咲くのが梅の花
三月桜や四月藤
六月牡丹に舞う蝶や
七月野山に咲く萩の
……――相撲甚句「花づくし」より一部抜粋
出典:『相撲大事典』第4版、金指基 原著、現代書館
こうした演目を知っておくと、相撲甚句がただの掛け声ではなく、ひとつの唄として成り立っていることがわかります。
実際の映像で見ると雰囲気がわかりやすい
相撲甚句は、文章だけで説明するよりも、実際に聞いてみると雰囲気がつかみやすいです。
まずは、こちらの動画で相撲甚句の様子を見てみてください。
参考:日本相撲協会公式YouTube「相撲甚句〜抜群の歌声〜」
動画を見ると、力士たちが土俵上に並び、手拍子や足の音頭に合わせて唄っている様子がわかります。
また、動画内の解説では、昔の相撲甚句は「型」と呼ばれ、土俵上で攻める型や守る型を見せながら歌っていたことも紹介されています。
実際に聞いてみると、思っていた以上にきれいな歌声で驚きますね。お相撲さんは歌が上手い、というイメージを持つ人がいるのも、相撲甚句を聞くとなんとなくわかる気がします。
映像で相撲甚句の雰囲気を見ておくと、「どすこい」がどのような流れの中で使われる言葉なのかもイメージしやすくなります。
相撲教習所で触れる機会もある
新弟子の頃には、相撲教習所で相撲の基本動作や歴史、礼儀作法などを学びます。
相撲甚句も、教習所の教養講座の中で触れる内容のひとつです。
僕も教習所のカリキュラムで相撲甚句を習ったはずなんですが、正直に言うと記憶はかなりあいまいです…。
教習所では朝から実技の稽古があり、そのあとに教養講座を受ける流れでした。
実技でしっかり体を動かしたあとの座学は、どうしても眠気との戦いになることもあったんですよね。
教習所の実技が終わったあとの座学は、たしかに眠くなりますね。相撲甚句が大事な文化だというのはわかっていても、新弟子のころは体力的にいっぱいいっぱいでした。
もちろん、相撲甚句そのものは相撲文化として大切なものです。
僕の記憶は少し頼りないですが、あらためて見ると、力士の声や手拍子、土俵上の雰囲気に相撲らしさが詰まっていると感じます。
なお、相撲教習所で学ぶ内容について知りたい方は、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
どすこいに関するよくある質問
最後に、「どすこい」について読者の方が疑問に感じやすいポイントをQ&A形式で整理します。
Q1.「どすこい」とはどういう意味ですか?
A.「どすこい」は、相撲らしさや力強さを感じさせる掛け声として広く知られている言葉です。
ただし、力士が稽古や取組で使う決まった掛け声ではありません。
相撲甚句の中で使われる掛け声として知られており、相撲文化と関係の深い言葉です。
Q2.力士は普段「どすこい」と言いますか?
A.力士が相撲部屋の日常生活や稽古場で「どすこい」と言うことは、まずありません。
相撲部屋では、返事や挨拶、稽古中の声など、もっと実際の生活に近い言葉が使われます。
「どすこい」は、力士が普段使う言葉というより、相撲をイメージしやすい言葉として広まったものと考えるとわかりやすいです。
Q3.「どすこい」は相撲甚句の何ですか?
A.「どすこい」は、相撲甚句の中で使われる掛け声です。
専門的には、囃子詞(はやしことば)と呼ばれます。囃子詞とは、歌の合間に入る掛け声や合いの手のような言葉のことです。
Q4.相撲甚句はどこで聞けますか?
A.相撲甚句は、主に巡業や花相撲などで披露されます。
本場所の取組中に聞くものではなく、取組以外の催しとして行われる相撲文化のひとつです。
巡業の内容は開催場所や日程によって変わる場合があるため、相撲甚句を見たい方は事前に公式情報を確認しておくと安心です。
Q5.「どすこい」の語源は何ですか?
A.「どすこい」の語源には諸説あります。
よく紹介されるものには、「どっこい」という掛け声が変化した説や、「大きい」「太い」といった意味を持つ方言に由来する説などがあります。
はっきり一つに断定できるものではないため、参考のひとつとして見ておくのがよさそうです。
まとめ
「どすこい」は、相撲を思い浮かべるときに自然と出てくる、とても親しみやすい言葉です。
ただ、実際には力士が取組中や相撲部屋の日常で使う言葉ではなく、相撲甚句という伝統的な唄の中で使われる掛け声でした。
相撲は、取組の勝ち負けだけでも十分に面白いものです。
でも、相撲甚句のような土俵の外にある文化を知ると、「どすこい」という言葉の聞こえ方も少し変わってくるのではないでしょうか。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
「どすこい」という短い言葉の中にも、相撲の歴史や文化が息づいている。
土俵の上の勝負だけでなく、力士の声や唄に耳を傾けると、相撲の楽しみ方はさらに広がっていくぞ。
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