志摩ノ海は引退せず現役|序ノ口まで落ちて幕内へ上がった道を元力士が解説
現役のころ、部屋でいちばん年長の兄弟子が、膝の手術で幕下から番付外まで落ちたことがありました。
番付だけ見れば部屋でいちばん下です。ただ、実力も年季も上の兄弟子を、番付どおりに扱うわけにはいきません。
しかも番付が近づいたことで、稽古でも生活でも顔を合わせる機会は増えました。
幸い、とても謙虚な方で、こちらにも気さくに接してくれたので助かりました。
このように、相撲界で番付が落ちるというのは、番付がそのまま部屋の序列なので、立ち位置まで変わってしまうのです。
こんにちは!元力士のしんざぶろうです。
志摩ノ海航洋(しまのうみ こうよう)は、幕内で前頭三枚目まで上がった力士です。2026年9月場所の番付は、西幕下十九枚目でした。
幕内で見ていた力士を、幕内や十両の取組で見かけなくなると、辞めたのだろうかと思うものです。けれど志摩ノ海は、2026年9月場所も土俵に上がっています。
しかも志摩ノ海は、一度は幕下四枚目から序ノ口まで番付を落とし、そこから幕内まで上がってきた力士です。
この記事では、志摩ノ海が序ノ口から幕内までたどった道のりと、幕下に下がってからの歩みを解説します。
幕内で見ていた力士を見かけなくなると、引退したのかなと思ってしまいます。
志摩ノ海は、幕下四枚目から序ノ口まで落ちた経験があったんですね。そこから幕内まで上がったと知ると、今も土俵に立ち続けていることの重みを感じます。
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志摩ノ海はどんな力士か
志摩ノ海 航洋(しまのうみ こうよう)は、三重県志摩市の出身で、木瀬部屋に所属する力士です。179.0センチ、148.2キロ。得意技は突き・押しで、最高位は前頭三枚目です。
プロフィール
番付と体重は場所ごとに動くので、下の数字は2026年9月16日時点のものです。
■志摩ノ海 航洋(しまのうみ こうよう)
- 本名:福薗 航洋
- 生年月日:1989年7月11日
- 出身地:三重県志摩市
- 所属部屋:木瀬部屋
- 身長・体重:179.0センチ/148.2キロ
- 得意技:突き・押し
- 初土俵:2012年5月場所(しこ名は濱口)
- 新十両:2016年7月場所
- 新入幕:2019年5月場所
- 最高位:前頭三枚目
- 生涯成績:459勝450敗41休(86場所)
濱口から志摩ノ海へ
志摩ノ海は、志摩市立布施田小学校から和具中学校、明徳義塾高校(高知県)を経て、近畿大学の体育会相撲部に進みました。角界に入ったのは2012年5月場所で、そのころのしこ名は本名の濱口です。
四股名が志摩ノ海に変わったのは、初めて関取に上がる2016年7月場所でした。故郷の市名「志摩」を取った四股名です。
そんな志摩ノ海の相撲は、日本相撲協会の公式チャンネルでも見ることができます。2025年3月場所の十一日目、伊勢ノ海部屋の若碇との一番です。
■2025年3月場所・十一日目の取組
- 志摩ノ海(木瀬部屋)西十両十枚目。この場所は8勝7敗
- 若碇(伊勢ノ海部屋)東十両九枚目。この場所は8勝7敗。のちに四股名を藤ノ川に改め、2026年9月場所は西関脇
このとき志摩ノ海は、まだ関取でした。1枚上の相手に勝った一番です。
決まり手でいちばん多いのが押し出しなので、立ち合いで当たってから、どう前に出ていくのかを見てみてください。
出身地がそのまま四股名になるのは、しこ名の付け方としては分かりやすいほうですね。
呼び出しに名前を呼ばれるたび、地元の名前が国技館に響くわけですから。
幕下四枚目から、序ノ口まで落ちた
志摩ノ海の番付が大きく動いたのは、関取に上がるより前のことです。当時のしこ名は、まだ本名の濱口でした。
