相撲部屋の一門相関図と一門一覧【2026年】5つの一門を元力士が解説
現役のころ、力士会が開いた運動会に出たことがあります。配られた紫の鉢巻きとタンクトップの胸には、「二所一門」の文字。
稽古のない一日が単純にうれしくて、番付が離れて会えなくなっていた同期生とも、久しぶりに顔を合わせました。
一門というと親方たちの派閥のように聞こえますが、若い衆だった僕にとっては、運動会の日に胸へ付けた名前でもありました。
こんにちは!元力士のしんざぶろうです。
一門とは、本家と分家の関係をもとに広がってきた相撲部屋のまとまりで、2026年10月時点では出羽海・二所ノ関・時津風・高砂・伊勢ヶ濱の5つです。
では、あなたが推している力士の部屋は、どの一門なのでしょうか。また、一門が違うと何が変わるのでしょうか。
この記事では、5つの一門の相関図と一門一覧、派閥と呼ばれる理由、そして若い衆だった僕の毎日に一門が顔を出した場面まで解説します。
一門って、理事選のニュースで名前を聞くくらいだと思ってたけど、相関図まであるんだね。
僕らの若い衆のころの話まで出てくるなら、ちょっと見てみたくなったよ。
相撲部屋の一門相関図(2026年10月時点の5つの一門と45部屋)
一門は、親方どうしの集まりとして語られる言葉です。しかし、力士が一門の単位で顔を合わせる場面もあります。その一つが、場所前の連合稽古です。
実際の様子は、日本相撲協会の公式映像で見ることができます。
映っているのは、令和7年11月2日に佐渡ヶ嶽部屋で行われた、二所ノ関一門の連合稽古です。大の里関と琴櫻関の三番稽古も収められています。
なお、連合稽古には、同じ一門の力士だけでなく、別の一門から出稽古で加わる力士がいることもあります。見るときは、ふだんは別々の部屋で稽古している力士たちが、同じ土俵の周りで順番を待っているところに注目してみてください。
相撲の稽古って、それぞれの部屋の中だけでするものだと思っていました。一門の連合稽古になると、違う部屋の力士が同じ土俵で稽古するんですね。
応援している力士の部屋がどの一門なのか、先に知っておくと映像の見方も変わりそうです♪
相関図(一門の所属と主な系統)
一門の所属部屋を整理したのが、次の図です。2026年10月時点の5つの一門と45部屋のつながりをまとめました。
- 出羽海部屋(一門の名前になっている部屋)
- 春日野部屋
- 玉ノ井部屋 ┈ 春日野部屋から独立(1990年)
- 境川部屋 ┈ 出羽海部屋から独立(1998年)
- 武隈部屋 ┈ 境川部屋から独立(2022年)
- 藤島部屋 ┈ 旧武蔵川部屋を継承して改称(2010年)
- 武蔵川部屋 ┈ 藤島部屋から独立(2013年)
- 二子山部屋 ┈ 藤島部屋から独立(2018年)
- 雷部屋 ┈ 入間川部屋を継承して改称(2023年)
- 木瀬部屋・尾上部屋 ┈ 旧三保ヶ関部屋から独立(2003年・2006年)
- 山響部屋 ┈ 北の湖部屋を継承して改称(2015年)
- 式秀部屋
- 立浪部屋 ※立浪系の本家。2018年に出羽海一門へ
- 二所ノ関部屋(一門の名前になっている部屋。2021年に田子ノ浦部屋から独立した荒磯部屋が、年寄二所ノ関の襲名で改称)
- 放駒部屋 ┈ 旧二所ノ関部屋を継承して改称(2021年)
- 中村部屋 ┈ 二所ノ関部屋から独立(2024年)
- 佐渡ヶ嶽部屋
- 鳴戸部屋 ┈ 佐渡ヶ嶽部屋から独立(2017年)
- 秀ノ山部屋 ┈ 佐渡ヶ嶽部屋から独立(2024年)
- 片男波部屋
- 田子ノ浦部屋
- 西岩部屋 ┈ 田子ノ浦部屋から独立(2018年)
- 芝田山部屋 ┈ 旧放駒部屋から独立
- 湊川部屋 ┈ 常盤山部屋を継承して改称(2026年)
- 押尾川部屋 ┈ 尾車部屋から独立(2022年)
- 大嶽部屋・阿武松部屋 ※旧貴乃花一門。2018年に二所ノ関一門へ
- 高田川部屋 ※高砂系。2011年に二所ノ関一門へ
- 湊部屋・錣山部屋 ※時津風系。2018年に二所ノ関一門へ
- 時津風部屋(一門の名前になっている部屋)
- 伊勢ノ海部屋
- 追手風部屋
- 荒汐部屋
- 音羽山部屋 ┈ 陸奥部屋から独立(2023年)
