明治神宮の奉納土俵入り2027|日程・時間・見方を元力士が解説
子供のころ、テレビの中の横綱は雲の上というか、とても遠い存在でした。テレビで見ていた横綱土俵入りを初めて生で見たのは、現役を引退してからです。
四股の力強さと、歓声や拍手で客席がひとつになる感じは、テレビでは味わえなかったんですよね。
土俵入りは、見せるためだけの所作ではありません。神前で地の邪気をはらう神事です。
こんにちは!元力士のしんざぶろうです。
明治神宮の奉納土俵入りとは、初場所の前に横綱が神前で地の邪気を祓う(はらう)、相撲界の一年の幕開けの行事です。俵で囲った土俵も客席もない境内で、横綱が綱を締めて四股を踏みます。
本場所の横綱土俵入りはテレビ中継で見られますが、神社の石畳で踏む四股を生で見たことはありますか。
この記事では、明治神宮の奉納土俵入りがいつ、どこで行われ、誰でも見られるのかを解説します。
神社の石畳で四股かぁ。土俵の上とは足の感触が全然違いそうだなぁ。
しかも、ただで見られるなんて知らなかったよ。
明治神宮の奉納土俵入りはいつ見られるのか
明治神宮の奉納土俵入りは、年が明けて初場所が始まる前に行われます。横綱が綱を締め、太刀持ち(たちもち)と露払い(つゆはらい)を従えて、神前で土俵入りを奉納します。
その様子は、以下の映像で見られます。新春の奉納土俵入りではなく、2025年1月31日に行われた横綱推挙式(よこづなすいきょしき)のときの映像ですが、場所は同じ明治神宮です。
映っているのは、横綱に推挙されたその日に、拝殿の前で初めての横綱土俵入りを奉納する豊昇龍です。
見るときは、土俵のない石畳で踏む四股と、本場所のときと変わらない所作の順番に注目してみてください。
本場所の土俵入りと同じ所作なのに、周りに俵がないだけで、ずいぶん違って見えますね。
石畳の上に横綱が立っているだけで、ここは神社なんだなって分かります。
これ、私も見に行けるのかな?
初場所の前の1月上旬に行われる
本場所では、横綱土俵入りのあとに幕内の取組が続きます。明治神宮の奉納土俵入りでは、行司が立ち会うところまでは本場所と同じですが、横綱が土俵入りを行うだけで、そのあとに取組はありません。
日にちは例年、1月上旬です。2024年は1月5日、2025年は1月7日、2026年は1月6日と、年によって前後します。
参考:『裏まで楽しむ!大相撲』ダグハウス編、KADOKAWA、2017年
参考:東スポWEB(2024年1月5日)/東スポWEB(2025年1月8日)
2027年の日にちと時刻は、発表され次第この記事に追記します。
2026年は1月6日に豊昇龍と大の里の2横綱が奉納した
2026年は1月6日、豊昇龍と大の里の2横綱がそろって雲竜型(うんりゅうがた)を奉納し、約2,000人が集まりました。東西の2人の横綱がそろって奉納したのは、白鵬と鶴竜が並んだ2020年以来6年ぶりです。
この日、大の里の太刀持ちは一山本(いちやまもと)、露払いは隆の勝(たかのしょう)が務めました。大の里が締めていたのは、久能山東照宮(くのうざんとうしょうぐう)の名が入った、新しい三つぞろいの化粧まわしです。
参考:時事ドットコム「大の里、豊昇龍が新春土俵入り」(2026年1月6日)/共同通信「明治神宮で両横綱土俵入り」
三つぞろいというのは、横綱・太刀持ち・露払いの3人分を同じ図柄でそろえた化粧まわしのことです。化粧まわしが一本いくらするのか、誰が贈るのかは、別の記事に書きました。
開始時刻は年によって違う
開始の時刻は、日付とあわせて毎年、日本相撲協会が発表します。年によって違うので、前の年の時刻をそのまま当てにしないほうが安全です。