2013年7月場所、西幕下四枚目で土俵に上がっていた濱口は、4番取ったところで休場します。5番目の取組は不戦敗となり、成績は2勝3敗2休でした。
幕下四枚目は、勝ち越しを重ねれば関取が見えてくる位置です。そこから濱口は、5場所続けて全休しました。
5場所休むと、番付はここまで落ちる
休んでいるあいだ、番付は一場所ごとに下へ動きます。西幕下十六枚目、西幕下五十六枚目、東三段目三十七枚目、東三段目九十八枚目、西序二段五十八枚目。そして土俵に戻った2014年7月場所の番付が、東序ノ口十八枚目でした。
序ノ口は、番付表のいちばん下の段です。入門した力士が、最初に四股名を載せてもらう場所でもあります。
つまり濱口は、関取が見える位置から、入門した年と同じ段まで戻されたことになります。
序ノ口と序二段を、続けて7戦全勝
戻ってきた濱口は、2014年7月場所を7戦全勝で終えて序ノ口優勝を決めました。続く9月場所も、東序二段十三枚目で7戦全勝。序二段優勝です。
このとき濱口が何を思って土俵に上がっていたのかは分かりません。ただ番付の上では、2場所で序ノ口から三段目まで戻しています。
5場所も休めば、番付は下がるに任せるほかない。
戻った場所で7番すべて勝つというのは、体が動くようになっただけでは足りぬ。相撲を取る勘まで戻っていたということじゃ。
なお、序ノ口から幕下までの力士が日々どんな生活を送っているのかは、別の記事にまとめています。
十両で2場所続けて優勝した2019年
濱口が最初に関取へ上がったのは2016年7月場所です。四股名が志摩ノ海になったのも、この場所からでした。ただし成績は4勝11敗で、1場所で幕下に戻っています。十両に戻るまでには、そこから1年8か月かかりました。
番付が大きく動いたのは、2019年です。
13勝2敗を、2場所続けた
2019年1月場所、東十両十一枚目の志摩ノ海は13勝2敗で十両優勝を果たします。続く3月場所も、東十両筆頭で13勝2敗。2場所連続の十両優勝で、志摩ノ海は新入幕を決めました。
新入幕の場所で敢闘賞
幕内に上がった2019年5月場所、志摩ノ海は東前頭十二枚目で10勝5敗の成績を残し、敢闘賞を受けました。この場所は、令和に元号が変わって最初の本場所です。
翌2020年11月場所でも、東前頭十七枚目で11勝4敗を挙げて2度目の敢闘賞を手にしています。最高位の前頭三枚目に上がったのは、2021年3月場所でした。
13勝2敗を2場所続けるって、十両で連続優勝ということですよね。
序ノ口まで落ちた力士が、その5年後には幕内で賞をもらっているんですね。
三賞のうち敢闘賞がどんな基準で選ばれ、賞金がいくら出るのかは、こちらで詳しく書いています。
志摩ノ海はどんな相撲を取るのか
得意技として登録されているのは突き・押しです。前に出て押す相撲が土台にあり、そこに突き落としや出し投げが混ざります。
決まり手の実データ
日本相撲協会は、力士ごとに直近6場所の決まり手の内訳を公開しています。志摩ノ海の数字はこうです。
■志摩ノ海の決まり手(直近6場所)
〇37取組20勝(不戦勝1を含む)/2026年9月16日時点
- 押し出し:30%
- 上手出し投げ:15%
- 突き落とし:15%
- その他:40%
最も多いのが押し出しで、30%を占めます。協会に登録されている得意技も突き・押しなので、当たって前に出る形が持ち味のひとつだと分かります。
押し相撲は、まわしを取る相撲より体への負担が読みにくいんです。
当たった瞬間に決まることもあれば、押し切れずに長くなることもありますからね。
その押し出しという決まり手が、突き出しとどう違うのかは、こちらで解説しています。
幕下に下がってからの志摩ノ海
志摩ノ海が幕内で相撲を取ったのは、2019年5月場所から2022年7月場所までの19場所です。2022年7月場所の東前頭九枚目で1勝14敗を喫し、翌場所から十両に下がりました。
