入門

行司になるにはどうすれば良い?条件や定員など入門のアドバイス満載

現役時代、僕が所属していた相撲部屋にも行司さんがいました。職種が違うこともあって接点は少なかったのですが、顔を合わせるといつも気にかけてくれて、優しく接してくれる先輩でした。今でも相撲中継でその先輩の姿を見るたびに、懐かしく思いながら応援しています。

ということで、こんにちは!元力士のしんざぶろうです。

「行司になりたいけど、自分にできるかな…?」そんなふうに考えてこの記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか?

行司は相撲の取り組みを裁く重要な役割を担っていますが、その道のりは決して簡単ではありません。でも、きちんとしたステップを踏めば、誰にでもチャンスがあります。

この記事では、行司になるための条件や手順、階級制度についてわかりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

それでは、「行司になるにはどうすればいいのか?」について詳しく解説していきます。
ぜひ最後までお付き合いくださいね。

管理人の後輩
元力士 まさる
管理人の後輩
元力士 まさる

僕が入門するときは、後援会に入っている知り合いのつてを借りたんだよね。当時は緊張したり苦労もあったけど、懐かしいなぁ。

この記事を読んでわかること
  • 行司になるための条件や入門の手順
  • 行司の定員や昇進に関するルール
  • 行司の養成期間や昇進の評価基準
  • 行司の仕事内容や役割
  • 行司の給料や階級ごとの違い

行司になるには

行司は大相撲の取り組みを進行させる重要な役割を担い、勝負の審判役だけでなく、土俵入りの先導や番付表の作成など、幅広い業務をこなします。

そんな行司になるためには、特定の条件とプロセスを経る必要があります。以下に、行司になるためのステップを詳しく説明します。

入門条件

行司になるためには、まず義務教育を修了し、満19歳までの男子であり、適格と認められることとされています。最低限、入門時にこの条件を満たしていなければなりません。

また、女性が行司になることは許可されていません。行司は女人禁制である土俵に上がるため、制限されています。これは長年の歴史と伝統を反映したものです。

行司の入門条件
  1. 義務教育を修了していること
  2. 満19歳までの男子であること
  3. 適格と認められること
    ⇒具体的な内容はわかりませんが、心身が健康であれば良いと思われます

入門の手順

行司は、力士と同じく相撲部屋に所属することになります。そのため、どの相撲部屋に入門するかを決め、師匠となる親方に行司になりたい旨を伝え、許可を得ることが必要です。

入門にあたり、特別な試験はありませんが、日本相撲協会に提出するための書類手続きが必要です。具体的には、履歴書、保護者の承諾書、住民票などが求められます。これらの手続きに関する詳細は、相撲部屋の師匠から指示を受けることが一般的です。

手続きを完了し、行司会や日本相撲協会からの承認が得られれば、正式に行司としての活動を開始できます。その後は、力士とともに相撲部屋で生活をしながら、日本相撲協会の一員としての役割を果たしつつ、行司としての職務も遂行していくことになります。

入門の流れ
  1. 所属したい相撲部屋に相談し、師匠の許可を得る
  2. 必要書類を協会に提出する

定員について

行司の定員は「45名以内」とされており、2024年10月現在、行司の人数は「43名」なので、少し余裕があります。また、行司の階級制度については、このあと詳しく解説しますが、十枚目以上の行司は「有資格者」と呼ばれ、この有資格者の定員も「22名」と決められています。

ただし、これらの定員は時代に応じて変更されることがあります。例えば、1960年には有資格者が20名に設定されており、1977年には行司の全体定員が40名だったことがあります。

また、特例として、定員に達している場合でも、近いうちに定年退職などで欠員が出ることが見込まれる際には、見習いとして採用されるケースもあるようです。

  • 行司の定員は「45名以内」
  • 2024年10月現在、行司は「43名」で空きがある
  • 十枚目以上の行司は「有資格者」と呼ばれ、定員は「22名」
  • 定員は変更されることがあり、1960年は有資格者が「20名」、1977年は行司の定員が「40名」だった。
  • 定員が満員でも、定年退職が見込まれる場合には見習いとして採用されることがある。

