若雅(二子山部屋)はどんな相撲を取る?突き押しの持ち味と経歴を元力士が解説
僕がいた部屋にも、幕下以下で優勝を果たした力士が数名います。優勝決定戦になったときは、部屋のみんなが固唾をのんで見守っていました。
勝って優勝が決まった瞬間に、みんなで喜んだことは、今でも覚えています。
その決定戦に、二子山部屋から3人が出る。誰が勝っても部屋の優勝ですが、勝てるのは一人です。
一人が勝ち上がるだけで、僕の部屋はあれだけ沸きました。三人を送り出した部屋の仲間がどんな思いで見守っていたのかは、僕には想像がつきません。
こんにちは、元力士のしんざぶろうです。
その決定戦が行われたのが、2026年7月の名古屋場所です。3人のひとりが、今回取り上げる若雅でした。
若雅は、185センチの長身から突っ張る力士です。まわしを取らせないまま前へ出て、白星を重ねてきました。
この記事では、若雅がどんな相撲を取るのかを決まり手から読み解き、高校からの経歴と番付の推移、幕下優勝まであと一番だった名古屋場所までを解説します。
わたし、幕下の取組はあまり見たことがなくて。
若雅がどんな相撲を取るのか、まったく想像がつかないんです。
そこを教えてほしいです♪
若雅のプロフィールと基本情報
若雅 隆生(わかみやび りゅうき)は、神奈川県川崎市麻生区の出身で、二子山部屋に所属する力士です。師匠は元大関・雅山の二子山親方で、本名は遠藤隆生といいます。
得意技は突き・押し。185センチの長身を生かした突っ張りを持ち味とし、2026年9月場所では自己最高位の東幕下十三枚目に付けています。
そんな若雅の稽古場での姿や成長ぶりは、二子山部屋の公式チャンネルでも見ることができます。
二子山部屋では、力士たちの食事や日常を中心に配信しており、本場所中の撮影は行っていないため、映っているのは主に本場所前の稽古場や部屋での様子です。
この回は朝稽古から始まり、22分19秒から若雅の成長が取り上げられています。
※スマートフォンでは、表を横にスクロールできます
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| しこ名 | 若雅 隆生(わかみやび りゅうき) |
| 本名 | 遠藤 隆生(えんどう りゅうき) |
| 生年月日 | 2003年6月20日(23歳) |
| 出身地 | 神奈川県川崎市麻生区 |
| 身長・体重 | 185.0センチ・144.0キロ |
| 所属部屋 | 二子山部屋(師匠は元大関・雅山の二子山親方) |
| 得意技 | 突き・押し |
| 初土俵 | 2022年3月場所 |
| 最高位 | 幕下十三枚目 |
| 現在の番付 | 東幕下十三枚目 |
| 生涯戦歴 | 101勝81敗(28場所) |
〇年齢・体格・番付・戦歴は2026年9月場所時点。体重は協会の登録値です
白星の74%が突き出しと押し出し
若雅の相撲は、決まり手の内訳にはっきり表れています。
過去6場所の集計は44取組23勝で、その白星の内訳が次のようになっています。
※スマートフォンでは、表を横にスクロールできます
| 決まり手 | 割合 |
|---|---|
| 突き出し | 39% |
| 押し出し | 35% |
| 押し倒し | 4% |
| その他 | 22% |
突き出しと押し出しの2つで、白星の74%を占めています。まわしを取って寄る相撲ではなく、離れたまま前へ出て勝つ形が中心になっています。
まわしを取らずに勝ち切るのは、簡単じゃないんですよ。
組まれた時点で、こちらの形は消えてしまいますから。
若雅が相撲を始めたきっかけと経歴
若雅が相撲を始めたのは高校に入ってからです。それまでは、まったく別の競技をやっていました。
空手とバスケットボールから相撲部へ
小学6年生のとき、若雅は空手で全国制覇を果たしています。中学は西生田中に進み、バスケットボール部の主将として県大会3位に入りました。
相撲と出会ったのは、神奈川県立向の岡工業高校に入ってからです。同校の清田英彦監督との縁で相撲部に入り、そこから土俵に上がるようになりました。
高校3年の時点で身長183センチ、体重は入学時から20キロ増やして146キロ。長い手足を生かした突き相撲は、このころにはすでに持ち味になっていました。
3年生の年には、関東大会で団体3位、インターハイで団体ベスト16という成績を残しています。
二子山部屋へ、相撲部から5人目の入門
若雅は工業関係への就職も考えていました。進路が決まったのは、高校3年の10月に二子山部屋を見学したときです。
「ここだったら強くなれる」
そう決断し、同年12月14日、母校を訪れた二子山親方に入門の意思を伝えました。向の岡工業高校の相撲部からは、5人目の入門になります。
このとき若雅は、こう話しています。
「先輩の吉野(克)さんや許田(直希)さんもいる相撲部屋。まずは幕内に入れるよう頑張る」
現役時代に突き押し相撲で活躍した二子山親方は、期待をこう語りました。
「コロナで稽古ができない時期もあった中、3年間でこれだけ成長している。自分の突きの距離感がつかめれば、相手を圧倒できる」
初土俵は、その3か月後の2022年3月場所です。
就職の道もあった中で、部屋を見て決めたか。
二子山親方が突きの距離感を説いておるのは、その長い手足を見てのことであろう。
なお、若雅が入った二子山部屋には、幕内から序ノ口までさまざまな番付の力士がいます。部屋の顔ぶれは、こちらの記事に一覧でまとめてあります。
若雅の番付と成績【2026年秋場所版】
若雅の番付は、長いあいだ幕下と三段目のあいだを上下してきました。
初土俵から5場所続けて勝ち越し、入門1年目のうちに三段目まで上がっています。ところが幕下が見えてくると、そこで足踏みが始まりました。
幕下と三段目を行き来した1年半
若雅が初めて幕下に上がったのは2023年9月場所です。そこから2025年3月場所まで、幕下と三段目を行ったり来たりする時期が続きました。
幕下に留まるようになったのは2025年5月場所からです。2025年1月場所以降の番付と成績が、次のとおりです。
※スマートフォンでは、表を横にスクロールできます
| 場所 | 番付 | 成績 |
|---|---|---|
| 2025年1月 | 東幕下54枚目 | 3勝4敗 |
| 2025年3月 | 東三段目3枚目 | 4勝3敗 |
| 2025年5月 | 西幕下52枚目 | 5勝2敗 |
| 2025年7月 | 東幕下30枚目 | 4勝3敗 |
| 2025年9月 | 東幕下23枚目 | 3勝4敗 |
| 2025年11月 | 西幕下29枚目 | 4勝3敗 |
| 2026年1月 | 西幕下23枚目 | 3勝4敗 |
| 2026年3月 | 西幕下34枚目 | 1勝6敗 |
| 2026年5月 | 西幕下60枚目 | 5勝2敗 |
| 2026年7月 | 西幕下36枚目 | 6勝1敗 |
| 2026年9月 | 東幕下13枚目 | ー |
番付が大きく崩れたのが2026年3月場所です。西幕下三十四枚目で1勝6敗と大きく負け越し、番付は西幕下六十枚目まで下がりました。
そこから2場所続けて5勝2敗、6勝1敗と勝ち越しました。2026年9月場所の東幕下十三枚目は、若雅にとって自己最高位にあたります。
1勝6敗の次の場所は、気持ちの立て直しが難しいんです。
そこから2場所で自己最高位まで来たのは、なかなかできないですよ。
幕下優勝まであと一番だった2026年名古屋場所
若雅が大きな結果を残したのが、2026年7月の名古屋場所です。
西幕下三十六枚目で迎えたこの場所、若雅は6勝1敗で本割を終えました。同じ6勝1敗が7人並び、幕下優勝は千秋楽のトーナメントに持ち越されます。
7人のうち3人が二子山部屋
6勝1敗で並んだ7人のうち、3人が二子山部屋の力士でした。西幕下三枚目の生田目、西幕下三十六枚目の若雅、東幕下四十一枚目の三田です。
