相撲雑学

大相撲の床山は給料が安いって本当?階級別のもらえるお金を大特集!

現役時代、毎月決まった給料をもらえる床山さんを見て「いいなぁ」と思うこともありましたが、今ではお互いが相撲を支える重要な役割を担っていることを実感しています。どちらが優れているとかはなく、どちらも相撲界では欠かせない存在ですよね。
元力士のしんざぶろうです。こんにちは!

テレビ中継で、優勝した横綱が支度部屋でインタビューを受けながら、大銀杏(おおいちょう)を直しているシーンを見たことがある方も多いでしょう。力士が土俵に上がる際には、必ず大銀杏(髷)(まげ)を整えてもらわなければなりません。そして、その髪結いを専門に行うのが「床山」です。

大銀杏を結うには相当な技術が必要で、床山は見習いから始まり、熟練の技術を身につけるまでには多くの経験が求められます。

そんな床山ですが、相撲ファンでもあまり詳しく知らない方が多いかもしれませんね。給料はどれくらい?階級はあるの?と疑問を持つ方もいるでしょう。

この記事では、床山の給料や待遇、さらには昇進について詳しく解説していきますので、最後までお付き合いくださいね!

この記事を読んでわかること
  • 床山の給料とその内訳について
  • 床山の階級と昇格条件の詳細
  • 床山になるための採用資格や定員
  • 床山の具体的な仕事内容と役割
管理人の後輩
元力士 まさる
管理人の後輩
元力士 まさる
やっぱり、手に職を持つっていいよね♪
国技を支える仕事だから安定してるし!

床山の給料は安いの?実際のところをご紹介

まず、「床山の給料が安い」と言われる背景には、どんな理由があるのでしょうか?ここでは、その理由として考えられる点を3つ挙げてみました。

1.基本給だけで判断されている

詳しくは後述しますが、「基本給だけ」を見ると、中堅クラスの三等床山で「70,000~140,000円未満」、最上位の特等床山でも「360,000~400,000円未満」となっています。これだけ見ると、長年勤め上げて特等床山になっても・・・と思うかもしれませんね。力士の給料と比べると魅力に欠けると感じるのも無理はありません。

しかし、床山の月給は「基本給」だけではありません。毎月「手当」が別に支給されており、見習いの初任給でも「126,000円」が手当として加算されています。これを考慮に入れると、決して安いわけではないことがわかります。この点が、給料が安いと言われる大きな理由のひとつです。

2.見習い期間が長い

床山には見習い期間が設けられており、通常この期間は3年です。この間を、先ほどの「基本給のみ」と考えてしまうと、下積みも長く、さらに給料も少ないというイメージがついてしまいがちです。

また、見習い期間だけでなく、各階級に昇格するためには一定の勤続年数が必要とされています。例えば、三等床山になるには「勤続十年以上の成績優秀な者、または勤続五年以上十年未満で特に成績優秀な者」といった条件があります。

このように、昇格にも時間がかかることが、給料が低いという印象につながっているのでしょう。この階級についても、このあと詳しく解説しますね。

3.裏方の仕事であること

床山は、力士のように表舞台に立つわけではなく、裏方の仕事として支えています。そのため、その労働に対する評価が見えにくく、「給料が安い」というイメージがつきやすいのも事実です。

力士を支える重要な役割を担っているにもかかわらず、その働きが表に出にくいことが、給料のイメージに影響しているのかもしれません。

以上の理由から、「床山の給料は安い」という印象が広まっていると考えられますが、実際は手当なども含めると、思ったほど低くはないということがわかるでしょう。

床山の階級別の給料の実情

ここからは、床山の階級別の詳しい給料についてお話しします。床山の給料は、「本棒」(基本給)と「手当」で構成されおり、合わせた金額が毎月支給されます。

「本棒」は各階級によって異なり、手当については「能力や成績、勤務状況、さらに物価や社会の状況を考慮して、理事長が決定する」とされています。各階級ごと以下の表にまとめましたのでご覧ください。

階級 本棒(月給) 手当(月)
特等 360,000~400,000円未満 各人の能力・成績・勤務
状況ならびに物価・社会
状勢等を勘案し、理事長
が決定する。
一等 250,000~360,000円未満
二等 140,000~250,000円未満
三等 70,000~140,000円未満
四等 29,000~70,000円未満
五等 20,000~29,000円未満
見習い期間(三年) 14,000~20,000円未満

相撲観戦大好き
さくら
相撲観戦大好き
さくら

基本給はわかったけど、手当はいくらもらってるの?
理事長が決定するって、すごく曖昧ね。

手当ってどれくらい?