立行司の入門エピソード

ここでは、行司最高位である「立行司」の入門エピソードを2つご紹介いたします。

38代 木村庄之助の場合

彼は、少年時代から高砂部屋の元大関・前の山(8代高田川)に憧れていました。それが相撲界に興味を持つきっかけとなりましたが、最初から行司を志していたわけではありません。

身長が160cmで、力士になるための基準を満たしていなかったため、「裏方でもいいから弟子入りしたい」と、親方に自己PRの手紙を何度も書いていました。そして、ある手紙の最後に、ふと「行司になりたい」と書き加えたことが、行司としての道を歩む契機となったそうです。

42代 式守伊之助の場合

彼が相撲の世界に入るきっかけは、幼い頃から抱いていた相撲への強い興味と憧れでした。特に、当時の人気力士であった北の富士勝昭(13代井筒)の大ファンで、彼の影響が大きかったそうです。

1977年に高校へ進学した彼でしたが、どうしても「行司になりたい」という強い気持ちが抑えられず、思い切って北の富士に手紙を送りました。この手紙がきっかけとなり、彼はすぐに高校を辞めて、北の富士が師匠を務める井筒部屋に入門することになりました。

 

ちなみに、立行司の年収や役割などについて、詳しく解説した記事もあります。
興味があるかたは、こちらもチェックしてみてください。

行司軍配の画像
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しんざぶろうの入門の場合

僕が相撲部屋に入門した時の経験を少しお話しします。

中学3年生の頃、進路を決める時期に差し掛かり、どうしても相撲部屋に入りたいと思って、相撲部屋の電話番号を自分で調べて直接電話しました。最初に電話に出たのはお相撲さんでしたが、後ほど親方から折り返しの連絡をもらいました。

相撲の経験は一切なかったため、ただ憧れだけで飛び込んでしまった僕に対して、親方は「まずは体験してみてから決めた方がいい」と提案してくれました。そこで、夏休みを利用して1週間の体験入門をさせてもらったんです。

その体験で、自分がいかに甘く考えていたかを痛感しました。力士たちとの力の差に驚き、相撲の厳しさを知ることができたのは、今でも鮮明に覚えています。この経験から、力士として出世するのは難しいと感じ、一度は高校進学を選びました。

その後、紆余曲折を経て別の相撲部屋に入門することになりますが、そこには複雑な事情が絡んでいて、ここでは割愛させていただきます。

 

ちなみに、こちらの記事でも僕が相撲部屋に入門体験した時のことをまとめています。相撲部屋へのアポイントの取り方や、体験の流れなど、僕なりの視点で整理しているので、興味がある方はぜひご覧ください。

前相撲のイラスト
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階級について

行司にも力士と同じように階級制度があります。行司としてのキャリアは、最も下位の「序ノ口格」から始まり、経験を積みながら昇進していきます。行司の最高位は「立行司」と呼ばれ、この位に就くと「木村庄之助」や「式守伊之助」といった伝統ある名前を継承します。

昇進までの道のりは決して簡単ではなく、数々の取り組みや行事を通じて実務経験を積み、相撲の歴史や伝統に基づいた技術を磨いていく必要があります。

以下の表は各階級と装束の違いです。

階級 階級色(房の色) 着用具
立行司:木村庄之助 総紫 足袋、草履、短刀、印籠
立行司:式守伊之助 紫白
三役行司 足袋、草履、印籠
幕内行司 紅白 足袋
十枚目行司 青白
幕下行司 黒または青 なし(素足)
三段目
序二段
序の口

養成期間

相撲部屋に入門した後、行司としての養成期間が始まります。通常、最初の3年間がこの養成期間とされ、この間に相撲の歴史や勝敗の見極め方、行司独特の発声法、さらには相撲文字の書き方を学びます。