十両ではそこから18場所を務め、勝ち越した場所も5度ありました。ただ2025年7月場所に東十両十二枚目で3勝12敗と大きく負け越し、翌9月場所から幕下です。
「引退は考えていない」
幕下に下がって2場所目、2025年11月場所で5勝2敗と勝ち越したあと、志摩ノ海はこう話しています。
「引退は考えていない」
参考:デイリースポーツ「36歳の志摩ノ海が復調の5勝目『引退は考えていない』関取復帰に手応え」
そのあとも志摩ノ海は土俵に上がり続けています。2026年5月場所は西幕下二枚目まで戻りましたが、ここで7戦全敗。関取復帰が見える番付で、1つも白星を挙げられませんでした。
翌7月場所は西幕下三十二枚目で5勝2敗、2026年9月場所は西幕下十九枚目です。
番付の推移
初土俵からの86場所のうち、番付が大きく動いた場所を並べました。序ノ口から幕内まで上がった道のりと、そこから幕下まで下りた過程が、1つの表で追えます。
※スマートフォンでは、表を横にスクロールできます
| 場所 | 番付 | 成績 |
|---|---|---|
| 2012年5月 | 初土俵(しこ名は濱口) | ー |
| 2013年1月 | 東三段目七枚目 | 7戦全勝・三段目優勝 |
| 2013年7月 | 西幕下四枚目 | 2勝3敗2休(以降5場所全休) |
| 2014年7月 | 東序ノ口十八枚目 | 7戦全勝・序ノ口優勝 |
| 2014年9月 | 東序二段十三枚目 | 7戦全勝・序二段優勝 |
| 2016年7月 | 西十両十四枚目(新十両) | 4勝11敗 |
| 2019年1月 | 東十両十一枚目 | 13勝2敗・十両優勝 |
| 2019年3月 | 東十両筆頭 | 13勝2敗・十両優勝 |
| 2019年5月 | 東前頭十二枚目(新入幕) | 10勝5敗・敢闘賞 |
| 2020年11月 | 東前頭十七枚目 | 11勝4敗・敢闘賞 |
| 2021年3月 | 西前頭三枚目(最高位) | 4勝11敗 |
| 2022年7月 | 東前頭九枚目 | 1勝14敗(幕内最後の場所) |
| 2025年9月 | 西幕下四枚目 | 2勝5敗 |
| 2025年11月 | 東幕下十一枚目 | 5勝2敗 |
| 2026年1月 | 東幕下七枚目 | 4勝3敗 |
| 2026年3月 | 東幕下五枚目 | 4勝3敗 |
| 2026年5月 | 西幕下二枚目 | 0勝7敗 |
| 2026年7月 | 西幕下三十二枚目 | 5勝2敗 |
| 2026年9月 | 西幕下十九枚目 | 開催中(9月16日時点で2勝0敗) |
幕下上位で勝ち越しても、そのまま十両へ上がれるとは限りません。十両から下がる力士や引退した力士の空き枠、ほかの幕下上位力士の成績を踏まえて、番付編成会議で昇進が決まるからです。
幕下二枚目で全敗というのは、番付の上では一場所の出来事にすぎぬ。
だが、関取復帰が見える幕下上位で7番すべて落とせば、体より先に気持ちが削られる。その次の場所で5勝2敗と勝ち越し、九月場所でまた番付を上げてきた。結果がすべてを語っておる。
その仕組みについては、こちらで詳しく書いています。
元力士から見た、番付と序列
ここからは志摩ノ海の話を少し離れて、僕が現役だったころの経験を紹介します。相撲部屋では、番付の上下と入門した順番が、必ずしも一致するわけではありません。
あくまで僕がいた部屋での話で、木瀬部屋や志摩ノ海が実際にどう扱われているかを示すものではありません。
番付が下でも、兄弟子は兄弟子だった
現役のころ、一日は朝稽古から始まります。新弟子だった僕によく回ってきたのが、兄弟子を起こしに行く役目でした。