手当の支給額について、詳しい情報は公開されていません。
しかし、初任給については公表されているので、参考までにこちらをご紹介します。

「床山」の初任給
  • 本棒(月):14,000円
  • 手当(月):126,000円
  • 合計(月):140,000円
管理人の後輩
元力士 まさる
管理人の後輩
元力士 まさる
初任給ってことは見習い期間だよね。
見習いで月給14万円だったら安いとも言えないね。

給料を年収にするとどうなる?

基本給や手当の仕組みが少し複雑で、イメージがしにくいかもしれませんね。 そこで、各階級ごとのおおよその年収を表にまとめてみました。しかし、手当については不透明な部分が多いので、初任給で公表されている「126,000円」を一律で加算しています。

階級 年収
特等 5,832,000円~6,312,000円未満
一等 4,512,000円~5,832,000円未満
二等 3,192,000円~4,512,000円未満
三等 2,352,000円~3,192,000円未満
四等 1,854,000円~2,352,000円未満
五等 1,752,000円~1,854,000円未満
見習い期間(三年) 1,680,000円~1,752,000円未満

ただ、もちろん見習いと最上位の床山が同じ手当を受け取っているはずがないので、上位の床山は、この表の金額よりも高い給料をもらっている可能性が高いと考えられます。

 退職金制度はあるのか?

結論から言いますと、床山の退職金制度については明確な規定はありません。
しかし、長年功績を積んだ床山には、引退時に特別な謝礼や金銭的な支援が行われることがあるようです。

ただ、個々のケースに依存するため、すべての床山が同じ待遇を受けるわけではありませんが、相撲界からの感謝の気持ちが形となった表れだと考えられます。

床山だけでなく、力士の給料についても気になる方は、こちらの記事でくわしく解説しています。ぜひご覧になってください。

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床山の階級について

床山の階級の種類については、前項でも述べましたが、ここではどのようにして昇格するのか、その条件を紹介したいと思います。床山の階級は6等級に分かれており(見習い期間を除く)それぞれの等級は基本的に勤続年数によって決まる、年功序列となっています。

その条件を以下の表にまとめました。

階級 資格
特等 勤続四十五年以上・年令六十才以上のもので特に成績優秀なもの、または勤続30年以上45年未満で特に成績優秀なもの。
一等 勤続三十年以上のもので成績優秀なもの、または勤続二十年以上三十年未満のもので特に成績優秀なもの。
二等 勤続二十年以上のもので成績優秀なもの、または勤続十年以上二十年未満のもので特に成績優秀なもの。
三等 勤続十年以上のもので成績優秀なもの、または勤続五年以上十年未満のもので特に成績優秀なもの。
四等 勤続五年以上のもので成績優秀なもの。
五等 勤続五年未満のもの。
見習い期間(三年) 床山の新規採用は、義務教育を修了した満十九才までの男子で、適格と認められる者から行う。

表をみて思うのが、昇格の条件にある「成績が優秀な者」とは、どうやって決めているの?と疑問が出てきますよね。では、次はその説明をしていきますね。

成績が優秀な者とは?

日本相撲協会の令和5年度「事業報告書」によると、床山の養成についての項目に、「床山の等級は、原則として毎年九月場所後の理事会にて、計翌年度の等級を決めている。」とあります。

床山の番付編成(階級の昇格等)は原則年1回で、9月場所後に開催される番付編成会議の理事会において決定し、翌年1月より適用される。

この番付編成会議にて、上述した手当と同様、日頃の「能力や成績、勤務状況」などから、判断されるものと思われます。

序列が逆転した事例

上述のように「成績が優秀なもの」とありましたが、床山は力士のように実力で番付を上げるというよりも、基本的には年功序列で昇格していきます。ただし、非常に稀ではありますが、例外も存在します。次に、その例外的なケースをご紹介します。
*実力で逆転現象が起きたかは定かではありません。

床和(とこかず)

2016年1月場所では、当時番付上位だった床淀を床和が追い抜き、特等床山に昇進しました。その後、床和は同年7月場所で停年退職するまで特等床山を務めました。
特等床山の期間:2016年1月場所~2016年7月場所(定年退職)

床淀(とこよど)

床淀が特等床山に昇進したのは、上記の床和が退職した3年後の、2019年1月場所です。
特等床山の期間:2019年1月場所~2021年3月場所(定年退職)

停年(定年)はあるの?何歳まで?

