相撲界に入ればお金持ちになれると信じていた、元力士のしんざぶろうです。
こんにちは!
相撲ファンなら誰しも、力士たちがどれだけの収入を得ているのか、一度は気になったことがあるのではないでしょうか。特に、幕下以下の力士たちの生活は、華やかな部分だけではなく、その厳しい現実にも注目が集まりますよね。
そんな力士たちの収入について、今回はスポットを当てていこうと思います。
実際、僕は幕下以下の力士養成員という立場しか知らなかったので、今回いろいろと調べていくと、関取はこんなにも収入があったんだ!と、改めて驚かされました。
もし当時、自分との収入差がこれほど大きいと知っていたら、もっと頑張れたかもしれません。あくまでも、そんな気がするだけですが・・・
それでは、知られざる力士たちの収入事情について、詳しく解説していきます。
ぜひ最後までお付き合いくださいね!
元力士 まさる
- 力士の収入の種類と番付による給与の違い
- 基本給与以外の収入源である賞金・手当の仕組み
- 勝ち星や優勝、三賞などで得られる収入の具体例
- 幕下以下の力士に適用される奨励金制度とその計算方法
- 力士の生活費や、付き人・餅つきなどの臨時収入
番付による給与の違い
それでは最初に、番付による給与の違いを表にまとめましたので、ご覧ください。
そもそも番付がわからないよって方は、こちらの記事を先に読むと理解が深まりますよ。
収入の種類 | 番付名 | 金額 |
---|---|---|
月給 | 横綱 | 300万円 |
大関 | 250万円 | |
関脇 | 180万円 | |
小結 | 170万円 | |
前頭 | 140万円 | |
十両 | 110万円 | |
本場所ごとに支給 基本手当/年6回 |
幕下 | 16万5千円 |
三段目 | 11万円 | |
序二段 | 8万8千円 | |
序の口 | 7万7千円 |
さくら
給与以外に収入はないの?力士の賞金や手当について
もちろん、先ほどの給与や基本手当以外にも、さまざまな賞金や手当が存在します。
力士たちが頑張って強さを求める仕組みがそこにはあるんですよね。
それでは、一つずつ見ていきましょう。
各階級の優勝賞金
階級優勝 | 金額 |
---|---|
幕内 | 1000万円 |
十両 | 200万円 |
幕下 | 50万円 |
三段目 | 30万円 |
序二段 | 20万円 |
序の口 | 10万円 |
三賞
大相撲での「三賞」とは、「殊勲賞」「敢闘賞」「技能賞」の3つを指します。これらの賞は、毎場所終了後に、横綱と大関を除いた幕内力士の中から特に優れた活躍を見せた力士に授与されます。また、一人の力士が一度にすべてを受賞することもあります。
項目 | 金額 | 条件 |
---|---|---|
殊勲賞 | 200万円 | 横綱や大関などの上位力士を倒すなど、特に優れた勝利を挙げた 力士に贈られる賞です。 |
敢闘賞 | 最後まで諦めずに戦った姿勢が評価された力士に贈られる賞で、 番付が低い力士が優れた成績を収めた場合などが対象になります。 |
|
技能賞 | 相撲技術の高さや、巧みな技を使った取り組みが評価された力士に 贈られる賞です。 |
懸賞金
懸賞金は、幕内の取り組み前に土俵を回る「懸賞旗」の数に応じて変動します。懸賞旗とは、行司が掲げて回る企業の広告を指し、以下のイラストのような形で宣伝されます。
注目度の高い取り組みほど観戦者が多いため、広告効果も高まり、それに伴って懸賞金も増える仕組みです。
そして、懸賞旗1本は通常6万2千円がかけられています。
例えば、上のイラストのように5本の懸賞旗が掲げられた場合、その取組にかけられた総額は6万2千円×5本=31万円となります。
しかし、その全額が勝った力士のものになるわけではありません。
懸賞金の内訳は、以下の3つに分けられます。
- 力士の手取り:30,000円
◇力士への直接的な報酬となります。 - 相撲協会の事務経費:5,300円
◇懸賞金に関する事務処理にかかる費用です。 - 納税充当金として天引き:26,700円
◇力士が得た賞金に対して支払われる税金に備え、積み立てられます。