しかも、無料で誰でも入れるので、始まる時刻よりかなり前から人が集まります。出かける年の奉納土俵入りの日付と時刻は、日本相撲協会の公式サイトと公式X(@sumokyokai)で確かめ、余裕を持って向かってください。
奉納土俵入りの数日後には、初場所が初日を迎えます。2027年の初場所は、1月10日が初日です。日程やチケットの取り方は、初場所の記事にまとめています。
明治神宮の奉納土俵入りはどこで見られるのか
明治神宮の奉納土俵入りに、国技館のような常設の客席はありません。見る側も横綱も、同じ境内に立っています。
拝殿前の石畳で行われ土俵はない
横綱が土俵入りを奉納するのは、本殿の手前にある拝殿の前です。拝殿の正面に張り出した屋根の下の石畳に、土俵も俵もないまま横綱が立ちます。
本場所の土俵入りを見慣れていると、俵がないことに最初は戸惑うかもしれません。それでも所作そのものは、国技館で見るものと同じです。
参考:明治神宮 歴史データベース「明治神宮例祭奉納力士選士権大会」
一般公開で無料で見られる
チケットは要りません。例年、一般に公開されていて、参拝のついでに足を止めた人も、その場で見られます。ただし、天候や当日の状況で見られないこともあります。
ただ、集まる人の数は年によって違います。2026年は約2,000人、3横綱がそろった2018年は約2,800人、稀勢の里の横綱推挙式があった2017年1月27日には約1万8,000人でした。人が多い年に後ろのほうに立つと、前の人の頭越しに見ることになります。
参考:デイリースポーツ「明治神宮土俵入り観客激減2/3」(2018年1月10日)
最寄り駅と御社殿までの歩く時間
最寄り駅は、JR山手線の原宿駅と、東京メトロの明治神宮前〈原宿〉駅です。この2駅なら原宿口(南口)が入口になります。代々木駅と北参道駅なら代々木口(北口)、小田急線の参宮橋(さんぐうばし)駅なら参宮橋口(西口)です。
どの入口から入っても、奉納が行われる御社殿(ごしゃでん)までは、森の中の参道を歩いて約10分かかります。駅に着く時刻ではなく、御社殿に着く時刻で逆算して出かけてください。
参考:明治神宮 公式サイト「交通アクセス」(原宿口・代々木口・参宮橋口の最寄り駅)
雨や雪の日は社殿の中で行われることがある
屋外の行事なので、天候には左右されます。2025年5月30日、大の里が横綱推挙式のあとに行った土俵入りは、雨のため社殿の中で行われ、一般公開は中止になりました。1951年の第41代千代の山(ちよのやま)以降、新横綱の奉納土俵入りが悪天候で社殿内になったのは、これが初めてでした。
参考:デイリースポーツ「大の里、社殿内で奉納土俵入り」(2025年5月31日)
新春の奉納土俵入りが社殿の中で行われた例もあります。2020年1月7日は雨のため、白鵬と鶴竜の土俵入りは社殿の中で行われ、初詣の人たちは遠巻きに見守るだけになりました。天気の悪い日は見られないこともあるので、出かける前に天気予報と協会の案内を一度確かめておくと安心です。
参考:四国新聞「白鵬と鶴竜が新春土俵入り/雨の明治神宮、社殿で」(2020年1月7日)
雨だと社殿の中になって、見られないこともあるのかぁ。それに、晴れた年は何千人も集まるんだね。僕は体が大きいから、前に立つと後ろの人に悪いし、端のほうから見ることになりそうだなぁ。
それと、1月の屋外で立って待つのは本当に冷えるから、天気だけじゃなくて着るものも考えておいたほうがいいと思うよ。
奉納土俵入りは何のために行うのか
国技館の土俵ではなく、神社の石畳で横綱が四股を踏むのには理由があります。
地の邪気を祓い一年の安全を祈る
奉納土俵入りとは、「神社などで、天地長久と安全を祈願し地の邪気を祓う意味で行われる土俵入りのこと。通常は横綱が行う」ものです。天地長久(てんちちょうきゅう)は、平和や繁栄がいつまでも続くことをいいます。
参考:『相撲大事典』第4版、金指基 原著、現代書館「奉納土俵入り」p.295
その土俵入りの中心にあるのが四股です。四股には、地中の醜(しこ)、つまり邪気を踏んで鎮める意味があるとされています。明治神宮では、その四股を俵のない石畳の上で踏みます。
四股そのものの意味と、踏み方で何が変わるのかは、四股の記事に書きました。
奉納するのは横綱
奉納土俵入りを行うのは、通常は横綱です。横綱が腰に締める綱は注連縄(しめなわ)で、綱を張った横綱は神に近い存在とされます。
横綱の綱は、新横綱が誕生したときと、年に3回ある東京本場所の前に、新しく作ります。作業は横綱の所属する部屋で行われ、部屋や一門の力士が白い手袋を着けて、掛け声に合わせて綱をよります。地方の本場所には、東京で作った綱を持っていきます。
では、誰が横綱になれるのか。成績だけでなく品格も問われる昇進の条件は、横綱昇進の記事にまとめています。
手数入りとも呼ばれる
奉納土俵入りは「手数入り(でずいり)」とも呼ばれます。明治神宮の記録でも、大正時代の最初の奉納から「手数入奉納」の語が使われています。
参考:『全部わかる大相撲ガイド』田中亮 著、成美堂出版、2019年
なお、横綱土俵入りには雲竜型と不知火型(しらぬいがた)の2つの型があり、綱の結び目の輪が雲竜型は1つ、不知火型は2つです。土俵に上がると塵浄水(ちりちょうず)、四股、せり上がりと進み、最後の四股で災厄を追い払います。
拙者の頃、相撲は寺社の境内で取るものであった。土俵に上がれば、まず四股で地を鎮める。見物の衆のためにあらず、神への務めであったぞ。
俵がなくとも、横綱の足が踏むのは同じ地である。四股の意味は、場所が変わっても変わらぬ。
明治神宮と相撲の100年
明治神宮と相撲のつながりは、神宮の造営が進んでいた大正時代に始まります。
始まりは大正時代の地鎮祭
大正7年(1918年)6月1日、外苑の地鎮祭で、力士が地固めの相撲を奉仕しました。
大正11年(1922年)11月2日には、横綱大錦(おおにしき)が拝殿前の石段の下で手数入りを奉納しています。さらに大正14年(1925年)11月1日の例祭では、栃木山(とちぎやま)・西ノ海(にしのうみ)・常ノ花(つねのはな)の三横綱が、参拝に続いて手数入りを奉納しました。
新横綱の推挙式も明治神宮で行われる
新しく横綱が誕生したときも、明治神宮で横綱推挙式が行われます。1951年の第41代千代の山から続く行事で、理事長から横綱推挙状を受けた新横綱が、その場で最初の横綱土俵入りを奉納します。
2025年は、1月31日に豊昇龍が、5月30日に大の里が、この境内で推挙状を受けました。
秋には全日本力士選士権の奉納もある
秋には、明治神宮の例祭を祝う全日本力士選士権大会があります。9月下旬から10月初旬の大会当日、日本相撲協会の役員と横綱が神前で正式参拝し、続いて拝殿前の石畳で横綱土俵入りを奉納します。午後は両国国技館に移り、力士のトーナメントが行われます。
こうして明治神宮では、新横綱の推挙式とは別に、新春と秋の年2回、横綱土俵入りが奉納されています。本場所とこうした行事が一年にどう並んでいるかは、年間スケジュールの記事に書きました。
大正時代の地鎮祭から、100年以上も続いているんですね。
しかも新春だけじゃなくて、秋にも奉納があるなんて知りませんでした。
次の初場所の前は、どの横綱が石畳に立つのかな?