この期間は、行司としての基本を徹底的に習得するための重要な時間です。特に、勝敗の判定を正確に行うためには、鋭い観察力と判断力が求められます。

なお、相撲協会の規定によると、「行司の新規採用者には、3年間の見習い期間を設ける。ただし、行司の階級に応じて番付に入れることを妨げない」とされています。

つまり、見習い期間中でも実力が認められれば、序ノ口や序二段といった番付に昇進できるため、見習い期間中でも成長と評価が進むチャンスがあるということです。

昇進について

では、行司が昇進するためには具体的にどのような条件が必要なのでしょうか? 行司は年功序列で昇進すると考えられがちですが、実際には成績評価も重要な要素となります。

相撲協会の「行司番付編成」には、次のような規定が記されています。

行司番付編成:第13条

行司の階級順位の昇降は、年功序列に依ることなく、次の成績評価基準に基づき、理事会の詮衡(せんこう)により決定する。

  1. 土俵上の勝負判定の良否
  2. 土俵上の姿勢態度の良否
  3. 土俵上の掛け声、声量の良否
  4. 指導力の有無
  5. 日常の勤務、操行の状況
  6. その他行司実務の優劣

これらの評価項目をもとに、審判部長や巡業部長が考課表を作成します。行司の昇降は、年に一度、九月場所後の番付編成会議で決定され、その際に考課表を基に審議が行われます。

仕事内容

行司の主な役割は、取り組みの進行と勝敗の判断です。しかし、それだけではありません。土俵入りの際に力士を先導し、場内アナウンスを行い、番付表の作成や公式行事の進行など、業務は多岐にわたります。

また、行司は伝統的な衣装である「装束」を身にまとい、儀式や取り組みの格式を保つ役割も果たします。これらの業務を通じて、大相撲の興行をスムーズに進行させる責任を担っています。

今回は詳細を省きますが、以下が主な仕事内容です。

  1. 土俵上の取り組みを裁く
  2. 土俵入りの先導
  3. 場内放送
  4. 番付編成会議の書記
  5. 取組編成会議の書記
  6. 割り場の業務
  7. 番付を書く
  8. 顔触れを書く
  9. 巡業での部屋割りを書く
  10. 輸送係の仕事
  11. 土俵祭りを行う
  12. 所属部屋の事務的な仕事
  13. 三段目以下は、「有資格者」の付け人を行う
相撲観戦大好き
さくら
相撲観戦大好き
さくら
行司の仕事ってこんなにたくさんあるのね。私が想像していた以上に大変な仕事だわ。

行司の給料について

行司の給料は、階級に応じて大きく異なります。例えば、最も下位の序ノ口格では月給が1万4000円から2万円未満とされていますが、立行司になるとその金額は40万円から50万円未満にまで跳ね上がります。

また、行司は月給のほかに諸手当や衣装代が支給されるため、実際の収入は階級や業務の内容によって変動します。特に立行司は、相撲協会の中でも非常に高い地位にあり、その責任に見合った報酬を受け取ることができます。

階級 本棒(月) 手当(月) 装束補助費
(一場所につき)
立行司 400,000~500,000円未満 各人の能力・成績・勤務
状況ならびに物価・社会
状勢等を勘案し、理事長
が決定する。
50,000円
三役行司 360,000~400,000円未満 40,000円
幕内行司 200,000~360,000円未満 30,000円
十枚目行司 100,000~200,000円未満 25,000円
幕下行司 42,000~100,000円未満 20,000円
三段目行司 29,000~42,000円未満
序二段行司 20,000~29,000円未満
序の口行司 14,000~20,000円未満

 

なお、行司の給料についてさらに詳しく解説した記事もあります。興味のある方は、ぜひこちらもチェックしてみてください。

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まとめ

行司になる道は、決して簡単ではありませんが、不可能ではありません。相撲が好きで、その世界に深く関わりたいという強い思いがあれば、必ずチャンスが訪れるはずです。

年齢制限や相撲部屋への入門、そして長い養成期間など、最初のハードルは高いですが、行司としてキャリアを積み、昇進していくことは十分に可能です。

行司は、大相撲という日本の伝統文化を支える重要な役割を担っており、誇り高い職業です。この記事を読んで「自分にも挑戦できるかもしれない」と感じたら、ぜひ次のステップに進んでみてください。

行司としての道は、相撲界を支える「縁の下の力持ち」として、充実したキャリアを築ける素晴らしい職業です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう!