あまり大きな声では言えませんが、僕が序ノ口を抜けるのにかかったのは「約1年」。もちろん、今とは少し時代が違っていて、当時の序ノ口は東西あわせて約140人、なんと70枚目まで番付がありました。と、まあ言い訳めいてしまいますが、大の里関の出世スピードと比べたら雲泥の差ですよね…。
こんにちは!元力士のしんざぶろうです。
いま、相撲界で注目の的といえば、なんといっても大の里関(以下敬称略)。2025年春場所では大関として堂々の12勝を挙げ、ついに幕内優勝3回目を達成しました。
そんな大の里ですが、ここまでの道のりはまさに「異例」づくし。わずか2場所で関取に昇進し、入門から1年あまりで三役、さらには大関にまで駆け上がるというスピード出世を遂げています。
この記事では、アマチュア時代の実績からプロ入り、そして十両昇進までの軌跡を中心に、大の里の成長の足跡をたどってみたいと思います。
ぜひ最後までお付き合いくださいね。
大の里は初土俵からたった9場所で大関って、ほんと物凄いスピードだよね。僕の9場所目なんて、まだ三段目にも手が届いていなかったよ…
- 大の里のスピード出世がどれほど異例なのか
- 四股名に込められた意味と入門当時の様子
- アマチュア時代の主な実績と評価
- 幕下10枚目格付け出しでのデビューと初場所の成績
- 十両昇進を決めた2場所目の取り組みと成績
- 関取になってからの活躍
異例のスピード出世

2025年3月場所、大関として土俵に上がった大の里は、12勝3敗で3度目の幕内優勝を達成。いまや横綱昇進が現実味を帯びる力士として、相撲ファンの注目を一身に集めています。
そんな大の里の歩みは、まさに「異例のスピード出世」から始まりました。わずか2場所で関取の座を射止めるという、近年まれに見る昇進スピード。では、その背景にはどのような経歴や実績があったのでしょうか?
注目の若手がいかにして「未来の横綱候補」と呼ばれる存在へと駆け上がったのか、その成長の過程をぜひご覧ください。
大の里が十両になるまでの経歴と成績
ここでは、アマチュア時代の実績や四股名に込められた思い、そしてプロ入りから十両昇進までの軌跡をたどっていきます。
2023年春、正式な入門を発表した大の里関は、師匠・二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)とともに、母校である新潟県立海洋高等学校で記者会見に臨みました。
以下の動画では、その入門会見の様子をご覧いただけます。
この場で発表された四股名「大の里」は、青森県出身で大正から昭和にかけて活躍した元大関「大の里」にちなんだもの。実はこの名は、稀勢の里が現役時代に自らの四股名の候補に考えていたこともある特別な名前だそうです。
会見の中で大の里は、「この四股名に恥じないように、しっかりと頑張っていきたい」と力強く抱負を語りました。
幕下付け出しとしてデビューが決定
少年時代から相撲に打ち込み、中学・高校・大学と競技を続けた大の里は、全国大会や国際大会でも数々の好成績を残してきました。とくに大学時代(日本体育大学)では、学生横綱やアマチュア横綱などのタイトルを獲得し、その名は全国に知られる存在となります。
- 19歳(2019年)
〇第74回国民体育大会 相撲競技 青年の部 個人戦 優勝
〇第97回全国学生相撲選手権大会 個人戦 優勝(学生横綱) - 21歳(2021年)
〇第70回全日本相撲選手権 優勝(アマチュア横綱) - 22歳(2022年)
〇第11回ワールドゲームズ 無差別級 金メダル・重量級 銀メダル
〇第77回国民体育大会 相撲競技 成年の部 個人戦 優勝(2連覇達成)
*2020年、2021年は新型コロナの影響により中止
〇第71回全日本相撲選手権 優勝(アマ横綱2連覇)*幕下格付け出し資格を取得
こうした実績が認められ、2023年春には二所ノ関部屋へ正式入門。同時に、日本相撲協会の特例制度「幕下10枚目格付け出し」が適用され、同年5月の夏場所ではいきなり幕下10枚目からデビューを果たしました。
大学時代には、こんなにたくさんのタイトルを取ってたんだ…!これはもう、プロでも期待されるのも納得だね!
こちらの動画では、2023年5月場所を前に行われた新弟子検査での大の里の様子をご覧いただけます。初土俵を控えた初々しい表情や緊張感のある佇まいにも、ぜひご注目ください。
なお、大の里の身長や体重、大学時代の実績、家族構成など、さらに詳しいプロフィールについては、こちらの記事でご紹介しています。