報奨金
報奨金ってなに?と聞いたことがない方が多いと思いますが「金星」は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
報奨金と金星は密接な関係があって、この複雑なシステムの話を初めてしまうと、1記事くらいになってしまいそうなので、ここでは簡単な説明に留めておきます。
報奨金とは
報奨金は関取以上の力士にのみ支給される賞金のようなもので、これは給与とは別に、場所ごとに支給されます。
そして、力士それぞれの初土俵からの戦績に基づいた「持ち給金」という金額が積立られていくので、同じ番付でもこの持ち給金によって支給額が異なります。
例えば、さきほどの金星を獲得すると、この持ち給金が加算され、その結果として報奨金も増えます。具体的には、持ち給金に4,000を掛けた金額が、1場所ごとに報奨金として支給される仕組みです。
もう少し詳しく説明すると、金星を取ると「持ち給金」が10円プラスされます。
金星1つだけでも、10円×4,000=40,000円となり、以降引退するまで毎場所ごとに4万円が支給されます。
(毎場所といっても、関取を維持し続けることが条件です。)
ちなみに、歴代1位の持ち給金を持つ白鵬は、1場所で800万円以上の報奨金を受け取っていたとも言われています。
●追記:2024年9月19日
報奨金についてくわしく解説した記事を作成しました。理解が深まるので、ぜひこちらの記事もごらんください。
幕下以下奨励金
これはいわゆる「力士養成員」に対して、前述の基本手当とは別に支給される制度です。
これまた番付に応じて金額が異なるので、わかりやすいように表にしました。
番付名 | 収入の種類 | 金額 |
---|---|---|
幕下 | 勝ち星(1勝) | 2500円 |
勝越し星 | 6000円 | |
三段目 | 勝ち星(1勝) | 2000円 |
勝越し星 | 4500円 | |
序二段/序の口 | 勝ち星(1勝) | 1500円 |
勝越し星 | 3500円 |
- 勝ち星:1勝するごとに上乗せされます。
- 勝ち越し星:勝ち越し(4勝以上)が支給対象。
計算方法は、勝ち星-負けた数=勝越し星となる。
- 勝ち星:1,500円×7勝=10,500円
- 勝越し星:3,500円×7=24,500円
- 合計:10,500円+24,500円=35,000円
さくら
確かに、生活が厳しいのは事実です。
でも、これは勝負の世界なので仕方ない部分もあります。ただ、実は他にも収入を得られるチャンスがあるので、ここからはそれをご紹介しますね。
その他の収入について
ここで紹介する項目については、具体的な金額が公表されていなかったり、部屋のしきたりによるところが大きいので、あくまで参考程度にご覧ください。
付き人
親方や関取の身の回りの世話をする人を「付き人」と言います。
付き人の報酬は、直接世話をする人からお金をもらうことが一般的で、その金額は、その部屋(力士が所属する部屋)のこれまでのやり方を参考に決めることが多いようです。
そして、親方からも関取たちに説明があると思われますが、実際に渡す金額や頻度は、関取の性格や付き人の仕事ぶりによって大きく変わります。
僕の経験上、気前の良い関取の付き人になると、まとまったお金をいただけるケースもあり、経済的なメリットも大きいと言えるでしょう。
弓取式
本場所の結びの一番が終了した後、向正面の中央に控えていた弓取役の力士が、勝った力士に代わって土俵へ上がります。弓を振るなどの所作を通して、その日の勝利を祝う伝統的な儀式が「弓取式」です。
この弓取役の力士は、原則として「幕下以下の力士が行う」となっていますが、ほとんどの場合、幕下力士が執り行っています。
特例として、過去に幕内力士が行ったこともあるようです。
具体的な金額は公表されていませんが、報酬が支払われていることは間違いないでしょう。
餅つき
年末年始になると、企業や団体からの依頼により、相撲部屋の力士が餅つきに出向くことがあります。僕も一度、その経験がありますが、親方を通じて、おおよそ3万円程度の報酬をいただいた記憶があります。