番付は大きく離れていますが、幕下の優勝争いは、番付の枚数に関係なく成績で決まります。組み合わせによっては、部屋の仲間どうしで優勝を争う可能性もありました。
決勝で旭富士に敗れる
若雅はトーナメントを勝ち上がり、決勝まで進みます。相手は東幕下十一枚目の旭富士でした。
この一番は寄り切りで旭富士が制し、若雅の幕下優勝は次の機会に持ち越されました。結果は日本相撲協会の公式Xにも掲載されています。
<千秋楽の様子>
幕下優勝決定戦
優勝は 旭富士(東幕下十一枚目)伊勢ヶ濱部屋旭富士 (6勝1敗) 伊勢ヶ濱部屋
寄り切り
若雅 (6勝1敗) 二子山部屋#sumo #相撲 #名古屋場所 pic.twitter.com/KdwKoAr7le— 日本相撲協会公式 (@sumokyokai) July 26, 2026
優勝した旭富士は、この場所で序ノ口から数えて4場所続けての各段優勝を達成しています。年6場所制が定着した昭和33年以降、序ノ口から幕下まで4場所続けて各段優勝を果たしたのは初めてのことです。若雅は、幕下優勝まであと一番に迫りました。
参考:デイリースポーツ(2026年7月26日)/時事通信(2026年7月26日)/NHK(2026年7月26日)/日本相撲協会「過去の成績・各段の優勝力士・三賞力士」
決勝まで勝ち上がって、あと一番だったんですね。
その一番、わたしも見てみたかったです♪
ちなみに、決定戦に並んだ二子山部屋の3人のうち、三田大生と生田目については、それぞれ記事にまとめてあります。近大の主将から十両優勝までたどり着いた三田の経歴は、こちらです。
また、左膝の大怪我で十両から三段目まで落ち、そこから関取に戻った生田目の4場所は、こちらで解説しています。
元力士から見た若雅
過去6場所の若雅の白星は、その74%が突き出しと押し出しです。この形の相撲を受ける側には何が起きるのか。ここからは現役のころの僕の話です。
突かれた側から見た、若雅の突き押し
突っ張りを正面から受けると、上半身は後ろへのけぞります。僕の場合は、そうならないよう横へいなすか、まわしを取って突っ張らせない形にしにいきました。
それでも力の差があると、何もできないまま土俵の外まで突かれてしまいます。
若雅は185センチです。僕は174センチだったので、11センチ高い相手ということになります。
185センチから突っ張ってくる相手は、本当に嫌なんですよ。
一度のけぞらされたら、もう自分の形にはなりません。
番付が近くても、稽古で組むとは限らなかった
ここからは、番付の近い力士が同じ部屋にいた、現役のころの僕の話です。僕がいた部屋の三番稽古は、二人で組を作り、30分間、何度も繰り返し相撲を取る形でした。
三番稽古は、実力の接近した力士どうしが二人だけで何番も続けて対戦する稽古です。「三番」は数多くという意味で、多いときには20番、30番と続けます。申し合いは勝ち抜き戦の形式で行う稽古で、勝った力士が土俵に残り、次の相手を指名します。
参考:『相撲大事典』第4版、金指基 原著、現代書館
実力の近い者どうしで組むのが、三番稽古の形です。ところが僕がいた部屋では、組み合わせを番付発表のあとに力士どうしで相談して決めていたので、実際に組んでいたのは、番付が接している相手ばかりではありませんでした。
僕の感覚では、番付が近いということは、実力も同じくらいということです。だからこそ遠慮なく当たれますし、本場所さながらの稽古ができます。全力を出し切れるのは、この組み合わせだと思います。
ただ、そこには裏もありました。というのも、実力が拮抗していると手加減ができないからです。そのぶん、けがをするリスクは上がります。
さらに、仲が良い相手だと、手加減というか、いい加減な稽古になってしまうこともありました。
そういうこともあってか、僕の部屋では、少し実力差のある者どうしが自然と組んでいました。申し合いも、参加する人数は多くなりますが、やはり番付ごとに分かれていました。