- 高砂部屋(一門の名前になっている部屋)
- 錦戸部屋 ┈ 高砂部屋から独立(2002年)
- 九重部屋
- 八角部屋 ┈ 九重部屋から独立(1993年)
- 伊勢ヶ濱部屋(一門の名前になっている部屋。一門は立浪部屋が離れるまで立浪一門と呼ばれた)
- 安治川部屋 ┈ 伊勢ヶ濱部屋から独立(2022年)
- 浅香山部屋 ┈ 友綱部屋から独立(2014年)
- 大島部屋 ┈ 友綱部屋の名称変更(2022年)
- 朝日山部屋 ※尾車部屋から独立して再興(2016年)。2017年に二所ノ関一門から伊勢ヶ濱一門へ
参考:日本相撲協会「相撲部屋のご紹介」/日刊スポーツ「理事候補選 4期連続無投票確実」(2026年1月)
図では、枠ごとに一門を分けています。色の付いた名前は一門の名前になっている部屋で、灰色の注は「どの部屋から独立したか」「どの部屋を継いだか」を、赤い注は「別の系統や別の一門から加わった部屋」を示しています。
一門と系統は別もの(立浪部屋が出羽海一門にいる理由)
相関図を見ると、「立浪部屋なのに、なぜ立浪一門ではないの?」と感じる方もいるかもしれません。ここで分けて考えたいのが、「系統」と「一門」です。
系統は、本家と分家の歴史的なつながりです。一門は、2026年10月時点でどのまとまりに所属しているかを表します。
多くの部屋では、この2つが重なっています。しかし、途中で所属する一門を変えた部屋もあります。
立浪部屋は立浪系の本家にあたる部屋ですが、2018年に出羽海一門へ加わりました。同じ年に、時津風系の湊部屋と錣山部屋は二所ノ関一門へ入っています。
※スマートフォンでは、表を横にスクロールできます
| 部屋 | もとの系統・一門 | 2026年10月時点の一門(移った年) |
|---|---|---|
| 立浪部屋 | 立浪系(本家) | 出羽海一門(2018年) |
| 湊部屋 | 時津風系 | 二所ノ関一門(2018年) |
| 錣山部屋 | 時津風系 | 二所ノ関一門(2018年) |
| 大嶽部屋・阿武松部屋 | 貴乃花一門(2018年6月に消滅) | 二所ノ関一門(2018年) |
| 高田川部屋 | 高砂系 | 二所ノ関一門(2011年) |
| 朝日山部屋 | 二所ノ関系(尾車部屋から再興) | 伊勢ヶ濱一門(2017年) |
参考:四国新聞(2018年11月)/日刊スポーツ(2011年1月)/日刊スポーツ(2017年1月)
高田川部屋は、5つの一門のどこにも入っていない時期を経て、2011年1月に二所ノ関一門へ加わりました。朝日山部屋は、2016年に尾車部屋から独立して再興したあと、翌2017年1月に二所ノ関一門を離れて伊勢ヶ濱一門へ移っています。
部屋の歴史的な系統はそのままでも、所属する一門は変わることがあります。相関図を見るときは、「どこから分かれた部屋なのか」と「今どの一門にいるのか」を分けて考えると分かりやすくなります。
部屋数の多い順(二所ノ関17・出羽海14・時津風5・伊勢ヶ濱5・高砂4)
日本相撲協会の制度上、一門そのものに順位や格付けはありません。ただ、規模を見る目安として、所属する部屋数を比べることはできます。2026年10月時点では、次のとおりです。
- 二所ノ関一門:17部屋
- 出羽海一門:14部屋
- 時津風一門:5部屋
- 伊勢ヶ濱一門:5部屋
- 高砂一門:4部屋
参考:日本相撲協会「相撲部屋のご紹介」(2026年10月取得)
協会の運営に関わる理事候補の人数を見ると、一門ごとのまとまりがより分かりやすくなります。2026年1月の理事候補選では、出羽海一門と二所ノ関一門から3人ずつ、時津風一門から2人、高砂一門と伊勢ヶ濱一門から1人ずつが擁立されました。定員10人に対して候補者も10人となり、1月23日の届け出で4期連続の無投票が決まりました。この10人は、3月23日の評議員会で理事就任が承認されています。
参考:日刊スポーツ(2026年1月)/日刊スポーツ(2026年3月)
二所ノ関一門が17部屋って言われても、現役のころの僕には、その数字より出稽古で来てくれた他の部屋の兄弟子のほうが身近だったなぁ。