元力士が客席で見た横綱土俵入り
ここからは明治神宮の話ではなく、僕が横綱土俵入りをどう見てきたかという、元力士の話です。僕自身は、明治神宮の奉納土俵入りを見に行ったことがありません。
テレビで見ていた貴乃花の四股
子供のころ、僕はテレビで元横綱貴乃花の横綱土俵入りを見ていました。四股がきれいで力強く、こんなにきれいに踏めるから強いんだな、と思っていたんです。僕が相撲の世界に入るきっかけをくれた人でもあります。
引退相撲の升席で初めて生で見た
横綱土俵入りを生で見る機会は、現役を引退してから巡ってきました。場所は明治神宮ではなく、両国国技館です。
付き人をしていた関取の引退相撲に参加し、両国国技館の升席(ますせき)に座りました。
あの日、僕は升席から横綱土俵入りを見ました。四股の力強さが、今も残っています。
テレビと違ったのは、歓声や拍手です。観客の一体感というか、そういった体験は、テレビでは味わえませんでした。
子供のころ、横綱は雲の上というか、とても遠い存在でした。生で見て、それがぐっと近づいた。
変な言い方ですが、本当にいるんだぁ、という感じです。
テレビで憧れた所作を客席で浴びたのは、あの日が初めてでした。
一方、明治神宮の奉納土俵入りには、升席も椅子席の列もありません。横綱まで何列もの席があった国技館と違って、見る人は、石畳に立つ横綱と同じ地面に立って向き合います。
あの歓声や拍手が、屋根のない空の下でどう響くのか。行ったことのない僕には、想像がつきません。
明治神宮で奉納土俵入りを見る方は、横綱の全身を追うより、四股で足が石畳に下りる一瞬を見ていてください。
升席で僕に残った力強さも、その一瞬のものでした。
明治神宮の奉納土俵入りに関するよくある質問
明治神宮の奉納土俵入りについて、出かける前に気になりやすい疑問に順にお答えします。
Q1. 明治神宮の奉納土俵入りは何時から始まりますか?
A. 年によって違います。日付と時刻は毎年、日本相撲協会が公式サイトと公式X(@sumokyokai)で発表するので、出かける年の発表を確かめてください。無料で誰でも入れるため、始まる時刻より早めに着いておくと、見やすい場所に立てます。
Q2. チケットは必要ですか?
A. 例年、必要ありません。一般に公開されていて、境内に入れば誰でも見られます。ただし2026年は約2,000人が集まるなど人出があるので、後ろのほうでは前の人の頭越しになることもあります。雨の日は社殿内に移り、一般公開されないことがあります。
Q3. 雨の日はどうなりますか?
A. 社殿の中で行われ、一般公開されないことがあります。2025年5月30日の大の里の横綱推挙式では、雨のため土俵入りが社殿内で行われ、一般公開は中止になりました。
Q4. 横綱以外の力士も参加しますか?
A. 本場所の横綱土俵入りと同じく、太刀持ちと露払いの2人の力士が従い、行司も立ち会います。取組はなく、土俵入りだけで終わります。
Q5. 明治神宮以外でも横綱の奉納土俵入りはありますか?
A. あります。名古屋場所の前の熱田神宮では、2026年7月4日に豊昇龍と大の里が奉納し、約5,000人が集まりました。九州場所の前の福岡の住吉神社や、大阪場所の前の住吉大社でも、場所前の奉納土俵入りが行われてきました。
靖国神社では4月の例大祭に土俵入りを奉納したあと、境内の土俵で奉納大相撲が行われます。出雲大社でも、巡業が島根県を回るときに横綱土俵入りが奉納されます。
まとめ
本場所の土俵入りは、吊り屋根(つりやね)の下、俵で囲った土俵の上で行われます。それを見慣れた人ほど、明治神宮の石畳で同じ所作を見たときに、違いが目に入ると思います。俵もなく、吊り屋根もなく、横綱と同じ地面に自分も立っている。
僕が升席で浴びた歓声や拍手は、空の下ではどんな音になるのか。行った人にしか分からないことが、ひとつ残っています。
初場所は、奉納土俵入りの数日後に始まります。神前で邪気を祓った横綱が、今度は国技館の土俵に上がる。その順番を知っていると、初日の土俵入りも少し違って見えると思います。
拙者は綱を張らぬまま土俵を去った身である。ゆえにこそ、綱を締めて神前に立つ者の覚悟が分かる。
年の初めに横綱が踏む四股は、その年の土俵のためのものぞ。石畳に下りる足の重さを、そなたも覚えておくがよい。
いまはその『相撲』が楽天マガジンの読み放題に入っていて、1冊買うより安く読めます。
- 1952年創刊、日本相撲協会の機関誌
- 本場所前に展望号、本場所後に総決算号が刊行。場所ごとの流れを追える
- 4,000誌・15,000冊以上が読み放題。バックナンバーも対象
- 無料期間のあとは自動更新(Webからの申し込みは月額597円・税込、アプリからは月額710円・税込)。電子版は一部の記事・写真と別冊付録が非掲載



