番付が近い相手とばかり稽古していると、困ることもあります。お互いに手の内が分かっているので、どうしても同じような展開になっていくんです。いま振り返ると、もっと工夫して稽古したほうがよかったと思います。
手の内を知り尽くした相手とばかりでは、同じ形しか出てこぬか。
稽古の相手というのは、誰でもよいわけではないのだな。
番付が近いと、本場所にも一緒に行く
現役のころの僕の話を、もう一つ。番付が近いことの影響は、稽古場だけにとどまりませんでした。
幕下以下の力士は、基本的に15日間で7番を取ります。番付が近いと同じ日に取組が組まれることがあり、そうなると会場に入る時間も揃うんです。当日は支度部屋まで、一緒に行動していました。
だから番付発表の日に交わしていたのは、こんな一言でした。
「一緒に本場所に行けるね」
番付が動いても、部屋の中での呼び方や、頼み事の振られ方が変わることはありませんでした。変わるのは、幕下が見えてきてからです。周りがなんとなく一目置くようになるのを、僕は空気として感じていました。
若雅、三田、生田目の3人は、名古屋場所の千秋楽に同じ土俵へ上がりました。番付が近いというのは、稽古場で誰と組むか、本場所の日に誰と一緒に会場へ向かうか、そこまで含んだ話です。
番付が近い人とは、稽古ではあまり組まないんですね。
それなのに本場所は一緒に行くというのが、なんだか不思議です♪
若雅がいる東幕下十三枚目は、僕が空気の変わり目だと感じていた番付より、さらに上です。その幕下がどういう位置づけの番付なのかは、こちらの記事で解説しています。
若雅に関するよくある質問
読み方や現在の番付など、若雅についての質問に答えます。
Q1. 若雅の読み方・本名・年齢・出身地・体格は?
A. 若雅は「わかみやび」と読みます。本名は遠藤隆生(えんどう りゅうき)です。2003年6月20日生まれの23歳で、神奈川県川崎市麻生区の出身です。体格は185.0センチ、144.0キロです(2026年9月場所時点)。
Q2. 若雅の得意技は?
A. 突き・押しです。過去6場所の白星は、突き出しが39%、押し出しが35%、押し倒しが4%という内訳になっています(2026年9月場所時点)。まわしを取らずに、離れたまま前へ出て決める形が中心です。
Q3. 若雅は相撲をいつから始めたの?
A. 神奈川県立向の岡工業高校に入ってからです。それ以前は空手とバスケットボールをしていて、小学6年生のときには空手で全国制覇を果たしています。
Q4. 若雅は関取になったことがある?
A. 2026年9月場所時点で、十両以上の番付に上がった経験はありません。最高位は同場所の東幕下十三枚目で、これが自己最高位です。十両への昇進は番付の枚数だけで決まるものではなく、その場所の成績や、十両から幕下へ落ちる力士の数によって変わります。
Q5. 2026年名古屋場所の幕下優勝決定戦で、若雅はどこまで勝ち上がったの?
A. 決勝まで進み、旭富士に寄り切りで敗れました。6勝1敗で並んだ7人によるトーナメントで、そのうち3人が二子山部屋の力士でした。
まとめ
若雅は、高校から相撲を始めて二子山部屋に入り、185センチの長い手足を生かした突き押しで白星を重ねてきた力士です。
その番付は、長いあいだ幕下と三段目のあいだを上下してきました。2026年3月場所では1勝6敗と大きく負け越し、幕下の下位まで落ちています。
しかし、若雅の土俵はそこで終わりませんでした。続く2場所を5勝2敗、6勝1敗で終え、名古屋場所では幕下優勝決定戦の決勝まで勝ち上がっています。
2026年9月場所の番付は、自己最高位の東幕下十三枚目です。あの決勝で見せた突き押しが幕下上位でどこまで通用するのか、幕下の取組にも目を向けてみてください。
突き押しで勝ち上がった者が、決勝では寄り切りで敗れた。
幕下上位で、その突き押しをどこまで通せるか。
秋場所の幕下、しかと見届けようではないか。


