理事を一門から何人出すかなんて話は、若い衆には関係のない世界だったよ。
一門一覧(全45部屋と師匠の元四股名)
ここからは、2026年10月時点の45部屋を、一門ごとに一覧でまとめます。師匠の年寄名に加えて、現役時代の四股名と最高位も載せています。
出羽海一門の14部屋
出羽海部屋の名を冠する一門です。春日野部屋や境川部屋などが連なり、2018年には立浪部屋が加わりました。2026年10月時点で14部屋あります。
※スマートフォンでは、表を横にスクロールできます
| 部屋 | 師匠(年寄名) | 元四股名(最高位) |
|---|---|---|
| 出羽海部屋 | 出羽海 | 小城乃花(前頭二枚目) |
| 春日野部屋 | 春日野 | 栃乃和歌(関脇) |
| 境川部屋 | 境川 | 両国(小結) |
| 武蔵川部屋 | 武蔵川 | 武蔵丸(第67代横綱) |
| 藤島部屋 | 藤島 | 武双山(大関) |
| 二子山部屋 | 二子山 | 雅山(大関) |
| 武隈部屋 | 武隈 | 豪栄道(大関) |
| 玉ノ井部屋 | 玉ノ井 | 栃東(大関) |
| 雷部屋 | 雷 | 垣添(小結) |
| 木瀬部屋 | 木村瀬平 | 肥後ノ海(前頭筆頭) |
| 尾上部屋 | 尾上 | 濱ノ嶋(小結) |
| 山響部屋 | 山響 | 巌雄(前頭筆頭) |
| 式秀部屋 | 式守秀五郎 | 北桜(前頭九枚目) |
| 立浪部屋 | 立浪 | 旭豊(小結) |
このうち雷部屋は、2023年に雷親方(元小結垣添)が入間川部屋を継いで改称した部屋です。部屋付きの親方から部屋持ちになるまでの経緯は、雷親方の記事で書いています。
また、2018年に藤島部屋から独立した二子山部屋については、どんな力士がそろっているのかを部屋ごとの記事でまとめています。
二所ノ関一門の17部屋
二所ノ関部屋の名を冠する一門で、2026年10月時点では17部屋。5つの一門の中で、最も部屋数が多い一門です。
2026年10月時点の二所ノ関部屋は、2021年に荒磯部屋が年寄二所ノ関の襲名に伴って改称した部屋です。それまで二所ノ関部屋だった部屋は、放駒部屋へ改称しています。
※スマートフォンでは、表を横にスクロールできます
| 部屋 | 師匠(年寄名) | 元四股名(最高位) |
|---|---|---|
| 二所ノ関部屋 | 二所ノ関 | 稀勢の里(第72代横綱) |
| 放駒部屋 | 放駒 | 玉乃島(関脇) |
| 中村部屋 | 中村 | 嘉風(関脇) |
| 佐渡ヶ嶽部屋 | 佐渡ヶ嶽 | 琴ノ若(関脇) |
| 鳴戸部屋 | 鳴戸 | 琴欧洲(大関) |
| 秀ノ山部屋 | 秀ノ山 | 琴奨菊(大関) |
| 片男波部屋 | 片男波 | 玉春日(関脇) |
| 田子ノ浦部屋 | 田子ノ浦 | 隆の鶴(前頭八枚目) |
| 西岩部屋 | 西岩 | 若の里(関脇) |
| 芝田山部屋 | 芝田山 | 大乃国(第62代横綱) |
| 湊川部屋 | 湊川 | 貴景勝(大関) |
| 押尾川部屋 | 押尾川 | 豪風(関脇) |
| 大嶽部屋 | 大嶽 | 玉飛鳥(前頭九枚目) |
| 阿武松部屋 | 阿武松 | 大道(前頭八枚目) |
| 高田川部屋 | 高田川 | 安芸乃島(関脇) |
| 湊部屋 | 湊 | 湊富士(前頭二枚目) |
| 錣山部屋 | 錣山 | 豊真将(小結) |
参考:日本相撲協会「年寄」一覧(2026年10月取得)/日刊スポーツ「荒磯親方が二所ノ関襲名」(2021年12月)
時津風一門の5部屋
時津風部屋の名を冠する一門で、伊勢ノ海・追手風・荒汐・音羽山と合わせて5部屋です。
音羽山部屋は、音羽山親方(元横綱鶴竜)が2023年に陸奥部屋から独立して開いた部屋です。
※スマートフォンでは、表を横にスクロールできます
| 部屋 | 師匠(年寄名) | 元四股名(最高位) |
|---|---|---|
| 時津風部屋 | 時津風 | 土佐豊(前頭筆頭) |
| 伊勢ノ海部屋 | 伊勢ノ海 | 北勝鬨(前頭三枚目) |
| 追手風部屋 | 追手風 | 大翔山(前頭二枚目) |
| 荒汐部屋 | 荒汐 | 蒼国来(前頭二枚目) |