また、新弟子検査の内容や条件については、以下の記事を参考にしてください。

幕下付け出しとして迎えた初めての場所
2023年5月の夏場所、大の里は幕下10枚目格付け出しという特例制度で初土俵を踏みました。いきなり幕下上位での対戦という厳しい条件のなか、堂々たる6勝1敗の好成績を収めます。
以下は、大の里が2023年5月夏場所で対戦した相手と、その結果をまとめた星取表です。
取組日 |
対戦相手 |
勝敗(決まりて) |
---|---|---|
1日目 |
東幕下11枚目:石崎 |
●突き落とし |
3日目 |
西幕下10枚目:塚原 |
○押し出し |
6日目 |
東幕下12枚目:吉井 |
○寄り切り |
8日目 |
西幕下9枚目:魁勝 |
○寄り切り |
10日目 |
東幕下9枚目:生田目 |
○押し出し |
11日目 |
東幕下1枚目:紫電 |
○突き出し |
15日目 |
東幕下18枚目:大辻 |
○押し出し |
6勝1敗(勝ち越し)
|
唯一の黒星は、初日に対戦した石崎(2025年5月現在:西前頭17枚目の朝紅龍)との一番。石崎は日体大の先輩で、稽古で顔を合わせたことはあっても、公式戦ではこのときが初対戦でした。
以下は当時の報道からの引用です。
対戦した大の里は日体大時代に2年連続アマチュア横綱に輝いた大器で、大学の後輩。稽古場でともに稽古したことはあっても、対戦経験はなかった。「(兄弟子で再入幕の)朝乃山関といつも稽古しているんで、怖さはなかった」と一回り大きい相手にも動じなかった。相手の記念すべきデビュー戦で土を付けた。
ちなみに、大の里がデビューした「幕下」についての解説記事も公開中です。階級の特徴や待遇の違い、付け出しに関する情報を取り上げていますので、参考にしてみてください。

十両昇進を決めた2場所目
続く2023年7月の名古屋場所では、前場所での好成績を受け、東幕下3枚目まで番付を上げました。いよいよ十両昇進が現実味を帯びる、大きな勝負所を迎えます。
ここで勝ち越せば関取昇進が濃厚とされる、まさにキャリアの分岐点ともいえる場所です。
以下は、その名古屋場所での大の里の星取表です。
取組日 |
対戦相手 |
勝敗(決まりて) |
---|---|---|
2日目 |
西幕下3枚目:向中野 |
○寄り切り |
3日目 |
東幕下6枚目:風賢央 |
○上手投げ |
5日目 |
東幕下1枚目:時疾風 |
●送り出し |
7日目 |
東十両13枚目:輝鵬 |
●叩き込み |
9日目 |
東幕下4枚目:荒篤山 |
○寄り切り |
11日目 |
東幕下5枚目:石崎 |
●下手投げ |
14日目 |
西十両12枚目:英乃海 |
○寄り切り |
4勝3敗(勝ち越し)
|
そして、この場所でも再び石崎と対戦し、2場所続けて黒星を喫することに。しかしその後はしっかりと立て直し、最終的には4勝3敗で勝ち越しを決めました。大の里はこの場所を振り返り、取材に対して次のように語っています。
取組後の大の里は、3敗目を喫した幕下石崎戦を振り返り「情けない相撲だったので、何としても4番勝つつもりだった。ホッとした」と、胸をなで下ろした。11日目に3勝3敗となり「まさか3勝3敗になると思わず、気持ち悪かった。ご飯も食べられなかった。
わずか2場所で十両昇進へ
そして、名古屋場所終了後の2023年7月26日、番付編成会議にて、9月の秋場所での新十両昇進が正式に発表されました。大の里は、初土俵からわずか2場所で関取の座を射止めるという、近年でも異例のスピード昇進を果たします。
歴代1位のスピード出世【伯桜鵬(はくおうほう)】
2023年1月場所で初土俵を踏んだ伯桜鵬(当時:落合)は、幕下15枚目格付け出しから7戦全勝で優勝を果たし、わずか一場所での十両昇進を実現しました。この昇進スピードは史上最速とされており、大の里の2場所昇進も、それに次ぐ記録的なスピード出世といえるでしょう。
その後、順調に番付を上げて入幕を果たしますが、左肩の負傷により一時は幕下まで番付を落としました。それでも復帰後は着実に勝ち星を重ね、2025年夏場所では東前頭7枚目という自身の最高位にまで返り咲いています。
また、同じくこの秋場所では、日体大時代の1学年上の先輩であり、同じ二所ノ関部屋に所属する「白熊(しろくま)」こと高橋も新十両昇進を決めました。中学から大学まで同じ道を歩み、苦楽をともにしてきた二人が、揃って関取の仲間入りを果たす形となり、相撲ファンの間でも話題を呼びました。
十両昇進後、力士としての象徴ともいえる「白まわし」を締めた大の里は、次のように語っています。
東十両14枚目に昇進した大の里は真新しい「白まわし」の感覚を体になじませた。申し合いは行わなかったが、同じく新十両の高橋相手に立ち合いや、まわしの切り方などを確認。ぶつかり稽古で胸を出すなど汗を流し午後の力士会に参加した。関取の象徴を締めた感触を問われ「ようやくだなという実感が沸いた。本当にやっと関取になれたんだなと思うし、これからだなと思います」と表情を引き締めた。
白熊関と同時に十両昇進って、なんか胸アツだよね。中学からずっと一緒って、漫画みたいな話だな~!
十両になった後の活躍
2023年9月場所で新十両として土俵に上がった大の里は、初日から9連勝を記録し、その勢いのまま12勝3敗の成績を残しました。東十両14枚目でのこの成績は、申し分ない滑り出しとなり、華々しい関取デビューを印象づけました。
続く11月場所では東十両5枚目に昇進し、ここでも再び12勝3敗。2場所連続で二桁勝利を挙げ、2024年1月場所での幕内昇進を確実なものとします。
- 2023年9月場所:新十両(東十両14枚目)で12勝3敗
- 2023年11月場所:東十両5枚目で12勝3敗、幕内昇進が決定
幕内昇進と上位定着
2024年1月場所で新入幕を果たした大の里は、西前頭15枚目で11勝4敗の好成績を挙げ、初の三賞となる敢闘賞を受賞しました。幕内でも力を発揮し、上位進出へ向けて順調なスタートを切ります。
続く3月場所では、西前頭5枚目で再び11勝4敗。優勝次点となる好成績を残し、技能賞と敢闘賞の二つを受賞しました。多彩な技の引き出しが光り、上位でも十分に通用する力を示します。
そして、入幕からわずか2場所で小結への昇進が決定。順調な出世ぶりが際立ち、三役として次なる土俵へと進むことになりました。
- 2024年1月場所:新入幕(西前頭15枚目)で11勝4敗、敢闘賞
- 2024年3月場所:東前頭5枚目で11勝4敗、技能賞・敢闘賞
ちなみに、「三役って何?」「小結ってどれくらいすごいの?」と思った方は、こちらの記事もチェックしてみてください。三役の地位や給料について、できるだけわかりやすく解説しています。

三役としての活躍
小結
2024年5月場所、大の里は西小結として出場し、12勝3敗の成績で幕内初優勝を果たしました。
新小結での優勝は1957年の安念山以来67年ぶりで史上2人目。さらに、初土俵からわずか7場所での優勝は、史上最速の記録です。
関脇
続く2024年7月場所では西関脇に昇進し、9勝6敗で勝ち越し。三役でも安定した内容を残しています。
9月場所でも関脇として13勝2敗を挙げ、2度目の幕内優勝を達成。この結果、初土俵から所要9場所での大関昇進が決まり、昭和以降では最も早い記録となりました。
「ちょんまげ大関」誕生の裏側
大の里の異例ともいえるスピード出世は、成績だけでなく「見た目」でも話題を呼びました。2024年9月、大関昇進を果たした際に注目されたのが、その髷(まげ)です。
本来、十両以上の関取には「大銀杏(おおいちょう)」という、イチョウの葉のように広がる立派な髷が結われます。ところが、大の里は出世のあまりの早さに髪が追いつかず、まさかの「ちょんまげ」姿のまま大関に。これが「ちょんまげ大関」として大きな話題になったのです。
この現象が史上初であることに加え、大の里関がたった9場所で大関に昇進したという記録も相まって、全国的なニュースになりました。
以下の動画は、大の里が大関に昇進した際の伝達式の様子です。ちょんまげ姿で臨んだ歴史的瞬間を、ぜひご覧ください。
大関
2024年11月場所では新大関として臨み、9勝6敗で勝ち越し。二桁勝利には一歩及びませんでしたが、初めての大関としての場所で、その責任は十分に果たしたと言えるでしょう。
そして2025年3月場所では、大関として12勝3敗を挙げ、3度目の幕内優勝を達成。続く5月場所では、いよいよ横綱昇進をかけた大一番に臨みます。
- 2024年5月場所:新小結で12勝3敗、初優勝(新小結優勝は史上2人目)
- 2024年7月場所:新関脇で9勝6敗
- 2024年9月場所:西関脇で13勝2敗、2度目の優勝→大関昇進決定
- 2024年11月場所:新大関で9勝6敗
- 2025年3月場所:大関で12勝3敗、3度目の幕内優勝
三役すべてで優勝って、ほんとにすごいよね。新小結での優勝も史上2人目だなんて、大の里関ってやっぱりただ者じゃないわ…!
ちなみに、大の里が目指す横綱昇進には、優勝回数だけでなく「品格」や「安定した成績」も重要とされています。昇進の条件や過去の事例については、こちらの記事で解説しています。

また、幕内の優勝賞金は「1000万円」ですが、それ以外にも三賞や懸賞金など、力士が得られる収入はさまざまです。力士の給料や賞金額について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

まとめ
大の里の出世スピードは、近年の相撲界でも群を抜いています。
アマチュア時代の実績を土台に、初土俵からわずか2場所で十両昇進を果たし、そこから幕内・三役、そして大関へと一気に駆け上がりました。
2025年春場所では3度目の優勝を達成し、横綱昇進も視野に入る位置まで到達しています。「唯一無二の力士を目指す」という宣言どおり、その歩みはまさに規格外。これからも大の里の活躍に注目していきたいですね。
今回も、最後まで読んでいただきありがとうございました。
また、次回の記事でお会いしましょう。
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