幕下以下の力士は関取ではありませんから、本来は身の回りのことを自分でする立場です。番付は力士としての地位を示すもので、入門した順番とは別に動きます。
ところが部屋の中には、「兄弟子を立てる」という考えもあります。そのため、番付では上になった力士が、幕下以下の兄弟子に気を使っている姿も見てきました。
僕も兄弟子から頼まれれば、断るわけにはいきません。朝起こしに行き、まわしを用意して持っていくこともありました。
番付の順番と、入門した順番は別なんですね。
両方に気を使わなければならないとなると、下の力士は大変そうです。
元力士が板挟みになった朝
兄弟子を起こしても、二度寝してしまって稽古場に下りてこないことがありました。そのうち、さらに上の兄弟子や関取が起きてきます。
「もう一度、起こしに行かないとまずい」
そう思って動こうとすると、それを察したのか、
「起こしに行くな!」
と言われました。
■新弟子の僕に届いた、二つの指示
- 最初に頼んできた兄弟子 … 起こしに来い
- 上の兄弟子と関取 … 起こしに行くな
新弟子の僕には、どちらにも逆らえません。まして関取に言われれば、なおさらです。
結局、その場にとどまり、兄弟子を起こしには行きませんでした。こうして僕は、兄弟子たちの間で板挟みになったわけです。
相撲部屋では、番付の順番と年季の順番が別々に存在します。しかも番付は場所ごとに動くので、誰かの番付が大きく上下すると、周囲との関係も少しずつ変わっていきます。
番付が大きく下がった兄弟子がいると、こちらも接し方に迷うことがあります。
番付だけでは決まらない関係があるのも、相撲部屋の難しいところでした。
同じように怪我で番付を落とし、そこから戻ってきた力士については、こちらで紹介しています。
志摩ノ海に関するよくある質問
志摩ノ海について、よく調べられている項目です。
Q1. 志摩ノ海の読み方・本名・出身地は?
A. 志摩ノ海は「しまのうみ」と読みます。下の名前は航洋(こうよう)で、本名は福薗航洋です。出身は三重県志摩市で、四股名は故郷の市名から取られています。
Q2. 志摩ノ海は引退したのですか?
A. 引退していません。2026年9月場所も、西幕下十九枚目で土俵に上がっています。2025年11月場所で5勝2敗とした際には「引退は考えていない」と話しています。
Q3. 志摩ノ海の身長と体重は?
A. 179.0センチ、148.2キロです(2026年9月16日時点)。日本相撲協会に登録されている得意技は突き・押しです。
Q4. 志摩ノ海の得意技は?
A. 日本相撲協会に登録されている得意技は突き・押しです。直近6場所の決まり手は、押し出しが30%、上手出し投げと突き落としがそれぞれ15%、その他が40%でした(2026年9月16日時点)。
Q5. 志摩ノ海はなぜ序ノ口まで番付が落ちたのですか?
A. 2013年7月場所を4番取ったところで休場し、そこから5場所続けて全休したためです。休場中も番付は下がり続けるので、西幕下四枚目から東序ノ口十八枚目まで落ちました。
まとめ
志摩ノ海は、序ノ口から幕内まで上がった力士です。しかもその序ノ口は、入門した年のものではなく、幕下四枚目から5場所続けて休んだあとの番付でした。
戻ってきた場所で7戦全勝、次の場所も7戦全勝。そこから5年かけて十両で2場所続けて優勝し、新入幕の場所で敢闘賞を受けています。
2026年9月場所の番付は西幕下十九枚目で、幕内にいたころとは違う段にいます。それでも本人は2025年11月に「引退は考えていない」と話し、関取復帰への意欲を口にしました。
取組表の下のほうに志摩ノ海の名前を見つけたら、一度立ち止まって見てみてください。
番付は上がるためだけにあるのではない。下りたあとに何をするかも、そこに記される。
志摩ノ海の名は、2026年9月場所の番付表にもある。



