| 音羽山部屋 | 音羽山 | 鶴竜(第71代横綱) |
参考:日本相撲協会「年寄」一覧(2026年10月取得)/日刊スポーツ「元横綱鶴竜が音羽山部屋を新設」(2024年1月)
高砂一門の4部屋
高砂部屋の名を冠する一門で、九重・八角・錦戸と合わせて4部屋です。
2026年10月時点で日本相撲協会の理事長を務める八角親方(元横綱北勝海)も、この一門に所属しています。
※スマートフォンでは、表を横にスクロールできます
| 部屋 | 師匠(年寄名) | 元四股名(最高位) |
|---|---|---|
| 高砂部屋 | 高砂 | 朝赤龍(関脇) |
| 九重部屋 | 九重 | 千代大海(大関) |
| 八角部屋 | 八角 | 北勝海(第61代横綱) |
| 錦戸部屋 | 錦戸 | 水戸泉(関脇) |
伊勢ヶ濱一門の5部屋
伊勢ヶ濱部屋の名を冠する一門で、浅香山・朝日山・安治川・大島と合わせて5部屋です。
このまとまりは、かつて立浪一門と呼ばれていました。その後、立浪部屋が離れ、春日山部屋との連合を経て伊勢ヶ濱一門と改称しています。
参考:『相撲大事典』第4版(金指基 原著、現代書館)「一門」
※スマートフォンでは、表を横にスクロールできます
| 部屋 | 師匠(年寄名) | 元四股名(最高位) |
|---|---|---|
| 伊勢ヶ濱部屋 | 伊勢ヶ濱 | 照ノ富士(第73代横綱) |
| 浅香山部屋 | 浅香山 | 魁皇(大関) |
| 朝日山部屋 | 朝日山 | 琴錦(関脇) |
| 安治川部屋 | 安治川 | 安美錦(関脇) |
| 大島部屋 | 大島 | 旭天鵬(関脇) |
なお、2026年10月時点のこの一覧に宮城野部屋はありません。宮城野部屋の力士が伊勢ヶ濱部屋へ移った経緯は、宮城野親方(元横綱旭富士)の記事で書いています。
一門とは何か(巡業の組合から理事を生む派閥へ)
ここまで見てきたのは、2026年10月時点の一門の形です。では、一門というまとまりは、そもそも何なのでしょうか。
本家と分家のまとまりから巡業の単位へ
一門という言葉は、次のように定義されています。
弟子が師匠から独立し新しく相撲部屋を興すなど、縁続きとなった複数の相撲部屋を総称していう言葉。いわば本家と分家というような関係で、連合稽古や冠婚葬祭などさまざまなことで協力関係にある。
参考:『相撲大事典』第4版(金指基 原著、現代書館)「一門」
一門は、稽古の相手を広げるためだけのまとまりではありませんでした。昭和32年(1957年)より前には、巡業そのものを一門の単位で行うこともありました。今よりも、一門が興行の単位として大きな意味を持っていた時代があったわけです。
参考:『相撲大事典』第4版(金指基 原著、現代書館)「一門」
今のような一門の仕組みは、拙者の頃には無かったぞ。拙者は雲州松江の殿様のお抱えであった。土俵で背負っていたのは、師匠の名より殿様の名である。
今は師匠と弟子のつながりから部屋が分かれ、その部屋どうしが一門として助け合う。力士と部屋を結ぶまとまりの形は、時代とともに変わってきたのである。
一門が関わる主な4つの場面
巡業が一門ごとに行われなくなったあとも、一門の単位で動く場面は残っています。主なものは次の4つです。
この中で、一門が「派閥」と呼ばれる理由をいちばんイメージしやすいのが、理事候補の擁立です。2026年1月の理事候補選でも、一門ごとに候補者が調整されました。その結果、理事10人と副理事3人の定員を超えない人数の候補が出そろっています。
参考:日刊スポーツ「理事候補選 4期連続無投票確実」(2026年1月)
一方、若い力士の生活に近いところで一門が関わるのが、付け人の貸し借りです。付け人は、原則として同じ部屋の幕下以下の力士が務めます。しかし、人数の少ない部屋では、同じ一門の大きな部屋から付け人を借りることもあります。
参考:『相撲大事典』第4版(金指基 原著、現代書館)「付け人」p.215
僕自身、この仕組みは現役のころには知りませんでした。引退してから、同じ一門の別の部屋から横綱の付け人が出ることもあると知り、「そんな仕組みがあったのか」と思ったものです。
そもそも付け人がどんな仕事をしているのかは、付け人の記事で書いています。
2018年から全親方の一門所属が義務化
2026年10月時点では、どの親方も一門に所属する形になっています。2018年7月の理事会で、すべての親方がいずれかの一門に所属することが義務づけられたためです。
同じ年の11月には、6月に消滅した貴乃花一門にいた当時の阿武松親方や、無所属だった錣山親方ら9人が二所ノ関一門へ加わることが承認されています。立浪親方は、出羽海一門へ加わりました。
参考:四国新聞「阿武松親方ら二所ノ関一門に加入」(2018年11月)
消滅した貴乃花一門は、もともと貴乃花グループと呼ばれていたまとまりです。2012年に立浪部屋が合流し、のちに一門として認められました。一方、立浪部屋が離れたあとの立浪一門は、春日山部屋との連合を経て伊勢ヶ濱一門と改称しています。
参考:『相撲大事典』第4版(金指基 原著、現代書館)「一門」
では、新しく独立した部屋は、どの一門に入るのでしょうか。近年の例を見ると、独立前の部屋と同じ一門に所属しています。2024年に二所ノ関部屋から独立した中村部屋は二所ノ関一門。2022年に境川部屋から独立した武隈部屋は出羽海一門です。
参考:日刊スポーツ「中村部屋が独立」(2024年5月)/日刊スポーツ「武隈部屋を承認」(2022年1月)
元力士から見た一門(若い衆の日常に一門が現れた場面)
ここからは制度の話ではなく、現役のころの僕自身の話です。僕がいたのは、二所ノ関一門に所属する部屋でした。
ただ、若い衆だった僕が、ふだんの生活で一門を意識することはほとんどありませんでした。一門を身近に感じたのは、出稽古です。
僕がいた部屋は、同じ一門の近い部屋と出稽古で行き来していました。近いといっても少し距離があり、車で移動します。
場所前になると、1週間ほど続けて行き来することもありました。もちろん、毎回そうだったわけではありません。
僕の部屋へ来てもらうことのほうが多く、こちらから出向くのは幕下の力士と関取衆だけでした。そのため、序二段だった僕自身は、向こうの部屋へ出稽古に行ったことがありません。僕にとっての出稽古は、兄弟子たちが車で出かけていく姿と、向こうの力士が来てくれた日の稽古場でした。
向こうの力士が来た日には、僕より番付が上の兄弟子と申し合いをする機会もありました。何度か勝てたことがあり、それが自分のモチベーションになりました。
ただ、部屋は違っても、相撲界の力士として見れば先輩です。立場は番付で決まる世界ですが、先輩は先輩として立てます。同じ部屋の兄弟子と同じように接していました。
僕が見た範囲では、一門の部屋との行き来はこの出稽古までで、それ以外の交流はありませんでした。
つまり、若い衆だった僕の目に見えていた一門は、出稽古で顔を合わせる他の部屋の兄弟子までだったということです。理事候補の調整や、付け人を別の部屋から借りる仕組みは、その外側にありました。
僕も付け人は自分の部屋の関取に付くものだと思ってたよ。だから、人数が足りなければ一門の別の部屋から借りることがあるって知ったときは、そうだったんだぁって感じだったなぁ。
現役のころに見えていた一門は、出稽古で来てくれる兄弟子くらいだったからね。
「二所一門」の文字を胸に付けた力士運動会
そんな僕でも、一門の名前をはっきり胸に付けた日が一度あります。1999年2月9日に東京体育館で開かれた、力士会主催の運動会です。横綱から序ノ口まで約800人が参加し、5つの一門に分かれて競う対抗戦でした。僕がいた二所ノ関一門は5位です。
参考:高砂部屋公式サイト「過去の日記 平成11年」/『相撲大事典』第4版「力士運動会」p.347
その日に配られた鉢巻きとタンクトップには、「二所一門」と書かれていました。ふだん一門の名前を意識して生活していたわけではないからこそ、胸にその文字を付けて一門対抗で競った一日は、今も覚えています。
また、一門の名前が付くのは力士だけではありません。僕が参加した引退相撲の取組表には、「二所ノ関一門 呼出し連」という出し物が並んでいました。
相撲部屋の一門に関するよくある質問
最後に、一門について分かりにくいところを6つにまとめます。
Q1. 大相撲の一門はいくつある?
A. 2026年10月時点で、出羽海一門・二所ノ関一門・時津風一門・高砂一門・伊勢ヶ濱一門の5つです。45の相撲部屋は、このどれかに所属しています。
Q2. 一門と系統は何が違う?
A. 系統は本家と分家の歴史的なつながりで、一門は2026年10月時点でどのまとまりに所属しているかです。多くの場合は重なりますが、立浪系の本家である立浪部屋が出羽海一門にいるように、系統とは違う一門へ移った部屋もあります。
Q3. 一門に入らない部屋はある?
A. 2026年10月時点ではありません。2018年7月の理事会で、すべての親方がいずれかの一門に所属することが義務づけられました。同年11月には、無所属だった親方や、消滅した貴乃花一門にいた親方の新しい所属先が承認されています。
それより前には、高田川部屋のように、5つの一門のどこにも入っていない時期を経て一門に加わった部屋があります。
Q4. 新しくできた部屋の一門はどう決まる?
A. 近年に独立した部屋を見ると、独立前の部屋と同じ一門に所属しています。中村部屋(2024年、二所ノ関部屋から)は二所ノ関一門、武隈部屋(2022年、境川部屋から)は出羽海一門です。
Q5. 部屋数が最多の一門はどこ?
A. 二所ノ関一門です。2026年10月時点で17部屋あり、出羽海一門の14部屋、時津風一門と伊勢ヶ濱一門の5部屋、高砂一門の4部屋と続きます。
Q6. 同じ一門の力士は本場所で当たらないというのは本当?
A. かつては本当でした。昭和40年(1965年)1月場所より前は、親子や兄弟の関係にある部屋どうしの対戦を組まない「一門系統別」の取組編成でした。この場所から部屋別総当たり制になり、それ以降は同じ一門でも部屋が違えば対戦します。
参考:日本相撲協会「部屋別総当たり制導入50年」/『相撲大事典』第4版「一門系統別総当たり制」
まとめ
一門という言葉を親方たちの派閥としてしか聞いたことがなければ、連合稽古や出稽古の映像も、少し違って見えるかもしれません。
ただ、若い衆だった僕に見えていた一門は、出稽古へ車で出かけていく兄弟子と、運動会の日に胸へ付いていた「二所一門」の文字でした。同じ一門という言葉でも、親方にとっては協会の運営につながるまとまりで、若い力士にとっては稽古場で顔を合わせる相手につながるまとまりです。
次に連合稽古の映像や理事選のニュースを見かけたら、推している力士の部屋がどの一門にいるのかを、相関図で探してみてください。
拙者の頃と今とでは、力士や部屋を結ぶ仕組みが違う。それでも、胸に「二所一門」と入った服を着て、稽古のない一日を喜んだという話は、なんとも愉快である。名を背負うとは、肩に力を入れることばかりではないぞ。
理事候補の顔ぶれを一門ごとに調整するのは親方衆である。されど、稽古場で誰と顔を合わせるかは、若い衆の毎日そのものである。次に稽古を見るときは、どの部屋の力士が同じ土俵に集まっているか、そなたも見てみるとよいぞ。
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