しかも当日は、稽古を中断して出かけられるので、とても嬉しかったですね。
さくら
元力士 まさる
ご祝儀
本場所千秋楽の夜には、各部屋で盛大な打ち上げパーティーが開かれます。後援会の方や熱心な相撲ファンなど、様々な方が招かれ、力士たちはご招待客の皆さんと一緒に食事を楽しみます。
力士たちは、お客様に飲み物を注いだり、料理を運んだりしながら、交流を深めます。特に勝ち越しを決めた力士には、ファンや後援会の方から直接「ご祝儀」をいただくこともあります。
金額は様々ですが、人気力士ほど多くのご祝儀をいただけることになりますね。
タニマチ
タニマチとは、相撲界において力士を個人的に支援する人のことです。特に力士の経済的な援助を行う人のことを指し、一種のパトロンのような存在です。
こういった存在がいると、先ほどの千秋楽パーティーなどで、ご祝儀を多くいただけるということになりますね。
ちなみに僕には、タニマチはいませんでした(-_-;)
力士の生活費と支出
ここまでは力士の収入についてお話ししてきましたが、次に気になるのは「力士はどんなことにお金を使っているの?」という点ですよね。ここからは、力士たちのお金の使い道についてご紹介していきたいと思います。
家賃や食費は必要?
結論から言うと、力士は基本的に家賃や食費がかかりません。というのも、部屋に住み込みで生活し、食事も提供されるからです。ただ、「基本的に」と言ったのは、関取になると安定した収入を得られるようになり、部屋を出る選択肢もあるからです。
また、結婚すれば自然と部屋を出ることになりますが、その場合、家賃や食費は自分で負担することになります。
さらに、特にそういったケースでなくても、身体を大きくするために夜食を摂る力士も多くいます。夕食後にコンビニなどでお弁当を買って、寝る前に再び食事をする力士も少なくありませんが、これらの費用は自己負担となります。
どんなことに使っている?
ここでは、僕の体験をもとにお話しします。そのため、部屋によって異なる点もあるので、参考程度に読んでくださいね。
生活用品
稽古やトレーニングで必要なもの
- まわし
◇僕の現役時代は、両国国技館で1m800円でした。(黒まわし) - テーピング
◇こちらも両国国技館内にある、相撲診療所で購入します。
テープの幅に応じて価格が違い、1cm×1個=100円でした。 - 包帯(さらし)
◇さらしを縦に割いて、丸めて包帯として使用します。
相撲は手首・足首をよく痛めるので、固定するために使うことが多いです。
*稽古中はマゲがほどけてしまうので、簡易的に縛るためにも使用します。 - タオル
- プロテインなど
衣服
- 普段着
◇トレーナーやジャージ - 下着
◇両国にある「ライオン堂」の白いトランクス
◇着物の下に着る、肌襦袢(はだじゅばん)、ステテコなど - 履物
◇普段はサンダルです。
◇着物着用時は、下駄・ゴム草履、雪駄、など、その力士の階級(番付)に準じます。 - 着物
◇入門時にいただきましたが、それ以降は自分で負担します。しかし、生地から用意しないといけないので、高額になると思われます。高いとわかっていたので、僕は購入の検討すらしませんでした。(階級(番付)によって着用してはいけない生地などがあります。) - 浴衣
◇生地は関取や親方からいただいていました。仕立ては自分で依頼しますが、1着5000円で部屋の近所の方が作ってくれていました。
以上が、力士がお金を使う主な場面です。
細かいことをいえば、他にもマゲを結うために使用する「鬢付け油」(びんつけあぶら)や、番付表の購入、地方場所への荷物の運送代などもあります。
*鬢付け油は、場所毎に「油代」として、床山に5000円支払っていました。
部屋による違いはあるかもしれません。
私の場合、毎月の生活費はおよそ3万円程度でやりくりすることで、次の給金を受け取る頃には少しですがお金を残すこともできました。その残ったお金は、貯金に回したり、娯楽や嗜好品に使っていました。
とはいえ、本場所が終わり緊張から解放されると、つい遊びたくなり、予算を超えて使ってしまうことも少なくありません。その結果、貯金はあまりできなかったのが現実です(-_-;)
