白星・黒星の意味とは?どっちが勝ちか覚え方・由来まで元力士が解説
僕は現役時代、初日から3連敗した場所がありました。
別の場所では、初日に勝ったあと6連敗したこともありました。
負けが込んでくると、頭に浮かぶのは悪いイメージばかりでした。「負けたらどうしよう」「このまま勝てないんじゃないか」と、土俵に上がる前から考えてしまっていました。
しかも、その6連敗のあと、次の場所でも最初の一番を落としました。場所をまたいで7連敗となりました。
次の一番でようやく白星をあげたときの、力が抜けるような安堵は今でも覚えています。
こんにちは!元力士のしんざぶろうです。
相撲の勝ち負けは、白星と黒星で表されます。ニュースやスポーツ紙でも当たり前のように使われている言葉です。
ただ、どちらが勝ちだったか一瞬迷う方は少なくないと思います。しかも相撲界には、白星・黒星以外にも「星」のつく言葉がたくさんあります。
この記事では、白星と黒星のどちらが勝ちなのかを最初に示し、その覚え方や由来・語源、相撲界で使われる「星」のつく言葉をまとめて解説します。
うむ。星取表に並ぶ白と黒は、ただの記号ではない。
一つの丸に、その日の稽古も、眠れなかった夜も収まっておる。
読者のみんなには、言葉の意味だけでなく、その重みごと知ってほしい。
白星・黒星とは?どっちが勝ちかを最初に
白星と黒星は、本場所の取組の結果を表す言葉です。星取表という一覧表に記される印が、そのまま言葉になりました。
白星が勝ち、黒星が負け
細かい話に入る前に、結論からお伝えします。
- 白星が勝ち、黒星が負け
本場所の取組で勝てば白星、負ければ黒星がつきます。「白星をあげる」といえば勝つこと、「黒星がつく」といえば負けることです。
力士の成績も、この白星と黒星の数で表されます。7勝8敗と書かれていれば、白星が7つ、黒星が8つということです。
星取表とは?白い○と黒い●の見方
星取表は、力士ごとに場所中の勝敗を並べた一覧表です。会場の掲示やテレビ中継、新聞の相撲面でも見かけます。
この表では、勝ち負け以外の結果も記号で書き分けられています。
| 結果 | 記号 |
|---|---|
| 勝ち(白星) | ○ |
| 負け(黒星) | ● |
| 不戦勝 | □ |
| 不戦敗 | ■ |
| 休場 | や |
| 引分 | × |
| 痛み分け | △ |
勝ちと不戦勝は白、負けと不戦敗は黒で示されます。色を見るだけで勝敗が分かる仕組みです。
もう迷わない白星・黒星の覚え方
相撲では、負けることを「土がつく」といいます。土俵内で足の裏以外の体が土につくと負けになることから生まれた表現です。
負けると土がついて体が黒くなる、とイメージしてみてください。黒星=土がついた=負けと結びつければ、もう迷いません。
白星と黒星は対になる言葉なので、黒星さえ押さえておけば、白星が勝ちだと分かります。
土がつくから黒星、って考えると一発ですね!
私、今まで何度も逆に覚えては忘れてました。
記号も白と黒で見分けられるなら、星取表を見るのが楽しくなりそうです♪
白星・黒星の由来と語源
白星・黒星は、いつごろ生まれた言葉なのでしょうか。始まりと、白黒が分かれた理由を見ていきます。
始まりは相撲の星取表
白星・黒星という言葉は、相撲の星取表で勝ちを白い丸、負けを黒い丸で記したことから生まれました。
星取表は江戸時代にはすでに使われていて、当時から勝敗を丸印で表していました。
この丸い印が「星」と呼ばれ、そのまま白星・黒星という言葉として定着していきました。
なぜ白星が勝ちで黒星が負け?
なぜ白が勝ちで黒が負けなのか、その正確な理由は分かっていませんが、有力とされる説があります。
有力とされるのは、相撲で負けると「土がつく」ことから、土で黒くなるイメージが黒星と結びついたという説です。
また、黒く丸い黒星は、その見た目から「炭団(たどん)」と呼ばれることもありました。
ただし、白を勝ち、黒を負けとした正確な経緯は、はっきり分かっていません。
今は野球・サッカーでも使う一般的な言葉に
白星・黒星は相撲の星取表から生まれた言葉ですが、今では相撲だけのものではありません。
野球やサッカー、将棋などの勝敗を伝えるときにも、当たり前のように使われています。
「連敗を止めて白星」「痛い黒星」といった見出しは、相撲以外のスポーツ面でもよく見かけますよね。
うむ。江戸の世から星取表に記されてきた白丸と黒丸が、今も野球や将棋の紙面に残っておるとは、面白きことよ。
なぜ白が勝ちとなったかは、今もはっきりとは分かっておらぬ。分からぬまま受け継がれる。それもまた、伝統というものなり。
勝ち負けを表す「星」の言葉
相撲界では、勝ち負けそのものを「星」で言い表します。中継の実況や解説でも、頻繁に出てくる言い回しです。
- 星をあげる|本場所の取組で勝つこと
- 星を落とす|負けること。勝てると思っていた相手に負けること(取りこぼし)も指す
- 星を拾う|負けを覚悟したような相撲で、思いがけず勝つこと
- 星勘定|本場所中の勝ち負けの数、またはそれを数えること
「星を落とす」と「星を拾う」は表と裏
「星を落とす」とは、単に負けることのほか、勝てるはずの相手に取りこぼすことも指します。格下と見られていた相手や、相性のよい相手に敗れた一番などが、これにあたります。
「星を拾う」は、その裏返しです。相手に圧倒されたり劣勢が続いたりして、負けを覚悟したような相撲で、思いがけず勝つことをいいます。
たとえば、攻め込んでいた相手が勇み足で自分から土俵の外へ出てしまう場合です。
「星があがる」は勝ち越しとは限らない
「星があがる」とは、本場所中に白星の数が黒星を上回っている状態を指します。
ただし『相撲大事典』によれば、これは必ずしも勝ち越しを意味しません。七日目を終えて5勝2敗、といった途中経過にも使われます。
幕内なら15日間で8勝すれば勝ち越しですが、星があがるは勝ち越しが決まったかどうかにかかわらず、白星が黒星を上回っている状態を表す言葉です。
元力士にとっての星勘定
場所が始まると、星勘定は頭から離れません。今日勝てば何勝何敗、負ければ何勝何敗になるかと、寝る前にも数えていました。
こたえるのは、勝てると思っていた相手に星を落としたときです。自分の相撲が取れないまま負けた一番は、その日のうちには気持ちの整理がつきませんでした。
負けが込むほど、星勘定は重くなっていきました。あと何番勝てば勝ち越せるかと数えるほどに、目の前の一番から気持ちが離れていきました。
僕の場合も、悪いイメージばかりが浮かんで、勝つ相撲の形を思い描けなくなっていたと思います。
なお、星を拾う場面としてよく挙がる「勇み足」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
連敗・勝ち越しにまつわる「星」の言葉
連敗が続いたときの状態にも、「星」や「目」を使った独特の言い方があります。
- 初日が出る・初日を出す|初日から連敗していた力士が、最初の白星をあげること
- 片目が開く|初白星をあげること(「初日が出る」と同じ意味。「目が開く」ともいう)
- 両目が開く|黒星の多い力士が2勝目をあげること
- 星を残す|勝ち越すこと
「初日が出る」は場所の初日のことではない
「初日が出る」とは、場所の初日そのものを指す言葉ではありません。初日から連敗していた力士が、最初の白星をあげることをいいます。
負けが続いている間は「初日が出ない」といいます。中継でも「まだ初日が出ていません」という言い方を耳にします。
片目が開く・両目が開く
最初の白星で片目が開き、2つ目の白星で両目が開く。そんな数え方をします。
冒頭で触れた僕の場所でいえば、初日から3連敗したときは、まさに初日が出ない状態でした。
もうひとつの場所は初日に勝っていたので、片目は開いていたことになります。ただ、そこから6連敗したため、その場所では最後まで両目が開きませんでした。
言葉にすると軽く聞こえますが、片目のまま日にちだけが過ぎていく感覚は、なかなかこたえるものでした。
さらに次の場所でも、最初の一番を落としました。場所が変われば星取表は白紙に戻りますが、負けている感覚は持ち越されます。場所をまたいで7連敗です。
次の一番でようやく白星をあげて、初日が出ました。強くなったわけでも、何かをつかんだわけでもありません。それでも、ただ勝てたというだけで、体から力が抜けていくのが分かりました。
「星を残す」とは?勝ち越すこと
「星を残す」とは、勝ち越すことをいいます。星を残せるかどうかは、そのまま次の番付に響きます。
勝ち越せば番付は上がり、負け越せば下がるのが基本です。関取が7勝7敗で千秋楽を迎えたときの一番に、独特の緊張感があるのはそのためです。
僕も初日が出ないまま日が過ぎたこと、あるよ。
支度部屋に入るのが、だんだん重たくなるんだよね。
でも一つ白星がつくと、次の相撲の景色が本当に変わるんだ。あの感じは、勝った本人にしか分からないと思う。
ちなみに、勝ち越し・負け越しがどう番付につながるのかは、こちらの記事で図解しています。
優勝争い・対戦成績の「星」の言葉
終盤の優勝争いや、力士同士の相性を語るときにも「星」が出てきます。
- 星のつぶし合い|好成績の力士同士が直接対戦する取組、またはその結果
- 星を分ける|両力士の実力が接近し、それまでの対戦成績が五分五分かそれに近いこと
星のつぶし合い
好成績を続けている力士同士が当たれば、どちらかに黒星がつきます。この直接対決を、星のつぶし合いといいます。
特に、複数の力士が優勝を争って拮抗しているときに使われる言い回しです。
終盤に「明日は星のつぶし合いです」と聞こえてきたら、優勝争いが大きく動く一番だと考えてよいでしょう。
星を分ける
「星を分ける」とは、両力士の実力が接近していて、それまでの対戦成績が五分五分かそれに近いことをいいます。
その場所の成績とは関係なく使われます。「この2人は星を分けている」といえば、通算の対戦成績が互角であることを表します。
星のつぶし合いって、名前は物騒だけど聞くとワクワクしちゃいます!
終盤に解説の方がこの言葉を使ったら、優勝争いが大きく動く日なんですね。
今度の場所は、そこを狙って見てみます♪
金星・差し違えなど意外な「星」の使い方
「星」のつく言葉は、力士の勝ち負けだけを指すわけではありません。
行司について「星を取る」といえば差し違え
「星を取る」には、力士が勝ち星を得るという一般的な意味のほか、行司が差し違えることを指す特殊な用法もあります。『相撲大事典』では、後者が相撲用語として紹介されています。
差し違えとは、行司が軍配を上げた力士が、物言いや協議の結果、負けと判定されることです。
勝負を裁く側にも「星」を使った言い方があるというのは、意外に思われるのではないでしょうか。
金星とは?平幕が横綱を倒すこと
金星は、本場所の土俵上で平幕の力士が横綱を破ったときの勝ち星を指します。星取表の上では同じ1勝ですが、金星は別格の扱いになります。
大関に勝っても金星にはなりません。また、不戦勝や反則勝ち、優勝決定戦での勝利も金星には数えられません。
「星」が女性を指すこともある
古い角界の隠語では、「星」が女性や恋人を指す用例もありました。同じ一文字でも、土俵の上とはまったく別の意味で使われていたことになります。
参考:『相撲大事典』第四版、金指基 原著、日本相撲協会 監修、現代書館
また、金星の価値や歴代の記録については、こちらの記事で紹介しています。
白星・黒星に関するよくある質問
白星・黒星について、よく寄せられる疑問をまとめました。
Q1. 白星と黒星、どっちが勝ち?覚え方は?
A. 白星が勝ち、黒星が負けです。
覚え方は、相撲で負けることを「土がつく」という言い方に結びつけるのがおすすめです。負けると土がついて黒くなる、とイメージすれば、黒星が負けだと思い出せます。
あとは、残るほうが白星=勝ちと考えれば迷いません。
Q2. 相撲に引き分けはある?星取表ではどう書く?
A. 制度としては引分と痛み分けが残っていて、星取表では引分が×、痛み分けが△で表されます。
ただし、現代ではほとんど見られません。関取の引分は1974年、幕下以下では1986年が最後とされています。
痛み分けも、関取で1964年、幕下以下では1999年を最後に記録されていません。
Q3. 白星・黒星は相撲以外のスポーツでも使う?
A. 使います。もともとは相撲の星取表から生まれた言葉ですが、今では野球・サッカー・将棋などでも一般的です。
「白星スタート」「連敗を止める白星」といった見出しは、相撲以外の記事でもよく見かけます。
Q4. 金星と白星の違いは?
A. 金星は白星の一種です。本場所の土俵上で、平幕の力士が横綱を破ったときの白星を、特別に金星と呼びます。
星取表の上ではどちらも1勝ですが、金星は別格の扱いになります。なお、大関に勝った場合や、不戦勝・反則勝ち・優勝決定戦での勝利は金星になりません。
Q5. 不戦勝も白星に数えるの?
A. 数えます。星取表では白い四角(□)で表され、勝ち星として扱われます。
相手の休場などにより、実際には相撲を取らずに得る勝ちです。負けた側は不戦敗となり、黒い四角(■)が記されます。
まとめ
白星は勝ち、黒星は負け。星取表に記された白い丸と黒い丸が、そのまま言葉になったものです。
そして相撲界には、星を拾う、初日が出る、片目が開く、星のつぶし合いと、「星」のつく言い回しがいくつも残っています。
どれも、勝ち負けの数だけでは伝わらない土俵上の状況や、力士が置かれた立場を表す言葉です。
次に中継を見るときは、星取表の白と黒の並びに目を向けてみてください。連敗が止まった力士、片目のまま終盤を迎えた力士の姿が、そこに表れています。
うむ。星を拾う日もあれば、落とす日もある。
場所を終えて残るのは、白と黒の数だけだ。
だが、その一つ一つがどんな相撲だったかは、見ていた者の記憶に残る。
次の場所は、お前さんの目で確かめてほしい。
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