相撲協会の規定(日本相撲協会寄附行為)には、「年寄・行司・若者頭・世話人・呼出・床山の停年については、理事会の議決を経て、別に之を定める。」とあります。

これだけを読むと明確に決まっていないように思えますが、「床山の定年は65歳」です。現役の特等床山である「床鶴」(とこつる)のインタビューで、定年が65歳と明記されていました。

床鶴は2024年現在で64歳であり、来年には定年を迎えることになります。
*生年月日:昭和35年7月22日生

そもそも床山になるには?

力士の髪結いを専門とする「床山」には、特別な免許は必要ありません。しかし、定員や採用する年齢などには制限があるので、以下で解説していきます。

採用資格

義務教育を修了した満19歳までの男子で、停年(定年)は満65歳。
経験は不問で、特別な免許は必要ありません。

定員

全体で50名以内と定められていますが、各階級ごとの定員はありません。

しかし、1997年以降、力士が12名以上所属している相撲部屋で床山がいない場合には、申請があれば定員を超えても床山を採用することができるようになっています。これは申し合わせによるもので、規約にはありません。

所属

日本相撲協会に採用される床山は、力士や行司、呼出と同様に各相撲部屋へ所属します。見習いや若手の床山は、相撲部屋で寝起きし、髷を結うだけでなく、力士たちと一緒にちゃんこ番や掃除など、部屋のさまざまな雑務もこなします。

その間に、兄弟子から髪結いの技術指導を受け、スキルアップに励みます。また、自分の所属部屋の力士だけでなく、床山がいない部屋や、力士が多い部屋を掛け持ちすることもあります。

通常は一門内の相撲部屋間でやり取りしますが、要請があれば、他の一門の相撲部屋に出向くこともあります。さらに、部屋が隣接している場合、一門の枠を超えて協力し合うこともあるようです。

床山の仕事

床山は力士の髪を結う際に、専用の道具を使います。力士の髪には独特の「相撲の匂い」がする「すき油」を使用します。このすき油は、通称「鬢付け油」(びんづけあぶら)と呼ばれ、力士の髪を整えるために欠かせないものです。

髪結いには、関取が公式な場面で結う「大銀杏(おおいちょう)」と、幕下以下の力士や関取が普段の生活で結う「丁髷(ちょんまげ)」があります。なお、大銀杏は十両以上の関取が本場所の取組の際に結うことが義務付けられている髪型です。

床山は、大銀杏を結えるようになって初めて一人前とされ、その技術を習得するまでには5年以上かかると言われています。そして、ベテランの床山でも、大銀杏を結うには15分から20分程度の時間を要します。

また、力士たちの髷が髪の毛にどのような影響を与えているのか、僕の経験を踏まえた話しを以下の記事でくわしく解説しています。気になる方はチェックしてみてください。

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相撲観戦大好き
さくら
相撲観戦大好き
さくら
大銀杏を結うのも、相当な鍛錬が必要なのね。
今度からは、大銀杏にも注目してみるわ。

まとめ

今回は、床山の給料や仕事内容、そして昇格や定年について詳しく解説しました。床山は力士の髪を整える専門職として、相撲界で欠かせない存在です。特に、大銀杏を結う技術は長年の経験を必要とし、5年以上の修行を経て初めて一人前とされます。

そして、床山は力士たちと同じように、相撲部屋に所属し、力士と共に日々の雑務をこなしながら技術を磨いているんです。今後の相撲観戦の際には、力士だけでなく、その美しく整えられた大銀杏・髷にも注目してみてください。

今回も、最後までお読みいただきありがとうございました。
また、次回の記事でお会いしましょう。