「行事」「呼出」「床山」の給与
さくら
では、ここからは力士以外で相撲界を支えている人たち、「行事」「呼出」「床山」の給与についてご紹介いたしますね。
給与体系の共通事項
各々の給与を紹介していく前に、共通して同じ項目があるので、まず初めにそこから説明していきますね。
3つの職、全ての給与は月給制で、その内訳は「本棒・手当」となります。しかし、「行事」に関してのみ場所ごとに支給される「装束補助費」とされる衣装代も加わります。
そして、本棒については力士同様「階級」が存在し、地位によって給与に反映されます。このあと、それぞれ一覧表にしましたので、確認してみてください。
また、手当については「各人の能力・成績・勤務状況ならびに物価・社会状勢等を勘案し、理事長が決定する。」とあり、階級による違いがあるのか確認できませんでしたが、初任給は公表されていましたので参考にしてください。
- 本棒(月):14,000円
- 手当(月):126,000円
- 合計(月):140,000円
行事
階級 | 本棒(月) | 手当(月) | 装束補助費 (一場所につき) |
---|---|---|---|
立行司 | 400,000~500,000円未満 | 各人の能力・成績・勤務 状況ならびに物価・社会 状勢等を勘案し、理事長 が決定する。 |
50,000円 |
三役行司 | 360,000~400,000円未満 | 40,000円 | |
幕内行司 | 200,000~360,000円未満 | 30,000円 | |
十枚目行司 | 100,000~200,000円未満 | 25,000円 | |
幕下行司 | 42,000~100,000円未満 | 20,000円 | |
三段目行司 | 29,000~42,000円未満 | ||
序二段行司 | 20,000~29,000円未満 | ||
序の口行司 | 14,000~20,000円未満 |
呼出
階級 | 本棒(月給) | 手当(月) |
---|---|---|
三役呼出以上 | 360,000~400,000円未満 | 各人の能力・成績・勤務 状況ならびに物価・社会 状勢等を勘案し、理事長 が決定する。 |
幕内呼出 | 200,000~360,000円未満 | |
十枚目呼出 | 100,000~200,000円未満 | |
幕下呼出 | 42,000~100,000円未満 | |
三段目呼出 | 29,000~70,000円未満 | |
序二段呼出 | 20,000~29,000円未満 | |
序の口呼出以下 (3年間見習い) |
14,000~20,000円未満 |
床山
階級 | 本棒(月給) | 手当(月) |
---|---|---|
特等 | 360,000~400,000円未満 | 各人の能力・成績・勤務 状況ならびに物価・社会 状勢等を勘案し、理事長 が決定する。 |
一等 | 250,000~360,000円未満 | |
二等 | 140,000~250,000円未満 | |
三等 | 70,000~140,000円未満 | |
四等 | 29,000~70,000円未満 | |
五等 | 20,000~29,000円未満 | |
見習い期間(三年) | 14,000~20,000円未満 |
元力士 まさる
まとめ
こうしてみてみると、幕下以下の力士養成員は見習いのような位置づけですから、やはり収入としては厳しいですね。
しかし、関取となって一人前の力士になれば、収入が一気に増え、生活は天と地ほど変わります。個室が与えられるなど待遇も格段に良くなりますし、自分の体にしっかりと投資できるようになるんですよね。
早く一人前になれるように、時間やお金の使い方が、出世のカギを握っているといっても過言ではないでしょう。遊びやギャンブルで浪費してしえば、当然、出世の道は遠のいてしまいますから・・・。
それでは、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう。